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心と体のセルフケア(講座講師だより)ワイン編 連載コラム①(12月号 2021年)

24 Nov 2021

ワインと健康 「酒は百薬の長」か?


 


 ワインは健康に良いと言われています。インターネットを見るとワインは心臓病、脳卒中、癌、認知症、糖尿病、骨粗しょう症等をある程度防ぐと出てきます。まさしく「酒は百薬の長」のようです。但し、厚生労働省のホームページには「お酒に強い人は要注意」とも書いてあります。第一回目はワインと健康についてお話したいと思います。


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ワインは分かち合うもの
Wine is for sharing


 


 既存の疫学研究から厚生労働省では、総死亡数・虚血性心疾患・脳梗塞・二型糖尿病などで非飲酒者に比べて少量飲酒者のリスクがむしろ低く、飲酒量が増えればリスクが高くなると述べています。これが飲酒の健康面での利点とされています。少量飲酒者が良いとされるのはわかりましたが、ワインの適量とはどのぐらいでしょうか。


 厚生労働省の推奨する「節度ある適度な飲酒」量は1日平均約20g程度のアルコールです。ワイングラスの量に換算すると、アルコール14度のワイン180ml(赤ワイングラスで約1杯半、四人で1本)で20gのアルコールを摂取したことになります。1日の量としては少ないと思われる方もいらっしゃると思いますが、この量は数日単位での量です。よって、肝休日を作ると肝休日の前後の量が増やせます。また、アルコールの度数が低いワインを飲むのも一つの方法かもしれませんね。白ワインのアルコール量は概ね11〜12%です。シンガポールは輸入の酒税が高いためアルコール含有量が10%未満のワインをワインショップの店頭で見かけます。低アルコールワインはより果実味を感じたり、軽やかな味わいを楽しむことができます。ブラインド・テイスティングで出されても特に白ワインはもともとのアルコール度数も低いため違いがあまり判らなかったりします。世界保健機関(WHO)のヨーロッパでは過剰なアルコールの摂取は成人病を起こすと注意を喚起しています。フランスでもワインの飲酒量の平均が年々減ってきています。


 適量の赤ワインを飲むと生活習慣病の予防になると言われていますがそれは赤ワインに含まれるカリウム、ポリフェノールによる抗酸化作用の効果と言われています。心臓病・動脈硬化の予防ができるほどの有効成分を取り入れるには一日に赤ワインを150〜250㏄(1〜2杯)の量が必要だそうです。でもこれでは飲みすぎになるので他の食品と組み合わせて基準値に達することが良いかと思います。乳癌の予防効果は赤ワイン1杯分ぐらいで効果があると言われています。


 白ワインは赤ワインに比べて約1割しかポリフェノールを含まないと言われています(フランスのピノ・ノワール種とフランスのシャルドネ種を比較)。よってポリフェノールの恩恵を得ることは出来ないのですが、白ワインには赤ワインよりはるかに殺菌作用がありますので食あたりを防ぐ効果があります。生牡蠣には白ワインが必要な訳ですね


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Château Lynch Bages, Bordaux, France


 


 ワインを飲まない、好きでない、アレルギーがある方もいらっしゃいます。そんな方々にはワインをお料理に使っては如何でしょう。アルコールは加熱で殆どが蒸発しますが、大部分の成分はそのまま、もしくは料理素材中の成分と反応して料理に残るため、似たような効果が期待されます。我が家では肉の煮込み料理に安価なワインを大量に投入したり、ワインを煮込んでワインゼリーやフルーツのコンポートを作ったりしています。アルコールの沸点は約摂氏78.5度です。料理の仕方、使用しているお鍋の大きさによってアルコールが飛ぶ速さが違うようですがアルコールを限りなくゼロにするには少し時間がかかるようです。アルコールにアレルギーがある方、小さなお子様が召し上がる際にはその点にもお気をつけ下さい。


 百薬の長であるお酒ですが、アンチエイジングや健康増進を期待するには何と言っても、気の置けない仲間と適量を楽しむのが秘訣のようです。私の好きな言葉は「ワインは分かち合うもの。Wine is for Sharing」です。1日も早く、友人達とワインを囲んで楽しい時間が過ごせるようになりますように。


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筆者 Château Margaux, Bordaux, Franceにて


文責・写真:佐藤多起 
日本人会ワイン講師、ボルドーの騎士、日本ソムリエ協会ワイン・エキスパート呼称資格


参考文献:
新ワイン学(清水健一著 講談社)
ワインの科学(戸塚昭、東条一元編 ガイアブックス)
厚生労働省ホームページ
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-03-001.html 


httsp://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000176279.html


世界保健機関ヨーロッパ WHO Europe
http://www.euro.who.int/en/health-topics/disease-prevention/alcohol-use

心と体のセルフケア(講座講師だより)ワイン編 連載コラム①(12月号 2021年)