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Letter from Clinic (Apr issue) 2022

01 Apr 2021

臨床心理士・公認心理師 坂牧 円春


 


「最近疲れが取れない」「落ち込みやすい」「ずっとイライラしてしまう」と感じることはありますか?自分の心身の調子を整えるために、みなさんはどんなことをしていますか?仕事や家事、育児に追われ、ついつい自分のセルフケアを後回しにしてしまうことも多いのではないでしょうか?私は、自分の調子が、なるべく良い状態でいられるようにこんなことに心がけています。例えば、睡眠は8時間程度とる、休日などに短時間でも無心になり身体を動かす、栄養バランスのとれた食事をとる、モヤモヤと迷ったり悩んだりした時には長年の友人にコンタクトを取り相談する、一人で心地よくゴロゴロする時間を作るなどです。


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 それでも、“なんだか疲れてエネルギーが出ないなぁ”“いまいちテンションが低いなぁ”という自分に気づくことがあります。他の人から見るとおそらく気づかない些細な自分自身の変化ですが、気づかないでいて、後に仕事や生活に支障が出ては困ります。また女性の場合、ホルモンの変化により気持ちが浮き沈みすることもあります。皆さんは、そういう時にどんなことをして元気を出そうとしますか?


 


疲れているなと気づいた時にすること


 疲れた時には、ついチョコレートなど甘いものを食べがちです。甘いものを食べて一瞬満足したような気になるのですが、結局全体的なエネルギーは出ないままということがあります。私もチョコレートは大好きでついつまんでしまうのですが、それだけでなく、“元気を出そう!”と牛肉の赤身を食べるようにします。私の場合、うっかり鉄分やたんぱく質が不足していることがあるからです。


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鉄分不足になると…


 女性のみなさんは、月経時に疲れやすかったり、ぼーっとしたり、なぜか焦っていてイライラとすることはないでしょうか?鉄分が不足していると、疲労、焦燥感、集中力低下などうつ病と似た症状が出てくることもあります。特に女性は月経経出血量が多いと鉄欠乏になりやすので注意が必要です。


 


心のエネルギーには良質なたんぱく質も!


 元気を出すための神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンなど)の原料となるのは、アミノ酸です。アミノ酸のバランスの良いたんぱく質をとることが、心のエネルギーを高めるためにも大切です。バランスの良いたんぱく質は、魚や肉、大豆・大豆製品、卵に含まれています。魚にはEPAやDHAが含まれており、うつ病の予防の良いという研究もあります。ストレスの高い人は、特に青魚をとることは効果的と言われています。私は、日本にいた頃は、近所に魚屋さんがあったので、アジやイワシ、サンマ、ブリなどをよく買って食べていましたが、シンガポールに来てからは、サーモンや冷凍のサバをよく食べています。春先のサワラ、春のカツオ、夏のアジ、秋のサンマ、冬のブリなど、それぞれの旬の魚料理のことを考えると、日本が恋しくなりますね・・・。


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不安や緊張がお腹の調子にも影響する?


 以前、一時帰国した際に家族の一人が「日本では腸活が流行ってるのよ。腸内環境を整えるの」と、せっせとヨーグルトを食べていました。腸と脳が密接に関連しており、腸内の免疫細胞を活性化させることが、ストレス改善に有効であるという研究が蓄積されていて、それがテレビ番組でも取り上げられたそうなので、ご存知の方は多いかもしれないですね。不安や緊張が高まり、ストレスフルな状態になるとお腹がゆるくなったり、反対に便秘がちになったりしますね。腸内環境が改善されると、イライラや疲れた気分も改善される可能性が指摘されています。乳酸菌やビフィズス菌、食物繊維(野菜、キノコ類、海藻、イモ類など)をとるように心がけるといいですね。


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ビタミンとミネラルなど抗酸化物質で免疫を高めて


 もちろん野菜や果物も大事で、ビタミンやミネラルが豊富な食べ物は、抗炎症作用、抗ストレス作用があります。ベリー類やブロッコリー、トマト、ほうれん草、ケール、セロリ、ビーツなども良いとされています。カラフルな食品をとるように心がけると、様々な栄養素を含む野菜を必然的にとれると思います。私は、野菜スープやグリーンスムージーにして飲むことも多いです。


 バランスの良い食事は、身体の健康だけでなく、心の健康にも大きく影響します。自分自身の身体や心の調子に注意を払うようにして、身体や心に不調を感じた時には、日頃の食生活を見直したり、休養をしっかりとったり、エクササイズをしたり、まず自分にできる調整をしてみませんか?


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プロフィール  坂牧円春(さかまき まどか)


臨床心理士・公認心理師


日本女子大学人間社会学部心理学科卒業、日本女子大学大学院人間社会研究科心理学専攻博士課程前期修了。


非常勤講師として専門学校や大学に勤務し、臨床心理士として精神科クリニック、幼児相談室、大学の学生相談室、保健センターでの乳幼児健診、心の健康電話相談などでの臨床経験を経て、2017年2月より日本人会クリニックに勤める。


好きなこと;料理、読書、旅行、シュノーケリング

 Letter from Clinic (Apr issue) 2022