日本×シンガポール 学生国際アート交流展(2月号2023年)
31 Jan 2023
展覧会概要
2022年12月1日(木)から17日(土)までジャパン・クリエイティブ・センターにて「日本×シンガポール学生国際アート交流展」が開催され、延べ660人の来場がありました。シンガポール日本人学校3校からは約150名、シンガポール現地校からは約160名が参加しました。
2021年、日本人学校は「日本の図工教育とシンガポールのアート教育」と題した展覧会を開催しました。同展は日本とシンガポールのアート教育の違いをテーマに、異文化理解を深めるという目的で企画されました。2022年はさらに一歩進み、日本とシンガポールの子どもたちが交流し、共同でアート制作をするというプロジェクトが行われました。
このプロジェクトでは、まず大きな紙に日本人学校の子どもたちが線画を描き、小さく切り分け、参加する子どもたちに届けました。それを子どもたちが自由に形や色を描き足し、再びつなぎ合わせて、11点の大作が完成しました。企画した当初は新型コロナウイルス(COVID-19)の規制も厳しく、絵をつなぎ合わせる作業を対面で行う計画ではなかったのですが、規制の緩和に合わせ、子どもたちが顔を合わせて作業するように計画を変更しました。この対面交流会は、日本人学校小学部チャンギ校と中学部を会場として開催されました。
対面交流会(小学部)
10月29日(土)シンガポール日本人学校小学部チャンギ校の体育館でシンガポール現地校と日本人学校の参加者が対面で共同制作を行いました。日本人学校からはチャンギ校とクレメンティ校合わせて40名が参加し、シンガポール現地校からも40名の児童が参加しました。参加したのはカジュアリーナ小学校とジュンヤン小学校の生徒です。
交流会ではグループ作りのレクリエーションをした後に、参加者全員が自分が描いた絵を見せながら自己紹介をしました。その後、グループごとに共同で絵をつなぎ合わせる作業を行いました。最初は緊張していた面持ちの子どもたちでしたが、次第に打ち解け、協力して絵をつなぎ合わせて、合計10点の大作が完成しました。
対面交流会(中学部)
10月26日(水)シンガポールの特別支援学校パスライトスクールの生徒とシンガポール日本人学校中学部美術部の生徒による共同制作が行われました。お互いの言語を用いた自己紹介から始まった交流では、それぞれの文化に対する高い関心が窺えました。
その後、4つのグループに分かれ、描いた絵をつなぎ合わせていきました。「この絵はこの場所じゃない?」「ここかもしれないよ」とお互いに声を掛け合いながら、作品はどんどん大きくなっていきました。完成した作品からは不思議な力強さが感じられました。1人で作るのではなく、大勢の思いが交じりあう交流会ならではの作品が完成したと思います。
制作後の生徒たちからは「貴重な経験になった」という声が聞こえました。
オープニングセレモニー
12月1日(木)展覧会初日には会場にてオープニングセレモニーが行われました。セレモニーは共同制作した大作に囲まれながら行われました。セレモニーでは在シンガポール日本国大使館の石川浩司大使、シンガポール教育省のアートディレクターのクララ氏、シンガポール日本人学校小学部チャンギ校の中谷校長がスピーチを行いました。日本国総理大臣補佐官の森まさ子氏もオンラインで参加し、展覧会の意義を強調しました。
結びに
新型コロナウイルスの規制が緩和されつつある中で行われた今回の展覧会では、実際に子どもたちが交流することで作品が出来上がりました。共同制作を行う過程では、異なる言語を話す中でもお互いにコミュニケーションをとることが必要不可欠でした。対面の交流が実現したことで、ただ作品を作るだけではなく、今回の目的である異文化理解も達成できたのではないでしょうか。
美術がお互いの存在を感じること、お互いが交わるツールとして機能していく世界が、これから広がっていくことを願っています。
文責・画像:シンガポール日本人学校中学部教諭 松田航平
<筆者プロフィール>
シンガポール日本人学校中学部教諭美術科担当。
