aboutus-banner

朝型生活のすすめ(3月号 2023年)

28 Feb 2023

朝型生活のすすめ





臨床心理士・公認心理師 原田舞香


 


clinic-mar2023.jpg (55 KB)


 皆さん、朝は何時に起きてますか?そして夜寝る時間は何時頃でしょうか!?今回は個人的な経験に基づいた、「朝型生活のすすめ」をご紹介させて頂きます。


 私はこれまで、特に朝型生活をしていませんでした。20代の頃は、日付が変わる前に就寝することはありませんでした。子ども達の小さい頃は、やっとの思いで朝6時起床。夜は寝かしつけで9時頃寝落ちすることはありましたが、一旦起きだして、11時から深夜2時に夜食を食べつつ、自分の用事を片付けたりやりたいことをしたりする時間にして、再度寝る。といった生活でした。


 特にシンガポールでは、とりわけ小中学生のお子さんのお母さま方は、お弁当を作るために5時台に起床されている方は多いかと思います。体内時計を整えるには、起床後すぐ太陽光を浴びることが効果的[1]なのですが、シンガポールは日の出が7時頃と遅いので、残念ながらそれが叶いません。朝真っ暗な中、起きるのは大人であってもかなり辛いですよね。


 しかし、3年前の新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の拡大で、多くの皆さんと同様に、私も自分の時間が取れなくなりました。当時子ども達の学校にオンライン授業はなく、課題が配布される形式の「在宅学習」、つきっきりで課題に取り組まなければなりませんでした。子ども達が寝静まった後、もう一度起き出して自分のことをしようと思っても、頭がぼんやりしてはかどりません。それから、毎日45分間どうしても「マインドフルネス瞑想」のための時間を取りたいと思っていたのですが、ずっと出来ていませんでした。


 ということで私が始めたのは、4時台に起きる「朝型生活」です。ここで注意したいのは、早起きをするために、睡眠時間を削るのではないということです。早起きをするために、「早寝する」ということが、非常に大切です。必要な睡眠時間には個人差がありますが、日本人の場合は大体7時間くらいと言われています[2]。私の場合は、4時台に起きるために出来るだけ9時台に就寝する生活を心がけています。


 日本での例ではありますが、「朝型生活(朝活、とも言われているようです)」とインターネットで検索すると、たくさんの情報が上がってきます。朝の時間を仕事の時間にあてている方もおられますが、資格の勉強や読書、運動等、自分磨きや健康維持のための時間として使っている方も多いようです。特に小さいお子さんの子育て中でなかなか自分の時間が取れずお困りの方に、おすすめです。


 「朝型生活、いいなと思うんですけど、続けられなくて・・・」という方もおられると思います。続ける秘訣としては何か目標を持つこと、予定を入れること、誰かに朝型生活を始めたことを宣言してしまうこと、それから、時々予定通り早く起きられないことがあっても、そんな自分をゆるりと許して、諦めず続けてみることです。


 このように朝型生活が定着したことで、心身の健康を保つことが出来ていると喜んでいた私ですが、残念ながらこれは束の間の喜びだったようです。今度は子ども達の方が成長に伴い、就寝時間がどんどん遅くなってきています。このように朝型生活には、「家族や周囲の人達の生活リズムとどう折り合いをつけて行くか」という問題があります。皆さんの中には、お仕事やご家族のご都合で、朝型生活は難しい方もおられるかと思います。そのような場合に申し上げられることとして、眠い目をこすりながら無理をして寝る時間を遅らせ、何とか仕事や用事を片付けようとするよりは、そのまま寝てしまい、少しでも早起きすることをおすすめします。朝の方が頭がすっきりとした状態で、能率よく取り組める場合が多いです。


 皆さんの中には、もちろん体質的に夜型生活の方が良い方や、夜型生活で問題なくお過ごしの方もおられると思いますが、今回一つのご提案として、私の「朝型生活」についてご紹介させて頂きました。新年度からライフスタイルの変化する方が多いでしょうし、生活リズムを変えるのに丁度良いタイミングかと思います。


 患者様とのカウンセリングの中には、生活リズムの整わない方、なかなか早く眠れない、朝起きられない、体調がすぐれない方が多くおられます。うつ病をはじめとしたメンタルヘルス疾患で休職中の方も、社会復帰を目指されるとき、生活リズムを整えることの大切さについてよくお話しさせて頂きます。


 心療内科では、生活リズムがうまく取れない、眠れない、朝すっきり目が覚めない、といった睡眠の問題の相談にも乗っていますし、カウンセリングにお越しいただく中で、この問題について取り組んでいただくことも出来ます。お一人ではどうにもうまくいかないな、という時は、当院がその一助となることが出来ると思います、どうぞご相談ください。


文責:原田舞香


参考文献:


[1] 樋口重和「快眠と生活習慣」厚生労働省 eヘルスネット


https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-004.html(閲覧日:2023年1月16日)



[2] 阿部正浩(2010) 「睡眠と労働時間」『内閣府経済社会総合研究所 平成 22年度ワー ク・ライフ・バランス社会の実現と生産性の関係に関する研究報告書』, pp.203 - 217.


画像:無料サイト「写真AC」


 


プロフィール:原田舞香(はらだ まいか)


臨床心理士(日本臨床心理士資格認定協会)・公認心理師


大学心理学専攻卒業後、民間企業勤務を経て大学院修了。大学研究所、心療内科クリニック、リワーク支援機関、勤労者のメンタルへルス相談・研修講師を務める。2009年〜2015年中国在住。子育て支援、中医クリニック等の臨床経験を経て、2018年〜シンガポール日本人会クリニックに勤務(非常勤)。認知行動療法、マインドフルネスを活用したカウンセリング、在星邦人のメンタルヘルス支援にまつわる調査研究に従事。


 


 

朝型生活のすすめ(3月号 2023年)