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The Heritage Trail③「The 3rd Orchard Heritage Trail」(Dec 2023)

01 Dec 2023

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 オーチャードロードという名前は、1840年代ごろ栽培されていたナツメグ果樹園により名付けられたと考えられています。1860年ごろには、農地だった土地の多くが市場に出され、オーチャードロードは、郊外の住宅地として発展し始めました。そして、中国人、マレー人、インド人、ユダヤ人などの様々なコミュニティが生まれました。これらの住民は、礼拝所、墓地、学校、地域組織を建設しました。それぞれのコミュニティが独自の施設を増やす中で、多文化遺産が残されました。今でもオーチャードロード周辺では、歴史的建造物を見ることができます。オーチャードロード周辺の人口増加に対応するため、1800年代後半から多くの起業家がここでビジネスを始めました。このエリアがショッピング、レジャー、ホテルで知られる通りに本格的に変化したのは1950年代からです。1980年代以降、オーチャードロードは、クリスマスライトアップやグレートシンガポールセールなどの企画もあり、商業地区として栄えています。


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Dhoby Ghaut


 オーチャードヘリテージトレールの出発点は、ドビーゴートです。ドビーゴートは1800年代初頭、市街地に最も近く水を提供する淡水の流れがあったため、オーチャードロードの初期の活動の多くが行われた地域でした。1827年まで、セポイ(イギリス軍に雇われたインドの兵士)の駐屯地がフォートカニングのふもとに拠点を置いていました。この守備隊には、スンゲイブラスバッサとして知られる川で衣類を洗濯するインド人の洗濯師も含まれていました。その後、この地域は、この活動にちなんでドビーゴートと名付けられました。ドビーはヒンディー語で「洗濯人」を意味し、ヒンディー語でゴートまたはガートは水浴びや洗濯に使用される川岸沿いの地域を指します。今では、商業地区として、プラザシンガプーラなどのモールや銀行が立ち並んでおり、たいへん栄えています。


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Orchard Road Presbyterian Church(長老派の教会)


 1878年に建てられたOrchard Road Presbyterian Churchは、オーチャードロード周辺で最も古い教会です。この教会が建設される以前、長老派(キリスト教の一派)は、1823年にブラスバサ通りに設立された礼拝堂やミッションチャペルで礼拝していました。1875年、長老派の信徒たちは、新しい教会を建てるため、政府からオーチャードロードに土地を与えられました。教会はシンプルですが、エレガントな新古典主義様式で、小さな屋根のドームがありました。マレー語で教会は、その大きさから「グレジャケチル」または「小さな教会」として呼ばれていました。初期の信徒には、スコットランド人も多かったため、植民地時代にはスコットランド教会としても知られるようになりました。独立後、信徒の層は変化し、1970年代末には地元の人々が信徒の半数以上を占めるようになりました。現在、教会は英語、北京語、インドネシア語、ドイツ語で礼拝を行い、地域の多様な長老派コミュニティに対応しています。私たちが訪問したときは、信者さんたちが、讃美歌の練習をしていましたが、親切に招き入れて内部を紹介してくださいました。


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Istana Park


 イスタナパークは、シンガポールの中心部に位置する美しい公園であり、シンガポールの大統領の公邸であるイスタナに隣接しています。この公園は、観光スポットとしても、地元の人々にとってリラックスできる場所としても人気があります。緑豊かな庭園や美しい景観が特徴であり、シンガポールの歴史と文化を象徴する重要な場所となっています。イスタナパークは広くはないですが、静かで落ち着いた雰囲気が特徴的です。公園内には、さまざまな大きさの植物が植えられており、トレイルを歩いたり、ベンチに座って休憩したりすることができます。特にシンガポールの気候を考慮して、木陰がしっかりと整備されているため、暑い日でも快適に過ごすことができます。


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Cuppage Terrace


 カッページテラスは、広い通り沿いに並ぶカフェ、レストラン、バー、ショップが特徴的です。昼間は地元のビジネスマンやオフィスワーカーで賑わい、夜になるとカップルや友人たちが集まって楽しむ姿が見られます。地元のシンガポール料理から国際的な料理まで、様々なレストランが並んでいます。リラックスした雰囲気で友人と過ごすのに最適な場所となっています。ショッピングもカッページテラスの魅力の一つです。地元のショップやブティックが並び、ファッション、アクセサリー、雑貨、アートなど、個性的な商品が揃っています。


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Emerald Hill


 エメラルドヒルは、シンガポールのオーチャードロードに近い歴史的な地区であり、独特の雰囲気と魅力的な建築物で知られています。この地区はシンガポールの繁華な中心部から少し離れていますが、訪れる価値のある美しいスポットとして、観光客や地元住民に愛されています。


 エメラルドヒルの特徴的な点は、歴史的なプラナカンスタイルの建築物が立ち並んでいることです。これらの美しい建物は、20世紀初頭から中頃にかけて建てられ、豪華でカラフルな外観が特徴です。プラナカンスタイルはシンガポールの多文化的な背景に影響されたユニークな建築スタイルであり、中国とマレーの要素が融合したものとして知られています。


