aboutus-banner

Mental and physical self-care (news from the lecture) (Feb issue 2022)

28 Jan 2022

ワインと頭痛


 


 


 楽しくワインを飲んだ翌日、頭痛で「しまった。」と思った事はありませんか?
 赤ワインを飲むと必ず頭痛がする人、シャンパンが頭痛を引き起こす人もいます。頭痛とワインとの関係には個人差があります。ワインと頭痛の関係は解明されつつあるようですが、まだわからない点も多いようです。現在解っているいくつかの理由を簡単に説明します。


wwine_feb20222.jpg (147 KB)


glass-4.jpg (9 KB) 理由1 アルコールに対する耐性


 アルコールを十分分解する酵素がない事で頭痛が起こります。解決方法は残念ながら飲酒量を減らすしかありません。今まではお酒を飲んでも何ともなかったのに、後天的に症状を発症する人もいるそうです。


glass-4.jpg (9 KB)glass-4.jpg (9 KB)理由2 水分不足 


 お酒の飲み過ぎは水分不足を招きます。アルコールには利尿作用があり、飲酒量以上に水分を失い脱水状態に陥ります。脱水症状になると血液濃度が上がり血管を拡張させ血液の流れを良くしようとします。この急激な脳の血管の拡張が周辺の神経を刺激し頭痛を引き起こすと言われています。お酒を飲む時も飲んだ後も、こまめにお水を飲みましょう。


glass-4.jpg (9 KB)glass-4.jpg (9 KB)glass-4.jpg (9 KB)理由3 食品添加物


 ワインの酸化を防いだり酵母の発酵が進みすぎるのを抑えたり、雑菌を消毒したりする為に酸化防止剤を添加します。酸化防止剤には二酸化硫黄(広義では亜硫酸塩)が使われます。二酸化硫黄は個人差がありますが頭痛・胃痛を引き起こすと言われています。ワインに用いる食品添加物の残存量はそれぞれの生産国によって上限が決まっています。大量生産される安価なワインは、冷蔵コンテナや航空便ではなく気温が摂氏40〜50度を超える地域を船で運ばれる事を想定して酸化防止剤は上限まで投入されることが多いそうです。それらのワインは二酸化硫黄ではなくメタ重亜硫酸カリウム(メタカリ)をワイン液体内に投入し化学反応を起こさせ二酸化硫黄を生じさせます。メタカリは一部の人にとってはアレルゲンです。一概には言えないでしょうが、高級シャトーでは二酸化硫黄を瓶詰め前などに必要最小限吹き込む程度と言われています(作り手によって吹き込むタイミング、回数は異なります)。これが高級シャトーのワインを飲んでも頭痛がしない一因だと思います。毎晩、高級ワインを飲むわけにもいきませんので、頭痛防止には酸化防止剤が少ない「無添加ワイン」「有機栽培ワイン」又は「国産ワイン(各国の国内市場向けワイン)」を選ぶという手もあります。ちなみに一般的にドライフルーツはワインの約10倍の亜硫酸塩が含まれているのでドライフルーツを大量に食べて頭痛になる方もいらっしゃるかもしれません。


wwine_feb20221.jpg (186 KB)


glass-4.jpg (9 KB)glass-4.jpg (9 KB)glass-4.jpg (9 KB)glass-4.jpg (9 KB)理由4 ストレスからの解放


 緊張から解放されると片頭痛を起こしやすいとも言われています。忙しかった週の金曜日の夜にワインを飲むとワインが引き金になって週末頭痛を起こしやすいということもあるようです。


 アルコールを飲んだ翌日に頭痛がする時、前日何を食べてどのお酒を何杯ぐらい飲んだかアルコール&頭痛日誌を付けると意外なパターンが発見されるかもしれません。私はストレスがたまった週の金曜日ほっとして赤ワインをやや多めに飲むと土曜日頭痛と共に目覚めるという事を最近発見しました。


glass-4.jpg (9 KB)glass-4.jpg (9 KB)glass-4.jpg (9 KB)glass-4.jpg (9 KB)glass-4.jpg (9 KB)理由5 赤ワインの発酵過程で生成されるチラミンという物質


 最近の研究ではチラミンが関係していると言われています。チラミンは血圧上昇、片頭痛の原因となる物質です。赤ワインのほとんどはマノラクティック発酵をさせます(白ワインでは行わない事が多いです)。マノラクティック発酵はワインの中のリンゴ酸を乳酸と炭酸ガスに分解しワインの酸味を柔らかで深みのある風味に変えます。このマノラクティック発酵に使う乳酸菌によってはチラミンが生成される場合があると言われています。チラミンは体内の酵素によって代謝されますが代謝には個人差があるようで、代謝されないと頭痛を引き起こすと考えられています。因みにチラミンは多くのソーセージやチーズにも含まれています。


 頭痛の元と言われているヒスタミンですが、確かに赤ワインには白ワインより多く含まれています。但し、ワインへの含有量は少なく直接の原因とはみなされないようです。


 確固たる対処法は残念ながらありません。耐性不足は体質なので仕方がないですが、体質に合うものを理解し、水分をとにかく沢山摂ること、きちんと食事を摂ること、運動などをしてストレスを解消することなどを心掛けてワインを楽しみましょう。美味しくワインを飲むために私は早朝のウォーキングや定期的な運動も心掛けています。


wwine_feb20223n.jpg (122 KB)


文責・写真:佐藤多起 
日本人会ワイン講師、ボルドーワインの騎士、日本ソムリエ協会ワインエキスパート呼称資格


参考文献:
新ワイン学(ガイアブックス 編集幹事 戸塚昭、東條一元)
新しいワインの科学(河出書房新社 ジェイミー・グッド 梶山あゆみ訳)
オーガニック・ワインの本 (春秋社 田村安)
「片頭痛」からの卒業(講談社現代新書 酒井文彦)
奇跡のワイン(株式会社イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ企画 弓田亨)


 

 Mental and physical self-care (news from the lecture) (Feb issue 2022)