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輝くミモザ 第9回 日本政府観光局 シンガポール事務所 所長 永井 初芽さん(4月号 2022年)

29 Mar 2022

 


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シンガポール人にとっての日本を、日本人にとってのハワイみたいにしたいのです。日本は子供からお年寄りまで連れていける安全な国だし、年齢や興味関心に応じて楽しめるものがたくさんあるので、第二の故郷みたいに思ってもらえたら嬉しいです。


 


✿プロフィール 永井 初芽(ながい はつめ)さん✿


2006年  日本政府観光局入構
2008年   パリ事務所
2019年 シンガポール事務所 上席次長
2020年 3月より現職


聞き手・文責・写真 


シンガポール日本人学校小学部チャンギ校教諭 
小林智原田渚未
広報部理事 神田真也


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インタビューの様子(左から)小林智教諭、原田渚未教諭


日本政府観光局ではどのようなお仕事をされていますか。


永井さん 日本政府観光局は海外から観光目的で日本に来るお客さんを増やすことをミッションとしています。旅行先としての日本に興味を持ってもらうためのプロモーションをしたり、航空会社や旅行会社の訪日商品の造成・販売を支援していくのが仕事です。一つ具体的に私達が取り組んだことを紹介します。ちょうど今ジャパンフェアというのをやっています。普段はプラザシンガプーラなどでブースを立てて行っていたのですが、今はコロナ禍なのでオンラインで開催しています。その中で、日本各地30箇所以上のバーチャルツアーが楽しめるようなページを作ったり、日本のお土産を紹介したりしています。また、雪が降る秋田のお祭りの様子を配信したり、神奈川県の漁市場から配信したり、日本の今をリアルに伝えるということに力を入れてやっています。


シンガポールには日本のことが好きな方が多いと感じます。


永井さん シンガポールは国民の7割が訪日経験者なんです。日本に行ったことがない人のほうが少数です。日本のことをよく知っているし、リピーターも多いです。


7割は多いですね。シンガポールの方は日本のどのような点に興味を持っているのですか。


永井さん 私達は様々な調査をするのですが、必ず一番になるのが「日本食」です。そして、シンガポールには四季がないので、日本ならではの四季を感じられるもの、桜、紅葉、雪などが人気です。あと、大自然と呼べるようなものもシンガポールにはないので人気があります。東京や大阪でのショッピングも必ず上位に入ります。ただし、先ほども申し上げたとおり、シンガポールの方はリピーターも多いので、リピーターならではの多様化するニーズにどう応えていくかというのを考えています。


例えばどのようなコンテンツがあるのですか。


永井さん 最近だとアニメや漫画に関わるものや、アウトドアアクティビティなどを紹介したり、日本人みたいな暮らしを体験しながら旅するというような、よりローカルっぽいコンテンツを紹介したりして、ターゲットやテーマも多岐にわたっています。


シンガポールの方に人気がある日本のスポットはどこですか。


永井さん 都市で言うと北海道、東京、大阪が圧倒的に人気です。ただ、私はもうちょっといろんなところに行って欲しいなと思っています。リピーター率でいうとシンガポールはASEANの中では1番高いのですが、地方に観光に行く割合で考えるとタイとかマレーシアよりも少ないんです。四国は訪問率でいうと高くはないのですが、2年連続で四国の魅力をお伝えしていたら、アンケートの中ですごく人気が上がってきているのがわかりました。そういうのを増やしていきたいなと思っています。


シンガポール訪日客の特色はありますか。


永井さん 私は3つあると思っています。1つ目は先ほどもお話したように、シンガポールには日本のことが好きな人が多いということ。訪日経験者が7割というのは、日本に近い台湾とか香港、韓国に次ぐ多さで、シンガポールの一つの特徴です。2つ目はリピーターが多いということ。そして3つ目は訪日旅行で使うお金が多いということです。調査を見ると一日あたりの消費額が他の国に比べて上位に来ます。欧米の旅行客に比べて長期滞在はしませんが、生涯に渡って何度も日本に来てくれて、消費額も高いということでシンガポールは日本が力を入れていくべき市場であることは間違いありません。


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インタビューの様子(左から)永井初芽さん、広報部神田理事


 


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インタビューの様子


 


日本の魅力を発信したり、旅行コンテンツを作ったりするときのアイデアはどのように考えるのですか。


永井さん 私達は様々な形で調査をして、そういうものからアイデアを出していきます。調査会社を使って大規模な調査をすることもあれば、数字だけではわからないこともあるので、少人数でグループインタビューをして話を聞く、というようなこともやります。アイデアをコンテンツに落とし込むときには、私たち単独で検討するだけでなく、旅行会社や自治体さん等とも協力してたりします。


どうして政府観光局で働き始めたのですか。


永井さん 外国の人が日本のここがいいとか面白いと言っているのが、私が考えていた日本と違って面白いなと思ったことがあったんです。どの国から見るかによって日本の見え方が全然違うんだなということをその時に感じました。それで、もっと世界のいろんな人に日本に来てもらって知ってほしいという思いを強く持ちました。日本のことを知ってる人はたくさんいると思うのですが、実際に日本に来て触れて欲しいという気持ちが強くて、そういう意味ではここしかないという感じです(笑)。


