aboutus-banner

ドクターからの手紙 血液検査で胃がんを早期発見?!(2月号 2023年)

31 Jan 2023

 


胃がんとは


 胃は、食道から送り込まれた食物を消化して十二指腸や小腸へと送る臓器です。
胃がんは、胃の粘膜上皮に発生する悪性腫瘍で、内側の粘膜から徐々に粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)へと外側に向かって広がり、更に進行すると周囲のリンパ節や臓器へも広がっていきます。


d1.jpeg (62 KB)


なぜ胃がんを早期発見する ことが重要か?


 胃がんはかつて日本人のがんによる死亡数の第1位でしたが、最近は診断法と治療法の進歩に伴い、男性では肺がんに続き第2位、女性は第5位となっています。(2020年厚生労働省 人口動態統計)
 世界的にみると、2020年にアジア圏内だけで819,944人の新たな胃がん患者が発生し、胃がんによる死亡者数は575,206人であったと報告されています。シンガポールでは胃がんの約60%が進行してから発見されています。
 胃がんは、進行度が低いほど予後が良好で、早期発見できれば、治療、完治できるがんです。初期に自覚症状を伴わないことが多いため、早期がんの多くはがん検診によって見つかっています。日本では、厚生労働省が、50歳以上の方を対象に、胃がん検診として胃部X線検査(バリウム検査)、もしくは上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を2年に1回受けることを推奨してします。


 今回、上記に加えて、胃がん早期発見のためのがん検診のひとつの補助検査としてシンガポールで開発されたGASTROClear™をご紹介します。


d2.jpeg (48 KB)


GASTROClear™とは


 シンガポールで様々な臨床試験を経て世界で初めて開発された、胃がん早期発見のための血液バイオマーカー検査です。ヒト血清中の胃腫瘍関連miRNAバイオマーカーを検出する血液検査で、上部消化管内視鏡検査と併用することで、胃がんの早期発見を目指す補助的な検査です。あくまでも、最も早期に胃がんを発見するには上部消化管内視鏡が最も感度、特異度の高い検査となりますが、さまざまな理由で上部消化管内視鏡へ抵抗のある方へ向けた検査、上部消化管内視鏡検査すべきハイリスク患者を特定するための補助的な検査としてGASTROClear™血液検査(12-miRNA panel)を使用することを提案しております。 
 この検査は、すべての癌の病期(Ⅰ〜Ⅳ期)、すべてのサブタイプ(腸型、びまん型、混合型:Lauren分類) 性別、年齢、民族を問わず、感度81〜82%、特異度88〜90%で胃がんを検出できるとされています。
 シンガポールでは、2020年頃よりシンガポール国立大学病院、TAN TOCK SENG病院で導入されておりますが、日本では現在は一般的な検査ではありません。


 


GASTROClear™検査の特徴


 次に、GASTROClear™検査のメリット、注意点を列挙します。


メリット


•絶食の必要がなく、血液検査のみで検査が可能


•上部消化管内視鏡に比べると患者さんの負担が少なく、検査時間が短 時間、低コストで検査が可能


•上部消化管内視鏡検査を受けることに抵抗があるが、胃がんのリスク 因子を有した方への一つの胃がん検査の選択肢となりうる


•胃の症状がある際、胃炎や腸上皮化生などの良性の疾患と胃がんを鑑 別する材料となる


 


注意点


•上部消化管検査より感度、特異度が劣る


•結果によって上部消化管内視鏡の併用が必要になる場合がある


•新しい検査であるため、結果の解釈が難しい、データが乏しい


 


検査をお勧めする方


 40歳以上の成人(男女問わず)


 胃の症状がある (みぞおちの痛み、不快感、胃もたれ、むかつき、膨満感)


 口臭が気になる、黒色便、急な体重減少、倦怠感、ふらつきが気になる方


 以下のリスク因子のある方


 ↓


●胃がんの家族歴 


●ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)感染歴


●胃ポリープ、胃のリンパ腫、胃潰瘍、慢性胃炎の既往歴


●多量の飲酒


●塩分の多い食事、野菜果物の少ない食事、揚げ物、燻製、加工食品を 多量に摂取


●喫煙


 


検査の進め方


d3.jpeg (179 KB)


まとめ


 2023年より当院でもこちらの検査が可能となります。外来で行うこと、健康診断時に選択することも可能です。気になることがありましたらお問い合わせください。


 


文責・画像:仲山佑果


d4.jpeg (104 KB)

ドクターからの手紙  血液検査で胃がんを早期発見?!(2月号 2023年)