 エメラルドヒルの通りには、歩いて散策することができる小道があり、ゆったりとした散歩を楽しむことができます。建物の美しい外観や豊かな植物が、緑豊かな雰囲気を出しています。


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Ngee Ann City


 ニーアンシティは、かつて潮州人の墓地だった泰山亭の場所にあります。元墓地の場所に完成した最初の建物は、1957年にオープンしたニーアンビルでした。1963年、ニーアンビルの隣の土地がインドネシアの会社に賃貸され、ウィスマ インドネシアが建設されました。賃貸料から得た資金により、ニーアンコンシ家は同年にニーアン大学(現在のニーアン工科大学)を設立することができました。ニーアンビルは1985年に取り壊され、その地域は1993年にオープンしたニーアンシティとして再開発されました。クリスマスやチャイニーズニューイヤーなどの時期は、イベントが開催され多くの人で賑わっています。


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Tang Plaza


 実業家のTang Choon Keng(タンチュンケン)は、1923年に中国のスワトウから持ち込んだ高級レースやリネンを人力車を雇って一軒一軒行商を始めました。


 第二次世界大戦後、タン氏は、潮州墓地の向かいにあった土地を購入することに決めました。なぜなら、タングリンとホーランドロードの住民だけでなく、ジョホール州からの人々もダウンタウンに向かう途中にこのエリアを通過するため、ビジネスとして最適であると感じたからです。


 タン氏は、独特の特徴を持つ建物が買い物客の注目を集めると考え、建築家のアンケンレン氏に中国北京の故宮をモチーフにした5階建ての建物の設計を依頼しました。そして、1950年代スコッツロード交差点近くにデパートC・K・タンをオープンさせました。ビルは、緑色の瓦が葺かれた塔のような屋根を、大きな赤い柱が支えていました。C・K・タンは、すぐにランドマーク的なショッピング・スポットとなりました。


 当初の建物は1982年により大きなタングスプラザに建て替えらましたが、緑色の瓦屋根や赤い列柱などのオリジナルの建物の特徴 の一部は、新しい建物のデザインに取り入れられました。現在、33階建てのパゴダのような塔と基壇には、Marriott Tang Plaza Hotel(マリオットホテル)とTangs Department Store(タングスデパート)が入っています。デパート入り口には、獅子が2頭据えられており、邪気を追い払っていました。5階エスカレーターを上がった所に展示してある昔の写真をカスタマーサービスの方に許可を得て、掲載させていただきました。


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Singapore Botanic Gardens


 ボタニックガーデンは、シンガポールの代表的な公園であり、国内外から多くの観光客や地元住民が訪れる人気のある観光スポットです。この広大な植物園は、美しい自然と多様な植物でリラックスできる散策や学びの場を生み出しています。植物園は1859年に創設され、現在は約63ヘクタールに及ぶ広大な敷地となっています。シンガポールの中心部に位置し、都市から離れて緑豊かな環境が広がっています。この植物園は、英国の植物学者であるヘンリーリドリー(Henry Ridley)によって、農業と植物研究のために設立されました。シンガポール植物園の特徴的な要素の一つは、オーキッドガーデン(Orchid Garden)です。ここでは、世界中から集められた美しいオーキッド(洋蘭)が展示されており、シンガポールの国花でもあるバンナ(Vanda Miss Joaquim)をはじめとする様々なオーキッドが見られます。シンガポール植物園は、シンガポールの自然と文化を体験できる特別な場所です。美しい植物や緑豊かな環境を楽しみながら、リラックスした時間を過ごすことができます。観光客にとっても地元の人々にとっても、シンガポールの魅力を満喫できる場所です。


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<編集後記>


 ヘリテージトレイルを歩き、記事にする活動を通して、オーチャードロード地区の発展、多様な民族や建造物の歴史的背景など、シンガポールの歴史と文化についてより深く知ることができました。さまざまなコミュニティが自身のアイデンティティを築き、その独自性を守りながらも、共に暮らす社会が形成されていることが伺えました。特に、オーチャードロード周辺の歴史的な建物や観光スポットは、過去と現在の融合を感じさせる素晴らしい場所であることがわかりました。文化遺産を未来に繋げる努力が、シンガポールの今につながっています。


 最後に、この文章を読んでいただく方々に、実際に訪れてみる機会を持っていただければ幸いです。シンガポールの歴史や文化がこの文章を通じて少しでも伝わることを願っています。


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参考文献


オーチャードヘリテージトレールサイト(閲覧日:2023年8月1日)


1.https://www.roots.gov.sg/en/places/places-landing/trails/orchard-heritage-trail


2.https://www.roots.gov.sg/en/places/places-landing/trails/Orchard-Roads-Historical-Gems


3.https://www.roots.gov.sg/-/media/Roots/Files/orchard-heritage-trail/nhb18_orchard_mapbro_eng_r5_fa_lr.ashx


 


4.Tang Plaza 5階フロア展示資料


 


文責・写真: 佐々木雅彦、大内秀平(日本人学校小学部チャンギ校教諭)、神田真也広報部理事

The Heritage Trail③「The 3rd Orchard Heritage Trail」(Dec 2023)