Heritage Committee Newsletter Visit to Changi Chapel & Museum (Feb issue 2025)
01 Feb 2025
チャンギ・チャペル&博物館見学
史蹟史料部
2024年3月9日(土)史蹟史料部歴史研究班バスツアーに参加させていただきました。バスツアーでは、チャンギ・チャペル&博物館見学とサリンブンビーチ上陸ポイントの見学を行いました。また、移動するバスの中では、史蹟史料部員の杉野さんからシンガポールの歴史についてのお話を聞くことができました。ここでは、チャンギチャペル&博物館見学を中心に書きたいと思います。
チャンギ・チャペル&博物館には、日本占領下でチャンギ刑務所に収容された兵士や市民の物語を紹介している施設です。チャンギチャペル&博物館はシンガポールのイーストに位置します。私が勤務している日本人学校小学部チャンギ校の近くにありますが、訪れたことはありませんでした。チャンギ刑務所と聞くと、私の既存の知識では第二次世界大戦後にBC級戦犯者が収容されていた施設という認識でした。しかし、ここでは、日本占領下のチャンギ刑務所について詳しく説明がされています。ミュージアム内では、8つの展示スペースがあります。『チャンギ要塞』『要塞の崩壊』『収容者』『戦争捕虜の生活』『逆境を乗り越える力』『逆境で発揮された創造性』『解放』『遺産』で構成されています。日本軍がどのようにシンガポールを占領したのかも詳しく知ることができます。
展示スペースの中で特に心に残ったのが『戦争捕虜の生活』です。当時チャンギ刑務所で収容されていた独房の再現が展示されています。扉に関しては当時チャンギ刑務所で使われていたものがそのまま展示されていました。独房の中は真ん中にコンクリートで作られたベットが置いてあり、その上に小窓がある造りになっていました。
独房といっても当時は収容できる人数よりもはるかに多くの人が収容されていたため、一つの独房を3人、4人で使っていたそうです。それだけでも当時の収容所の劣悪な環境を伺い知ることができます。食料はもちろん生活必需品も不足する環境に置かれていました。日中は肉体労働に従事させられている捕虜は常に飢餓と病気に苦しみ、命を落とす人も多くいました。ブキット・バトックの記念碑の建立もこのチャンギ刑務所の捕虜が行いました。また、シンガポール国外にも捕虜を派遣していました。ビルマ(現ミャンマー)とタイを結ぶ泰緬鉄道建設にも派遣され、多くの捕虜が命を落としました。
多くの苦しみがある中でも、なんとか生きようとする捕虜の中に絵を描くこと、音楽を奏でることの文化があったことも紹介されています。当時チャンギ刑務所内ではカメラでの撮影が禁止されていました。そのため、写真資料はわずかしかのこっていません。代わりに絵を描くことができたので、収容された人が、日常を描いた多くの絵を残しています。この絵から当時の収容所内の様子を伺い知ることもできます。
私が学んできた第二次世界大戦は日本の被害者面が多かったです。その面からも戦争を二度としてはいけないと強く思っていました。しかし、シンガポールで1年以上過ごしてみると、日本の加害者面の歴史に触れることが多くあります。今回の見学ツアーでもそうでした。この歴史は日本人として知らなければいけない歴史だと感じます。自分達日本人がされたことだけでなく、したことを学ぶことで本当の国際理解につながるのだと思います。日本人にとって心が痛む歴史を学ぶこと、正面から向き合うことをこれからも大事にしていきたいと感じました。
また博物館の中央にはチャペルがあります。チャペルのいすに腰掛け空を見上げると青空が広がっています。約80年前にも同じ空が広がっていましたが、きっとこの周りの景色は違うのだなと感じました。この空が永遠の平和につながる空になっていればいいなと思いながら、しばらく空を眺めていました。このような機会をいただいたことに感謝します。
文責:史蹟史料部部員 歴史研究班
日本人学校小学部チャンギ校教諭
内野貴司
