aboutus-banner

心と体のセルフケア(講座講師だより)連載コラム③(9月号 2021年)

31 Aug 2021

森さやか(インド政府認定ヨガセラピスト)


 


mind-and-body-self-care-column_Sep_2021.jpeg (6.46 MB)


『健康とは?』


 昨今、コロナ禍で在宅時間が増え、セルフケアの必要性を感じている方が増えています。セルフケアをどのように行うかは「健康」についてどう捉えるかによって異なってきます。


WHO(世界保健機関)の定義によると


 


 健康とは、「肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」


 WHOでは、「肉体的、精神的、社会的」という三つの側面から健康を捉えていることがわかります。ではヨガではどうでしょう?


 


ヨガでの健康の定義とは


 ヨガの古い文献には、私たち人間は以下の5層の鞘で出来ていると記されています。


①食物鞘・・・食べ物によって維持される、肉体


②生気鞘・・・日本語でいう「気」、生命力、エネルギー


③意思鞘・・・感情や心に関わる層


④理知鞘・・・判別能力の基準となる知性の層


⑤歓喜鞘・・・歓喜に満ちた層


mind-and-body-self-care-column_Sep_2021_2.jpg (937 KB)


 WHOでいう「肉体的」が①食物鞘、「精神的」が③生気鞘に近い概念ですが、「社会的」がない代わりに、②生気鞘、④理知鞘、⑤歓喜鞘があります。


 後者3つは、少し捉えにくい概念かもしれませんが、一体どのような概念なのでしょうか?


 


 「②生気鞘」は、日本語でいう「気」。ヨガでは「プラナ」と言われる生命エネルギーのことで、呼吸と深く関わっています。肉体に異常がなくても元気がなかったり、呼吸が浅かったり速かったりするのは、この鞘が乱れている状態です。


 「④理知鞘」は、自分の感情や行動を決定づける基準となる知性を指します。この層に乱れがあると、些細なことに感情を左右されやすかったり、自分の行動を制御しきれなかったりなどの影響があります。


 「⑤歓喜鞘」というのがとても興味深いのですが、人間の本来の状態はbliss(幸福)であるという考え方です。人はみな本来は純粋で幸福であり、幸福を求める存在だとヨガでは考えます。
この5層は、互いに影響し合っており、どの鞘のバランスが崩れていても全体が崩れてしまいます。


例えば、


・骨折をして歩けない時(①食物鞘の乱れ)、元気がなくなったり、痛みから呼吸が浅くなったり(②生気鞘の乱れ)、悲しくなったりする(③意思鞘の乱れ)


・睡眠時間は大切と知っていながら夜更かしを続けていると(④理知鞘の乱れ)、怒りっぽくなったり(③意思鞘の乱れ)、昼間に眠くなったり(②生気鞘の乱れ)、常態化して逆に不眠症になったりする(①食物鞘の乱れ)


 このように身体のどこかに問題がある時、「肉体①食物鞘」だけを治療しても、その原因に関わる他の鞘へアプローチをしなければ、治ったと思った症状がぶり返したり、違う形で表れたりします。病気の出入り口は③意思鞘、つまり心である、とも言われており、根本治癒を目指すため、ヨガセラピーではホリスティックに全ての鞘をケアしていくというアプローチをとります。


 各鞘のバランスが整ってきた時、人は本来の状態、つまり幸福を感じやすくなります。


 自分の今の状態を見る時、肉体だけではなく、上記のような異なる観点から自分自身を捉えるようにすると、多くの気づきを得ることが出来ます。


 体に疾患が出る前に不調に気がついたり、感情のブレやそれを引き起こす考え方の癖を発見できたりすることもあります。


 皆さんのセルフケアを充実させていく為のヒントのひとつになりましたら幸いです。


 


文責・画像:森さやか
(インド政府認定ヨガセラピ
スト)日本人会開講講座(ベーシックヨガ/体幹ヨガ/女性の為のヨガセラピー/体幹ヨガベーシック/ヨガストレッチ〜柔軟性を高める〜)

心と体のセルフケア(講座講師だより)連載コラム③(9月号 2021年)