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輝くミモザ 第17回 ジャパン・クリエイティブ・センター(JCC)所長 河邊章子さん(11月号 2024年)

22 Oct 2024

 


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第17回 


ジャパン・クリエイティブ・センター(JCC)所長  河邊章子さん


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シンガポールの方たちが日本の魅力に直接触れて体験する時に、非常に興味深そうにされていたり、楽しそうにされていたりする姿を見るのが一番嬉しいですね。


 


✿プロフィール 河邊章子さん✿


これまで、在アフガニスタン日本国大使館や、外務省大臣官房G7広島サミット事務局など、世界と日本の橋渡しとして、グローバルに活躍。2023年7月よりジャパン・クリエイティブ・センター(JCC)所長としてシンガポールに赴任し、現在に至る。


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聞き手・文責・写真 


シンガポール日本人学校小学部クレメンティ校教諭


宇野静、長谷川郁貴、川崎有希


ジャパン・クリエイティブ・センター(JCC)の設立の目的と内容について教えてください。


河邊さん ジャパン・クリエイティブ・センター(Japan Creative Centre 、以下JCCと略す)は2009年11月14日に開設されました。シンガポールの方たちや周辺地域の方たちに日本の文化や科学技術など、日本に関する情報の発信拠点として活動しています。「Innovation and tradition(革新と伝統)」をテーマに、色々なことをお伝えするのですが、具体的には伝統やデザイン、技術、文化、グルメ、観光、ポップカルチャーといったものについてのイベントを色々な形で開催しています。日本ブランドや日本の魅力を海外の人に知ってもらえる機会をつくることができて、とても嬉しく、光栄に思っています。


 例えば、今年はJCC設立15周年ということもあって、15周年記念トークシリーズというものをやっています。今年の2月には、ハンマー投げの金メダリスト室伏広治さんのトークイベントを日本人会館のオーディトリアムで開催させていただきました。他にも、ノーベル物理学賞を受賞された梶田隆章教授や、NHK交響楽団の元理事長の今村啓一さん、AIの第一人者の松尾豊教授、遠州茶道宗家家元の小堀宗実先生にもこれまでにお越しいただきました。


 他にも、いろいろなイベントをしています。例えば、青森県のイベントでは、お酒、特産品、ねぶた祭りなどを紹介しました。そして、浴衣を着て、ねぶた祭りの様子を見ながら、それをバックに写真を撮って楽しみました。このようなイベントを行い、シンガポールの方たちが日本の魅力に直接触れて体験する時に、非常に興味深そうにされていたり、楽しそうにされていたりする姿を見るのが一番嬉しいですね。


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2007年の日本・シンガポール首脳会談の結果、JCCの設立が合意されたと聞きましたが、その背景について教えてください。


河邊さん 当時、イギリスやドイツなど、ヨーロッパ諸国は言語の教育や文化を発信するセンターをシンガポールに持っていました。 一方、日本の技術に対する製品への信頼が高かったり、漫画やアニメも人気だったりと、すでにシンガポールで日本への関心は高かったのですが、日本の文化を発信する施設はありませんでした。このような経緯を踏まえて、日本の魅力を伝え、情報を発信する拠点をシンガポールに設立することになりました。シンガポールは、東南アジアのハブということもあって、日本の文化発信拠点をシンガポールに置くことは大変意味のあることだと思います。


どのようなイベントが人気ですか。


河邊さん 様々なイベントがあり、募集をするとすぐに満席になるものも多いです。中でも食や地方のイベントは特に人気です。それから、日本の工芸や映画も人気があります。


 日本映画祭は昨年で40周年を迎えましたが、JCCは設立以来、日本映画祭を共催しています。毎年秋に市内のいくつかの映画館で日本の映画を上映しています。また、JCC独自の映画上映会も開催しており、JCCやOur Tampines Hub(シンガポールのコミュニティセンター)のシネマなどで、これまでに92回程、映画を上映しています。最近はアニメが多く、親子連れにもいらしていただけるように、「名探偵コナン」や「ひるね姫」など、上映をしています。今年3月にガーデンズ・バイ・ザ・ベイで桜祭りがあった時は、その場所で「ジョゼと虎と魚たち」を上映しましたね。


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どのような人たちがイベントに参加するのでか。


河邊さん シンガポールや東南アジアの人たちに日本のことを広報することがJCCの1番の目的なので、シンガポールの方たちが多いですが、他国の方たちや日本人の方もいらしています。


 イベントのお知らせを発信すると、イベントによってはあっという間に申込が来ることもあり、シンガポールは日本がものすごく好きな方が多いと感じます。リピーターとして日本に旅行に行く方も多いです。そういうこともあって、簡単な日本の紹介ということにとどまらない、日本の新しい側面をもっと知っていただくことができるよう活動していくことが必要だと思っています。


 以前のイベントでは、日本米を何種類も持ってきて、色々な地方のブランド米を食べ比べてみたり、観光地としてあまり知られていない地域を紹介したりしました。そういうことをしていくことで、単に日本が好きとか日本のファンではなく、新しい側面を見て、日本への興味や関心、関わりを掘り下げて、継続していただけたらと思っています。


