Letter from Editing room (Aug Issue 2026)
01 Aug 2026
皆さん、「モンキースティック」をご存じですか。「ゴールデンシャワー」と言った方がよく知られているかもしれません。シンガポールの街路樹によく見られる、黄色い花を付けるマメ科の大きな木です。花が歩道に金色のシャワーのように降り注いでいるのを見かけることも多いかと思いますが、花が咲いた後に、長さ30センチ以上もあるこげ茶色の細長い実がなります。それはまるでドラムスティックのよう。もし猿が拾ったら、きっとドラムを叩きたくなることでしょう。
私はこの春、シンガポールに赴任して来ました。実は、1997年からの3年間もシンガポールに赴任しています。今回は29年ぶり、まさかの2度目の来星に深いご縁を感じて参りました。
当時のシンガポールはまだ、どことなくのんびりとした雰囲気のある街でした。最高裁判所(今のナショナルギャラリー)も現役だったはずです。私は、そのあたりを涼しい時間に散歩するのが好きでした。
そして、路上に落ちているモンキースティックを見つけたのです。「いったい何だろう?」つやつやと立派に黒光りしていて、2本を叩けばコンコンと音がするほど固く、よく見ると、さやの中には種が縦にずらっと並んでいるようです。あまりのおもしろさに、私は植え込みの中にまで踏み込んで,夢中で拾い集めました。すると、掃除のおじさんが「何をしているんだ。」と不思議そうに尋ねてきたので、「部屋に飾りたいのです。拾ってもいいですか?」とドキドキしながら尋ね返すと、笑って一緒に拾い集めてくれました。思えばあのおじさんも、ブロワーではなくほうきを手にして、どこかのんびりとしていました。
私は持ち帰ったモンキースティックを、それから長いこと花瓶に飾っていました。本帰国してからは、黄色い花をつけた木を見かけると、モンキースティックとシンガポールのことを懐かしく思い出したものです
久しぶりのシンガポールは、その発展ぶりに驚かされるばかり。全くちがう国に来たかのようです。でも、街路樹を見上げると、あの頃と変わらぬ美しい緑が、熱帯の日差しから私たちを守ってくれています。
今度はどんなシンガポールに出会えるのか、今からわくわくしています。
(編集部 久野千賀子 シンガポール日本人学校中学部)
