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ドクターからの手紙 「飛行機で耳が痛い?!」(7月号 2024年)

24 Jun 2024

 


航空性中耳炎とは


 新型コロナウイルス(COVID-19)感染症による規制が緩み、シンガポールに在住または赴任されている方々は特に、飛行機に乗る機会が多いと思われます。飛行機の着陸や離陸の際の急激な気圧の変化に伴い、鼓膜の内側の中耳と鼓膜の外側の気圧の差によって中耳に圧がかかることで、主に航空性中耳炎(こうくうせいちゅうじえん)と呼ばれる耳の病気が引き起こされます。両鼻の奥にある上咽頭と中耳は耳管と呼ばれる管で結ばれており、通常は耳管が閉じて中耳と咽頭は開通していません。あくびや物を飲み込む際に耳管が開きます。飛行機だけでなく、ダイビングやエレベーターなどの様々な要因によって鼓膜の内側の中耳と外圧の間に気圧差が生じた場合でも、耳管が一時的に開通した場合は、中耳への圧がかかりません。しかし、耳管が開通せずに耳管を介した圧調節が十分に機能しない場合には中耳に圧がかかり、航空性中耳炎の状態となります。耳管の開口部が両鼻の奥にあるため、感冒(風邪)後や副鼻腔炎、鼻炎の状態で飛行機での気圧変化が生じた場合には、航空性中耳炎の発症リスクが高くなります。まれに、鼻の奥の上咽頭に腫瘍などの病変がある場合にも、気圧変化が正常に機能せず航空性中耳炎を発症することがあります。


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症状


 飛行機の着陸や離陸時に、耳に水が入ったようなこもった感覚や耳がふさがった感覚が生じます。中耳に圧がかかり、鼓膜が引っ張られるため、耳の痛みを感じることもあります。圧変化が生じていない状態でも、程度によっては難聴、耳鳴り、めまいを感じることがあります。一般的には、飛行機の着陸時に症状がより生じやすいとされています。


 


検査


 鼓膜の状態や鼻腔の状態を観察し、医師の判断に基づいて聴力検査やティンパノメトリー(中耳圧検査)、喉頭ファイバースコープなどを使用して上咽頭を観察することがあります。


 


治療 


 航空性中耳炎に罹患した場合、鼓膜の状態に応じて滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)や急性中耳炎の治療が行われます。また、鼻内、耳内、上咽頭の状態に応じて、去痰薬、アレルギー治療薬、抗菌薬などの内服が行われる場合もあります。症状が重篤な場合は、滲出性中耳炎の治療に準じて鼓膜切開や鼓膜チューブ留置術が最終的な選択肢として検討されることもあります。


 


予防


 航空性中耳炎の予防について以下の点が重要です。


①鼻の詰まりがある場合には、飛行機に搭乗する前にアドレナリンを含む点鼻薬を使用することで航空性中耳炎を予防できる場合があります。当院でも処方が可能です。


 


②アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、感冒症状がある場合には、それらの治療をしっかり行ってから飛行機に乗ることをお勧めします。


 


③耳が少し痛くなった場合、耳抜きにより中耳内の圧が調整できる場合があります。飴をなめる、ガムを噛む、頻回にあくびをするなど も有効です。お子さんの場合はアメをなめさせたり、飲み物を少しずつ飲ませたりする方法もよいでしょう。


 


 耳抜き法 バルサルバ法


 1. 口から息を吸い、吸った空気が口から漏れないように口を閉じます。


 2. 空気が漏れないように両鼻を指で摘み、鼻をかむように耳の方へ空気を送ります。


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④気圧変化調節機能がついた耳栓をすることも効果的です。離陸や着陸前から装着し、鼓膜への直接的な気圧変化を軽減することで鼓膜や耳の痛み、不快感を効果的に軽減してくれます。当院でも気圧変化調節機能がついた耳栓の購入が可能です。


文責・画像:仲山佑果


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ドクターからの手紙  「飛行機で耳が痛い?!」(7月号 2024年)