  同時に、今まで日本にあまり触れたことのない方に、日本の魅力を知ってもらうということも大切ですから、「広がり」と「深み」の両方を追及する活動を考えています。例えば、オーチャードにあるJCCで行うイベントの他にも、コミュニティセンターといったところと連携をして行うイベントもあります。つまり、シンガポールの中心部に出てこない方たちの近くに出向き、日本の文化に触れていただく機会をつくっています。


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どういった年齢層の方が多いのですか。


河邊さん 幅広い年齢層の方にいらしていただいております。一番多いのは30代や40代の方だと思いますけれども、お子様から高齢者まで色々な方がお越しになっています。学校がお休みの期間や週末には、お子様にも楽しんでいただけるような企画をしたりワークショップをしたりしています。そのため、ありがたいことに親子連れでいらっしゃる方もたくさんいます。


 お米のイベントをした時は、親子向けのおにぎりワークショップも行いました。また、静岡県のイベントの時はプラモデルを作りました。静岡県はプラモデルの生産が盛んということで、JCCの多目的ホールにサーキットを作って、みんなで走らせました。


 JCCにあるこの多目的ホールが色々なものに変身するんですよね。椅子の向きとか仕切りの仕方を変えることによって、それぞれのイベントのカラーが表現できるところにとても面白さを感じています。


他国と比べた日本の魅力は何だと思いますか。


河邊さん 東南アジアにない四季が日本にあることは非常に大きいと思います。春夏秋冬を巡って、景色、食べ物など、色々な違いを、シンガポールの方たちは一つひとつ楽しんでいらっしゃると思います。シンガポールの方たちと会話をする中で、観光地としてあまり知られていないところまで知っていて驚かされることがあります。中山道に行く方もよく耳にしますし、他にも地方でウォーキングをしたり、ジョギングをしたり、いわゆる日本ならではの暮らしの様子を見たいという方が多いです。また、自然を楽しむ方も多く、シンガポールより長い距離を走れる日本でドライブをしながら旅を楽しむ方も多いです。


 日本が人気なもう1つの理由として、日本は同じアジアというところもあり、親しみを持っていただきやすいということがあるのではないでしょうか。例えば、日本の食べ物でも実際に食べてみるとシンガポールの食べ物と違いはあるけど、どこか根底に味わってきたものと似ていて親しみやすいところがあると思います。


日本文化のさらなる普及に向けて、今後の展望を教えてください。


河邊さん 先程申し上げたように、日本への関心の「広がり」と「深み」の両方を追及していくことです。そのためには、色々なアイデアや視点を持ち、昔ながらの文化や伝統、そして時代とともに変化している文化の両方を把握しつつ、日本の魅力をどのように伝えていくか常に考えています。


 もう一つは、どのようなことが受け入れてもらいやすいのか、どういうことに関心をお持ちなのか、シンガポールの方たちの視点を大切にして、JCCに勤めている現地の人たちともアイデアを相談をしながら進めていきたいです。


 2026年は日・シンガポール外交関係樹立60周年があり、来年はシンガポール建国60周年記念もあるので、日本とシンガポールの友好関係を促進するような活動をさらに進めていきたいと思っています。 


JCCから日本人会員へメッセージはありますか。


河邊さん 日本を離れると、日本の様々なことを見つめ直したり、日本の文化を懐かしく感じたり、日本の文化に新たに触れたいと感じる機会があると思います。JCCのイベントがそういったことの何かヒントになればすごく嬉しいですし、すでに日本にご関心を持ってJCCに来てくださる方に対してもとてもありがたいと思っています。


 シンガポールの方たちに向けて日本のことを発信しておりますが、そこに日本の方たちにも来てもらい、一緒に体験したり話を聞いたりすると、新しい発見があります。シンガポールの方たちはこのようなことに興味や関心を持つのかと新鮮に感じられると言いますか、新しい学びにもなるし、同じものに共感できることを知ることはとても良いことだと思います。例えば、シンガポールの方たちと一緒に映画を観たときに、日本の映画館で観た時とは違う感動があります。このセリフが面白いポイントになるのかとか、些細な面白い場面でもちゃんと通じてるなとか、あるいは全然違うところで、こんなに面白いんだとか、そういうことを感じ取るだけでもその場にいて良かったと思います。日本の方たちにも是非いらしていただき、シンガポールの方たちとお互いのことを共有して学び合い、新たな日本を再発見していただきたいと思います。


インタビュー後談


 今回のインタビューを通じ、日本の文化や地方の魅力を改めて認識しました。シンガポールやその周辺地域に住む多くの方々が、日本に対して強い関心を寄せていることに驚き、私たちにとって「当たり前」の日常が、彼らには新鮮で魅力的に映ることを大変嬉しく感じました。このような視点の違いは、日本の新たな魅力を発見するきっかけにつながります。


 近年、あまり明るいニュースが報じられない日本ですが、他国からのポジティブな評価に触れ、日本を異なる視点で見つめ直すことの大切さを学びました。教員として、日本の豊かな文化や魅力を子どもたちに伝えていくことができるよう、今後はJCCの活動にもぜひ参加させていただきたいと思いました。貴重なお話をありがとうございました。


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輝くミモザ 第17回   ジャパン・クリエイティブ・センター(JCC)所長 河邊章子さん(11月号 2024年)