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ドクターからの手紙 その気になる症状 甲状腺が原因かもしれません…(11月号 2022年)

31 Oct 2022

 


甲状腺


 甲状腺は首の前方、のどぼとけのすぐ下にある蝶が羽を広げたような形をした臓器で、甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンは、体の新陳代謝を促す大切な働きをしています。甲状腺ホルモンが多すぎたり少なすぎたりすると、体に様々な症状が現れます。代謝の調節以外にも、妊娠の成立や維持、胎児や子どもの心身の発育に重要な役割を担っ ています。 


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甲状腺ホルモン


 甲状腺ホルモンには、4つのヨウ素(ヨード)を持つサイロキシン(T4)と、3つのヨウ素を持つトリヨードサイロニン(T3)の2種類があります。甲状腺では主にT4が作られ、肝臓などでT4がT3に変換されるとホルモンとしての働きを発揮します。甲状腺ホルモンは、脳の下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって分泌が刺激されます。T3,T4 が多くなるとTSHの分泌は抑えられて、T3,T4の分泌を減らそうと調整します。逆にT3,T4が少なくなるとTSH の分泌が増え、T3,T4の分泌を増やそうと調整します。 


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甲状腺とヨウ素(ヨード)の関係


 甲状腺ホルモンの産生において主原料であるヨウ素は欠かせません。しかし、ヨウ素は摂取しすぎも不足しすぎも問題になります。成人が1日に必要なヨウ素の量は0.13㎎ですが、日本人は食事から平均で1〜3㎎摂取していると考えられています。通常、摂りすぎたヨウ素はおしっこと一緒に排泄されますので、必要以上に心配する必要はありません。ただし、サプリメントやヨウ素含有うがい薬などによる過剰摂取が長期に渡ると、甲状腺機能の低下、甲状腺腫大や甲状腺中毒症が起こるリスクがあります。日本と違って、ヨウ素不足が起きやすい地域(アメリカなど)のサプリメントにはヨウ素が含まれていることがありますので、シンガポールでサプリメントを購入する際には成分表示に目を配るようにしましょう。また、ヨウ素含有うがい薬の長期使用も過剰摂取のリスクになると考えられています。


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甲状腺に問題が起きた時に見られる症状


 以下の表に甲状腺に問題が起きた時に見られる症状についてまとめました。甲状腺ホルモンは多すぎると身体の代謝を異常亢進させ、その結果様々な症状を引き起こします。そのまま放置して重症化すると、最悪の場合、甲状腺クリーゼ(甲状腺中毒症に伴う甲状腺ホルモンの過剰作用により、多臓器不全となり生命の危機に陥っている状態)を引き起こし死に至ることもあります。一方、甲状腺ホルモンが足りな過ぎると身体の代謝が異常低下し、それによる様々な症状を引き起こします。この場合も放置して重症化すると粘液水腫性昏睡を引き起こし、命にかかわる状態となることがあります。甲状腺ホルモンは生命の維持に欠かせないホルモンです。以下のような症状が見られたら、早めに受診してください。甲状腺ホルモン値は採血で測定可能です。 


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甲状腺・副甲状腺疾患外来


 当院では、甲状腺専門病院(伊藤病院:表参道)での勤務経験のある医師(毛利)による甲状腺・副甲状腺疾患の診療を行っております。甲状腺疾患などでお悩みの方や、フォローアップが必要な方など、お気軽にご相談ください。 
担当医師(毛利)による甲状腺の診察をご希望の場合は、先にご予約を頂いておりますので、ご希望の場合は当院受付までご連絡ください。 


文責・画像:毛利由佳


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