Letter from Editing room (Oct Issue 2025)
01 Oct 2025
前号のインタビューがきっかけで、先日シンガポール国立大学(NUS)を訪問してきました。その卓越した教育・研究水準だけでなく豊かな自然と最先端の都市機能が融合した唯一無二のキャンパス環境でも知られるNUSメインキャンパスは、シンガポール南西地区の丘陵地帯に広がっています。足を踏み入れたその敷地内には手入れの行き届いた庭園、静かな池、そして多様な植物が生い茂る緑地が点在しており、その穏やかな空気とマイナスイオンにすっかり癒されました。研究室を案内してくれたタン・レンレン先生は「まるで(ガーデンズバイザベイの)レインフォレストにいるみたいでしょ?」とチャーミングに微笑みながら語りかけてくれました。自然と共存する一方で、キャンパス内には世界トップレベルの学習・研究施設が完備されており、校舎内外の至る所に設けられたお洒落な学習・談話スペースで世界各国から集まった学生たちが熱心に学習している姿が印象的でした。 訪問の中で、多様な学部の希望学生が受講する日本語の講義を参観する機会を得たのですが、そこで経済学部2年のジョセフという若者に出会いました。彼はNUS『日本研究会』の副代表で、この会では日本への熱い思いを持つ学生たちが、茶道、日本舞踊といった日本文化を体験することはもちろんのことシンガポールと日本を繋ぐためのいろいろなイベント等を行っているそうです。日本の自然、文化、人に魅了されているというジョセフに将来の夢を尋ねたところ、「日本の島にアトリエの要素を取り入れたゲストハウスをオープンさせて、世界中の人々やアーティストを迎え入れたい」「より広い社会レベルの夢としては、日本の農村の活性化に力を注ぎたい。夏休みにバックパッカーとして日本国内を回った時に以前栄えていた市町村が衰退している様子を目の当たりにし、このような思いをもちました」との答えが返ってきました。 NUSでの出会いは、日本に熱い思いを寄せ日本の未来を真剣に考える若者が、日本から遠く離れたここシンガポールにいることを教えてくれました。若い彼らの熱意が、やがて大きな力となり、日本とシンガポール、そして世界を繋ぐ新たな道を拓いてくれる――そんな明るい未来を思わず期待してしまう、心温まる実り多き訪問となりました。
(シンガポール日本人学校小学部チャンギ校 編集部 吉田まりか)
