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ドクターからの手紙 コロナ禍での過ごし方(11月号 2020年)

01 Nov 2020

医師 白井隆光


 


 南十字星読者の皆さま、こんにちは。日本人会クリニックの白井です。コロナの影響で制約がある中、どのようにお過ごしでしょうか?この原稿を書いている時点でサーキットブレーカーは終わり、フェーズ2となってはいるものの、在宅勤務者は多く、マスクもつけず自由に旅行ができるのはいつになるのか先が読めない状況です。このように、先が読めず何かと制約がある状況の中での過ごし方について、私が日頃思っていることをつづっていきたいと思います。なお、医学的根拠が乏しいものも一部、含まれますが、あらかじめご了承ください。


 


(1)仕事/学業(ON)と休息(OFF)の切り替えをつける


 コロナ流行前と比べ、皆さま、何らかの活動制限を余儀なくされていることと思います。このような中、以前でしたら簡単にできた気分転換が出来なくなり、生活が単調になっているのではないでしょうか?ステイホームの中で、仕事時間と休み時間の区別がなくなりダラダラ仕事をしてしまうことがあるかもしれません。また、以前ならば外に出てストレス発散をしていたのになにもできず、家で無為に時間を過ごしているかもしれません。人はこのように単調で活動性が低い状態が続くと、イライラや意欲低下など不調をきたしやすくなりがちです。時間にメリハリをつけて、活動する時間とくつろぐ時間との区別をしっかりつけるのが大切だと思います。メリハリというと、なにか新しいことに挑戦することが思い浮かぶと思います。それだけではなく、今まで何気なくやっていたことでも見方や意識を変えて活動していると実感すること、また反対にくつろいでいると実感してもらうことでも良いと思います。


  


(2)運動、食事、睡眠に気を遣う


 月並みですが、体を動かし、1日3食しっかり食べ、夜ぐっすり休むことが重要です。しかも、これらは互いに作用しているため、3つ全てに気を配る必要があります。例えば、運動不足や栄養不足だと睡眠の質に影響してくるし、睡眠不足は運動する意欲の低下につながるなどです。


 体を動かすのはまずは自分ができるところから、ストレッチ体操、ジョギング、散歩、水泳、ヨガなど何でも良いです。特に家で、パソコンやテレビ、スマートフォンの画面にくぎづけになっている方には30分に一回程度は首や肩を回す、背伸びをする、遠くをみるなどはぜひ行って頂きたいです。


 食事はまず1日3食を心がけてください。よく朝食を抜く方がいらっしゃいますが、そうするとその後の活動に影響をきたすので、ぜひとってほしいと思います。時間がない方や一人暮らしの方にはバナナやミルクなど調理しなくても手軽に食べられるものも取り入れてはいかがでしょうか?


 睡眠は、寝る時間よりも起きる時間を毎日一定にすることから始めてみてください。だからといって、夜ふかしをして良いというわけではなく、寝る前はテレビ、パソコン、スマートフォンの画面を見ずに、ゆっくりリラックスするなど早めに寝る準備をして、眠たくなったらその時間にベッドに入るというのを心がけてほしいと思います。


 


(3)できることに注力する


 世の中状況が変わると、今まで当たり前にできていたことができなくなったり、その逆だったりと変化が出てきます。自分の置かれた環境で何ができるかを立ち止まって客観的に見直し、できることにエネルギーを注ぐことが大切です。これに関連し、何か実現したいことがある場合、①自らの力で変えられる部分、②他者に理解を求めることで変わる部分、③運やタイミングなど自分の力の及ばない部分の3つがあることを理解し、③の自分の力ではどうしようもないことに期待も悲観もせず、特に不安や恐れなど否定的な感情を抱かず、淡々と①および②に勤しむが大切だと思います。①と②の割合は実現したいことによって様々でしょうが、一つ覚えておいてほしいことは②の「他者」の割合が多い場合、他者の中にも多少なりとも③の「運やタイミング」が含まれるので、可能ならば万が一に備えた対応はとっておいた方が無難ですし、過度に期待しないことも大切だと思います。


 


 つらつら述べてまいりましたが、なかなか実行できないのが人の常。わかってはいるけど、思い通りにいかず、気づいたら、毎日「運やタイミング」を過度に期待し、神頼みしても変わらない現状に対し、一生懸命神頼みをしているのが現実です。このような私ですが今後ともよろしくお願いします。


 


プロフィール 白井 隆光(しらい たかみつ) 


日本で医学部医学科卒業後、2年間臨床初期研修修了。
以降、大学病院、一般市中病院等で精神科を中心に臨床診療に従事して
いる中、2020年3月からシンガポール日本人会クリニックにて診療を開始。

ドクターからの手紙 コロナ禍での過ごし方(11月号 2020年)