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Letter from Doctor (Sep issue) 2021

31 Aug 2021

医師、鍼灸師 日暮浩実


 


 新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンは既に多くの方が接種されたと思います。早く、新型コロナウイルスを気にしなくてよい世界になると良いと思います。さて、今回は、帯状疱疹ワクチンのお話です。


 


帯状疱疹ワクチン


 不活性化帯状疱疹ワクチンShingrixはシンガポールで認可されいます。日本でも2020年の1月から使用できるようになっています。


日本では、2016年1月に、水痘生ワクチンが、帯状疱疹の予防として、いわば、転用できるようになっていたのですが、発症予防効果は、50%程度と期待されたほどではありませんでした。


 帯状疱疹は自身の免疫力が低下した時に発症するのですが、既に免疫が低下している場合には、帯状疱疹の予防に水痘生ワクチンを打とうと思っても、生ワクチンであるため、免疫力が低下した人には使用できないという不利点がありました。


 しかしながら、この不活性型の帯状疱疹ワクチンShingrixは発症予防効果が97%と各段に優れており、原理的には、免疫が低下した人にも打てますので、人口の高齢化に伴い、日本でも接種をする人が増えてきています。


 


帯状疱疹とは


 皮膚がぴりぴり痛いなと思っていたら、小さな水ぶくれが、いくつか集まってできて、その周りが赤いなんていう病変がいくつかできた、かゆいというより痛いといった症状註1があれば、それは帯状疱疹が疑わしいです。


 原因は、水疱瘡を引き起こすウイルスと同じで、水痘帯状疱疹ウイルスといわれています。これは、ヘルペスウイルスに分類されますが、唇などにできる単純疱疹ヘルペスウイルスはまた別のものです。


 幼少期等に、水疱瘡にかかったことがある方は多いでしょう。水疱瘡を引き起こした水痘帯状疱疹ウイルスは、水疱瘡が治癒してもウイルスそのものは体から消え去ることはなく、そのままずっとその人の神経に生涯にわたり潜むことになります。そして、体の免疫が落ちてきた時、ストレスがかかった時などに<再活性化>して帯状疱疹という疾患を引き起こします。


 水疱瘡に感染しても、中には、発症しなかった人もいるため、日本人では成人の約90%が、体内に水痘帯状疱疹ウイルスをもっていると考えられています。そのため、日本人成人の90%は帯状疱疹を発症する可能性があることになり、統計により差がありますが、実際に15〜30%の人が生涯のうちに帯状疱疹を発症すると言われています。


 統計的には、患者さんの約70は50歳以上ですが、残り約30%は50歳以下となります。実のところ、当院で診た患者さんは、その多くが50歳以下でした。


 一度帯状疱疹を発症して治った方がすぐにまた、帯状疱疹を発症することは、一般的にはほとんどないですが、5年以上たつと再発症する方が増えてくることが報告されています。


 


帯状疱疹後神経痛


 帯状疱疹そのものが発症することはもちろん嫌ですが、治療薬はあり、急性の炎症症状は大抵の場合、治療開始後1、2週間で落ち着くのですが、困るのは、むしろそのあとに起こる帯状疱疹後神経痛です。帯状疱疹を発症した人のうち10%程度が発症すると言われています。神経痛の薬もあるのですが、なかなかに抑えがたく、3か月たっても4〜5人に1人、6か月たっても8〜20人に1人くらいの人は痛みが消えません。


 


 この不活性帯状疱疹ワクチンShingrixは50歳以上の人に適応があります。2回接種が必要です。標準接種間隔は2か月で、遅くとも初回から6か月以内に2回目を打つことになっています。


 水痘生ワクチンに比べますと、かなり高価なのが難点ですが、ご希望の方は、医療機関でご相談ください。


註1 症状は痛みだけで発疹のない無疹性帯状疱疹という場合もあります。


 


日暮 浩実 (ひぐらし ひろみ)


千葉大学医学部・同大学院修了(呼吸器内科学)医師、医学博士


Singapore College of Traditional Chinese Medicine卒、


シンガポール保健省認定鍼灸師、日本内科学会総合内科専門医、


認定内科医、日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医、


日本医師会認定産業医、日本結核病学会 結核・抗酸菌症認定医、


International Society of Travel Medicine Certificate in Travel Health 所持、Singapore National Skin Center Alumnus

Letter from Doctor (Sep issue) 2021