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ドクターからの手紙 通勤時間は運動時間!?(3月号 2021年)

25 Mar 2021

医師、鍼灸師 日暮浩実


 


いくら健康のためとはいえ、わざわざ時間をとって運動を続けていくのは簡単ではありません。


 自分を振り返ってみますと、40代半ばまでは、朝方や夕方帰宅後にそれなりに運動する気力と体力があったのに、今では、とてもそんな余裕はありません。そんな中でもやはり、健康のために何か継続して運動が出来ないかということで思いついたのが、通勤の利用です。オフィスに頻回に行かなくてはならない方にとっては使えるタイミングかもしれません。


 私は徒歩通勤を始めてそろそろ1年になります。片道30分くらいです。最初は、ワイシャツに革靴という通常の服装で歩いていましたが、汗ばむうえ、靴もすり減り、足底も痛くなるので、程なく、ランニングシャツとジョギングシューズに変えました。最初はこうした服装は通勤には適切でない気がして気が引けたのですが、常夏のシンガポール、後できちんと着替えさせすれば、むしろ、その方が良いのでは?と考えなおしました。また、シンガポールの屋内は冷房が効いていますので、到着後、15分もすれば汗は引くためシャワーをしなくても大丈夫でした。替えの服は他の荷物とともに背中に背負うことにしました。始めて1カ月ほど過ぎると、慣れてきたせいか、それぐらいの荷物はあまり重いとは感じなくなりました。慣れてくるとただ歩くのは負荷が軽いので、少しずつ軽い走りも入れたのですが、歩道はコンクリート、走るとなると、古傷のある膝やアキレス腱が心配でした。


 そこで始めたのが、重量のある荷物を背負っての歩行です。ヒントは、典型的なメタボリックシンドロームを克服し、80歳でエベレストに登頂したプロスキーヤーの三浦雄一郎さんが、脚力を鍛えるために、重りを入れた荷物を背負って歩いていたというお話を聞いたことでした。


 徒歩通勤開始2カ月後、20キロから始めました。それなりに重かったのですが、慣れるものです。段階的に増やして今は30キロになっています。ただ、重量が増えると首に負担がかかることが分かったので週6日はやめて、荷物を背負うのは週3〜4回にして、週2〜3回は、負荷を思い切り軽くして、軽いジョギングにしました。すると、それらの日はいつもの負荷がなくなるので、足が軽く感じられることに気が付きました。さらに、程よい休みになって重い荷物による前日や前々日の疲れをとることに役立ちました。ジョギングしても膝やアキレス腱を痛めなかったのは、しばらくの間、重量のある荷物を背負ったことで下肢の関節回りの筋力が以前より増して関節が安定したからかもしれません。時間に余裕がある時は、回り道をしたり、歩道橋を渡ったりと、負荷を加えてみたりもしました。


 ただ、調子に乗って負荷をかけすぎたのでしょう、古傷のアキレス腱が痛み出したことがありました。その時は、すぐに負荷を軽くして、ゆっくり歩きにしました。対処は早い方が怪我の治りも早いです。以前、アキレス腱に痛みを感じながら運動をつづけたため、痛みが1年以上治らなかったことがありましたので、もう無理はしません。また、帰りは、バスに乗ることもあります。入れ込みすぎず、たまには休みを入れることも大切かなと思っています。


 そして、どうやらこうやら1年、続けてきました。続けられたのは、そもそも、歩行ですから、難しい技術が要らないこと、お金がかからないこと、競う相手がいないので、自分のペースでやれること、さらに、歩行速度や、歩行の仕方(少し大股、膝を少し上げる、わずかに踵を上げるなど)、負荷の重さ、歩道橋の利用など、単純であっても工夫ができ、進歩を感じられたためかなと思っています。単純なのですが楽しさを感じます。


 また、毎朝、同じような時間に歩いていますので、同じように毎朝ウォーキングをしている方々にお会いします。” Good Morning!” だけですが、声を掛け合ってすれ違っていきます。ちょっとしたことですが励みになります。


 登山用のリュックとランニングシャツといういで立ちから登山家と思われたのか、近所の西洋人の子供に“Have you ever climbed Mount Everest?” と聞かれました。“No, not yet, maybe in the future” などと答えておきましたが…いつか本当に途中まででも登ってみるかな…。!?


 


日暮 浩実 (ひぐらし ひろみ)
千葉大学医学部・同大学院修了(呼吸器内科学)医師、医学博士
Singapore College of Traditional Chinese Medicine卒、
シンガポール保健省認定鍼灸師、日本内科学会総合内科専門医、認定内科医、日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医、
日本医師会認定産業医、日本結核病学会 結核・抗酸菌症認定医、
International Society of Travel Medicine Certificate in Travel Health 所持、Singapore National Skin Center Alumnus

ドクターからの手紙 通勤時間は運動時間!?(3月号 2021年)