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ドクターからの手紙 「今日から使える心理学講座①」(5月号 2023年)

28 Apr 2023

 


心理学を使ってみよう!!子育てや同僚対応の手助けに! 


 


期待して信じて褒めて伸ばす!


ピグマリオン効果 


 


 他者からの期待を受けることで学習成績が向上したり、仕事での成果が上がったりする心理効果のことです。ピグマリオンという名称は、ギリシャ神話に登場する彫刻家ピグマリオンが自分が彫った女性の彫像に恋をし、その願いに応えたアプロディテ神の力で人間化したという伝説に由来します。教師期待効果、ローゼンタール効果とも呼ばれ、1963年にアメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールとフォードが行った実験で確認されました。1963年に彼らは個体差のないネズミを賢いネズミとのろまなネズミと無作為に分けて、そのように学生に伝えてネズミの迷路実験を行いました。賢いネズミといわれたほうが結果もよく丁寧に扱われたことから、教師と学生の間にも同様の効果があるのではないかと1964年にサンフランシスコの小学校で教師を対象に実験を行いました。学級担任には実験とは知らせず、成績が向上する生徒を割り出すため、ハーバード式突発性学習能力予測テストを行うと伝えて生徒たちにテストを受けさせました。実際にはテストには何の意味もなく、テスト後に無作為に選んだ生徒の名簿を学級担任に「今後数か月間に成績が伸びる優秀な子どもたち」と伝え渡したところ、学級担任は、その名簿に載った無作為に選ばれた子ども達の成績が向上すると思い込み、無意識に期待を持ちつつ授業を続けました。その結果、その子ども達の成績が向上したのです。この2つの実験から「人間は相手の期待に無意識に応えようとする結果、成績や結果の向上が見られる」というピグマリオン効果が確認されました。期待して、信じて、褒めて伸ばすのは効果的ということになります。ただし、高すぎる期待は重圧になることもあるので、その人の能力に合わせた期待を持つことを推奨します。


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他人と比較しないこと!


ゴーレム効果


 


 ピグマリオン効果と反対に、他者からの期待が低かったり関心を持たれないことで、学業成績やパフォーマンスが著しく低下する心理効果のことです。ピグマリオン効果を提唱したローゼンタールは、期待と成果に因果関係があるなら、その逆も起こるのではないかと考え、教師と生徒に対して実験を行いました。すると予想通り、ピグマリオン効果とは逆に、教師からの期待度が低い生徒は成績が低下したのです。ゴーレム効果には絶対的ゴーレム効果と相対的ゴーレム効果があり、前者は個人的に効果を受けることをいい、後者はネガティブな評価をされている集団に属すると優秀な個人でもパフォーマンスが下がるという集団が効果の影響を受けることをさします。後者は組織の生産性低下につながるリスクがあります。ゴーレム効果を受けないようにするためには、他人と比較しないこと、スモールステップによる成功体験の積み重ねを意識することを推奨します。組織内での評価は減点式よりも加点式にし、無理のない目標設定を意識しましょう。


 


ポジティブなラベル貼りで短所の克服を!


ラベリング効果


 


 1960年代にハワード・S・ベッカーにより提唱された社会心理学のラベリング理論から始まったのがラベリング効果です。相手に「君は○○だ。」というラベルを貼ることで、相手がその通りになる効果です。明確な根拠もなく、先入観や固定観念、思い込みだけで決めつけてラベルを貼りますが、ラベルを貼られた相手は「自分は○○だ。」と思い込み、実際にその通りになってしまいます。身近な例では、A型は几帳面で、O型はおおらかだというのもラベリングのひとつです。男の子なんだから泣くなとか、女の子なんだから大人しくしなさいとかも性差によるラベリングです。ちょっと素行に問題のある程度の少年を「彼は非行少年だから。」とラベリングすることで、実際に非行少年になってしまうこともあります。ラベリング効果は使い方次第でメリットにもデメリットにもなります。ラベリング効果を使う場合は、相手の性格や容姿に注目するのではなく、相手の行動に注目したラベリングを心がけましょう。例えば、「君は仕事が早いね。」とか、「あなたは算数が得意だね。」とか、なってほしいイメージをもってラベリングすることで相手の成長を期待できます。逆に、子どもに「君は我慢ができない子だね。」と言い続けることで、実際に我慢のできない子になってしまうことがあります。ネガティブなラベル貼りには気を付けましょう。また、自分にラベリングすることも可能です。自分自身にネガティブなラベリングをしている方は少なくありません。「自分は母親失格だ。」とか「自分は実力がない。」とか「周りに迷惑をかけてばかりいる人間だ。」とか…。ネガティブなラベリングをすると本当にそうなってしまいます。ポジティブなラベリングを心がけてみましょう。「自分はできる人間だ。」「大丈夫。」というポジティブなラベルに貼りかえることによって、短所を克服してみましょう。


 


 まだまだ使える心理学効果はたくさんあります。今日から使える心理学講座②を乞うご期待!


文責:毛利由佳


画像:いらすとや


 


プロフィール:毛利由佳(もうりゆか)


担当診療科:総合診療科・心療内科


日本医師会認定産業医、日本外科学会元専門医、日本産業衛生学会会員、日本プライマリケア連合学会会員、日本精神科学会会員、日本心療内科学会会員、日本ライフスタイル学会会員、Physiological First Aid ファシリテーター、認知症キャラバンメイト、チャイルドコーチング、チャイルドカウンセラー、家族療法カウンセラー


2022年1月よりシンガポール日本人会クリニック医師として勤務

ドクターからの手紙  「今日から使える心理学講座①」(5月号 2023年)