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ドクターからの手紙 難聴とは(9月号 2022年)

01 Sep 2022

 難聴とは、音が耳に入ってから脳に伝わるまでのどこかの段階で障害が起こり、音が聞こえにくくなったり、うまく聞き取れない、まったく聞こえいなどの症状を指します。自覚症状としては、耳が詰まった感じがする、音が聞こえにくい、言葉が聞き取りにくい、耳鳴りがする、音が重なったように聞こえる、話の途中で聞き返すことが多くなった、テレビなどの音量設定が上がった、大きな音を聞くのがつらい、突然聞こえなくなったなどの変化を自覚します。お子さんの場合、大きな音に対して怖がらない、名前を呼んでも返事をしない、聞こえた言葉を真似しない、言葉の発達が遅いなどがきっかけで気が付かれることがあります。


難聴の種類 分類


 難聴は、聴力レベルの低下した状態を意味するだけであり、「難聴」という病気があるのではないため、どこの障害が聴力レベルの低下を引き起こしているか、原因を調べることが重要となります。


 耳の構造は、「外耳」(入り口から鼓膜までの部分)、「中耳」(鼓膜、耳小骨、鼓室と乳突蜂巣がある部分)、「内耳」(さらに奥の蝸牛と三半規管などがある部分)の3つに大きく分かれています。外耳と中耳は音を伝える役割をしており、内耳は音を感じて脳に伝える役割をしています。これらのどこか、あるいは大脳の聴覚中枢に障害が起こると、難聴を発症します。


 難聴は、伝音性難聴と感音性難聴の2つに大きく分けられます。


伝音性難聴は耳の中、鼓膜から中耳までの、音を感じ取り伝える部分つまり、外耳と中耳に障害がおきて発症する難聴です。


 一方、感音性難聴は、中耳のさらに奥にある内耳や聴神経、もしくは脳などの障害で難聴が発症するものです。


 上記の2つの症状を併発する「混合性難聴」もあります。


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難聴を引き起こす病気


 難聴の原因は生まれつきの奇形・感染症・聞こえに関わる神経系の病気・ストレス・加齢・外傷など様々です。以下に、伝音難聴、感音難聴の原因となりうる疾患を一部あげてみました。難聴は、年齢、性別関係なく誰にでも起こる可能性があります。難聴の原因によっては、早期に治療を始めれば治るものもありますので、少しでも“聞こえ”が気になった際は病院を受診をしましょう。


伝音難聴:中耳炎や外耳炎、耳あかの詰まりなどによるもの、滲出性中耳炎、鼓膜穿孔(慢性中耳炎)、耳硬化症初期など


感音難聴:加齢性難聴、突発性難聴、ヘッドホンなどによる音響性難聴、騒音性難聴、急性低音障害型感音難聴、メニエール病、生まれつきの先天性難聴など


難聴の検査
 
 難聴の診断は、各種の聴覚検査、めまい検査、鼓膜の観察、場合によっては処置、画像検査などによって、障害されている場所や原因疾患を特定して行われます。


 


難聴の影響


 難聴になると様々な社会生活に支障をきたします。


 必要な音が聞こえないと、危険を察知する能力が低下し、家族や友人とのコミュニケーションがうまくいかなくなるため、自信がなくなり、時にはうつ状態に陥ることもあります。また、難聴自体が、認知症発症のリスクを上げることも知られています。


 言語獲得中のお子さんに関しては、音が聞こえにくくなったりうまく聞き取れなくなったりすると、日常生活に影響を与え、言葉の発達が遅れ、はっきりと言葉を発することが難しい場合もあります。


これらの影響を最小限にするため、早期の難聴診断、原因精査が重要となります。日本人会クリニックでも聴力の検査、処置が可能ですので気になる症状がありましたらご受診ください。


 


補聴器


 補聴器は、音を大きくすることにより、聴力を補助する装置です。難聴の原因によって、薬物療法・手術等で聴力が回復しない場合には、補聴器で聞こえを補うことで、補聴器なしでは聞こえなかった様々な音を聞くことが可能になります。ただし、補聴器をただ装用するだけでは、役に立つ補聴器にはなりません。装用開始前の適切な聴力の評価、補聴器装用時の指導と、試聴期間中のきめ細かい調整が必要です。補聴器は正しく使用しないと本来の効果を発揮できない器具です。高度の難聴を患っている方には、補聴器での補助では限界があり、手術で人工内耳を挿入する場合もあります。


 補聴器を使用する代表的な疾患としては、加齢性難聴があげられます。聴力は一般に30歳代を境に衰え始め、特に高音域から低下していきます。高い音が聞こえにくくなると、母音は聞き取れるものの子音が聞き取りづらくなり、言葉の聞き間違いが起こりやすくなってきます。こうした年齢による聴力の低下は、個人差がありますが、年を重ねるごとに少しずつ進んでいき、放置すると上記に示した難聴による日常生活への影響が出現する可能性があります。


 以上より、難聴による不便を感じる場合は早めに病院を受診し、適切な評価を受け、必要性があれば、適切な補聴器を装用することが大切です。


 当院でも、聴力検査、耳内の観察、必要性があれば、シンガポール現地の補聴器メーカーをご紹介いたします。お困りであればお気軽にご相談ください。


 


文責・画像:仲山佑果


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