シンガポールの方に伝えたい日本の良さは何ですか。


永井さん 先程もお話したとおり、日本が好きで、リピーターが多いシンガポールの方に「今更日本の良さはこれですよ」って漠然と伝えてもしょうがないと思うんです。だから、私が思っているのは、シンガポール人にとっての日本を、日本人にとってのハワイみたいにしたいのです。日本は子供からお年寄りまで連れていける安全な国だし、年齢や興味関心に応じて楽しめるものがたくさんあるので、第二の故郷みたいに思ってもらえたら嬉しいです。ちょっと遠いけどみんな何度も行っている、日本がそんな国になれたらいいなと思います。


わかりやすい例えですね。さて、仕事にやりがいを感じるときはどんなときですか。


永井さん 私たちはそんなに大きな組織ではないので、割と自分のアイデアを形にしやすいところがあります。アイデアが出たら関係する人で集まって議論して「じゃあ、それやろう」と進んでいけるのでモチベーション維持に繋がります。上から降りてきたものをただやる、というのではなくて自分たちで考えてできるのが楽しいです。ジャパンフェアもオンラインでやろうとなって、ああしようこうしようと考えて作って、実際に多くの人が見てくれて、とても嬉しく感じました。


仕事をする上で気をつけていることはありますか。


永井さん 観光のことって考えるだけでも楽しいので、ディスカッションの中でたくさんアイデアが出るんですけど、アイデアだけで進めると目的を見失うというか、自己満足で終わっちゃうこともあります。だから、ゴールを常に明確にすることを心がけています。皆でそれを共有して、事あるごとに確認する。事務所の皆にもそういうふうに考えるように伝えています。データなどもよく使います。もちろん必ずしも数字が1番大事ではないんですけど、データからヒントを探したりデータをベースに考えたり。客観的なものを横に置いて考えるように気をつけています。


勉強になります。コロナによってどんな変化がありましたか。


永井さん 例えばバーチャルツアーのような、日本からのライブ配信ってコロナの前はほとんどなかったと思うんです。でも今はすごく一般的になっています。また、聞いたことがないような地名のコンテンツでもそうやって配信すると、シンガポールの人は結構見てくれるんです。そうやってその地域についての知識が深まると、コロナが明けたら行ってみようと思っていただけるのではないかと思っています。シンガポールの人たちは今でも日本に行きたい行きたいと言ってくださっています。そういうところに支えられています。


日本の良さを外国人に伝えるための工夫等はありますか。


永井さん 私は今までシンガポール以外の国も担当してきているのですが、やっぱりそのマーケットを知る事の大切さというのを感じています。例えば広告などに使う写真で、この国はこういう色使いが好まれるとかこういう構図が好まれるなど色々な違いがあるので、マーケットを知るのはすごく大事なことです。また、同時に日本のこともたくさん知っていないと、こういうニーズがあるならこれがいけるかも、というふうに思いつくことができません。その両方が大切かなと思います。


ワークライフバランスについてはいかがですか。


永井さん 観光の仕事をしていると日常生活の遊びの部分が仕事につながってくるんですよね。紙とかウェブで読んで勉強してもピンとこないものが、一度観光に行けばすぐわかるじゃないですか。また、例えば東京都内で新しい話題のスポットができましたとなったら自分で見に行ったほうがいいし、最近外国人がいっぱい来ているご飯屋さんがあるとなったら食べに行ったほうがいいし、いわゆる仕事だけが仕事ではないというか。無理をしてでも自分で足を運んで自分で調べる時間を作った方が私は楽しいし結局それが仕事に役に立つかなと思っています。


お忙しい中でストレス発散はどのようにしていますか。


永井さん 今は結構どこでも仕事ができますよね。私はよっぽどのことがない限り休みの日はメールを開かないようにしています。休みの日もちょっと仕事をすることで仕事がはかどるタイプの方もいると思うのですが、見ると気になっちゃうじゃないですか。オンオフを切り替えるというのは自分のスタイルとしてそうしています。


最後に、シンガポールにいる日本の方にメッセージをいただけますか。


永井さん シンガポール人が日本に魅力を感じてくれているのは、観光プロモーションだけが功を奏しているというよりは、シンガポールで過去にご活躍されてきた日本人の方や企業、日本の商品がポジティブに受け止められてきたからだと思っています。
 また、色々な調査によると、観光へのきっかけを作るのは「口コミ」が大きいということがわかっています。口コミは政府観光局が努力してもどうにかできる部分ではないのです。せっかくシンガポールに住んでいらっしゃる日本の皆さんには、自分の好きな日本の観光地とか出身地の良さをぜひ周りのシンガポールの人に伝えてほしいなと思います。


インタビュー後談


 日本にもっと沢山の外国人観光客が訪れてくれたらうれしいですよね。お話を聞いてシンガポール人に向けて、日本の魅力を発信していくお仕事というのはとても魅力的だと感じました。現地のリサーチをしっかりしてプロジェクトを進めることなど、私個人的にも勉強になるお話をたくさん聞くことが出来ました。ありがとうございました。


  小林智


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インタビューを終えて、記念写真
(左から)広報部神田理事、小林智教諭、永井初芽さん、原田渚未教諭


インタビューは2022年2月16日(水)に日本人会にて行われました。


 

輝くミモザ 第9回 日本政府観光局 シンガポール事務所 所長 永井 初芽さん(4月号 2022年)