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Letter from Doctor (Jan issue) 2024

15 Dec 2023

 


心理学を使ってみよう!第三弾!今回は職場や学校において起きがちな心理効果です。 


 


 


その常識は貴方だけかも⁉


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フォルスコンセンサス効果 


 自分の常識が世間の常識と同じと錯覚する心理効果のことです。「偽の合意効果」とも言われ、自分の考え方や意見、行動が正しいものであり、常に多数派であると思い込みます。


 よく、「それ、常識だから…」などと同僚や部下、同級生や下級生などに言う方がいますが、それはフォルスコンセンサス効果の可能性が高そうですね。なので、そう言われたとしても、自分がおかしいのかなって即座に思わないようにしてください。逆に、相手が非常識だなと思っても、もしかしたら貴方の常識が少数派かもしれません。


 また、自分が飲みに行くのが好きだから部下も連れて行ったら喜ぶだろうとか、自分がサプライズが好きだから相手にもしたら喜ぶだろうというのも、このフォルスコンセンサス効果です。自分が好きなら相手も好きなはず、自分がされて大丈夫だから相手にしても大丈夫ということはないと思っておきましょう。フォルスコンセンサス効果に気づかず、自分の常識を他者に押し付けると人間関係の悪化やビジネスの失敗に繋がってしまうこともあります。自分と他者は考え方も感じ方も違うのだと肝に銘じておきましょう。他者との違いをお互い尊重し受け入れられる世の中になるとよいですね。


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他者に批判的・攻撃的になっていませんか⁉


 


ダニングクルーガー効果 


 自分に自信がなかったり能力のない人ほど、自分を客観的に評価する能力も低く、その結果、自分を過大評価して「自分は優秀」と思い込んでプライドが高くなる心理効果です。


 1999年にコーネル大学のデイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーが報告した心理効果です。2人は多くの人にスキルテストを受けてもらい、受検者に自分が何位にいると思うのかを自己評価してもらいました。その結果、テストのスコアが低い人ほど、自分の実力を正しく評価できず、自分はもっとできると思い込んでいる傾向があるという結果を認めました。


 この効果に陥っている人は、他人を批判したり攻撃してくる方が多いです。自分は絶対正しい、優秀と思い込んでいるからそうなるのでしょう。こういう方々には真正面からぶつかるとトラブルになってしまいます。彼らの話を傾聴承認し、丁寧に接してあげることでトラブルを回避するようにしましょう。そして、時々は自分がこの効果に陥ってしまっていないか、意識して客観的に見ることができるとよいですね。他人の悪いところにばかり目が行くようになったら、自分を見つめなおしてみましょう。


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その成功、あなたの実力・努力の賜物ですよ!!


インポスター効果


 こちらは逆に自分の本来の能力や実力を認められず過小評価していることを言います。能力があって成果も出していて、周りからは高い評価を得ているのに、自分では「運が良かっただけで実力じゃない」「チームメンバーに恵まれていただけで自分のおかげではない」などと思い込んでいます。そして過剰なまでに自分の能力不足を恐れてしまう傾向があります。


 こうなってしまう要因としては、幼少時に兄弟姉妹間の優劣を比較されて育ったり、自己肯定感が低く育ったりすることが挙げられます。他にも周りからの評価が変わることを恐れる傾向や、周りに優秀と評価されることによる、失敗できないプレッシャーを嫌い、成功を自分のおかげだと思わないようにする傾向があります。完璧主義で自分に厳しい人ほど、この効果にはまってしまうリスクが高くなります。


 自分の成功を自分の能力や努力の結果だと評価できなくなったら、自分自身に優しくなりましょう。自分で自分をほめてあげられるようになるとよいですね。


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自分の能力に蓋をしないで!!


 


セルフ・ハンディキャッピング


 皆さん、身に覚えはないでしょうか?


 テスト前日に部屋の模様替えを始めてしまったり、大掃除をしてしまったり…。


 テストが始まる前に、「今回全然勉強してないから…。」「体調悪いんだよね…。」とか。


 今回のテストは点数が低くても仕方ないという言い訳の準備ですね。


 このように、自分自身にハンディキャップを課して、失敗したとしても自分のせいじゃないと言い訳して、他人からの評価が下がらないようにしたり、自己肯定感や自分の評価を守ったりする心理です。


 実はこれ、無意識のうちに行っている人がとても多いです。背景には自己防衛、自信がない、過去の失敗経験などがあります。


 実際に失敗したときはダメージが減り、自尊心が傷つかないのでよいのですが、向上心が減って挑戦や努力をしなくなってしまいます。また、言い訳ばかりして、やる気も感じられないので周囲への印象もよくありません。そしてこのセルフ・ハンディキャップのせいで、自分の能力に蓋をしてしまっているかもしれません。


 まずは言い訳をしていないか、言い訳をつくっていないか見つめなおしてみましょう。そして、スモールステップで成功体験を重ねて自信をつけていきましょう。思ったより、他人は貴方を見てないし気にしていないものです。自分の潜在能力に自分で蓋を他人からの評価を恐れずに挑戦してみましょう。


 


文責:毛利由佳


画像:いらすとや


 


プロフィール:毛利由佳(もうりゆか)


担当診療科:総合診療科・心療内科


日本医師会認定産業医、公認心理師、日本外科学会元専門医、日本産業衛生学会会員、日本プライマリケア連合学会会員、日本精神科学会会員、日本心療内科学会会員、日本ライフスタイル学会会員、Physiological First Aid ファシリテーター、認知症キャラバンメイト、チャイルドコーチング、チャイルドカウンセラー、家族療法カウンセラー


2022年1月よりシンガポール日本人会クリニック医師として勤務

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