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言葉の発達について(1月号 2023年)

29 Dec 2022

言葉の発達について


言語聴覚士・公認心理士 鈴木利佳子


 日本人会クリニックの言語相談の中で、お子様の言葉の相談は多く寄せられています。


 2歳から5歳までのお子さんの言葉の発達は個人差も大きく、「言葉が出ない」から「話すけど内容がわかりにくい」という心配、また、たくさん喋るけど言葉がはっきりしない、という発音の心配や「話すけど言葉がつっかえる」流暢性の心配など様々な心配が聞かれます。小学生以上のお子さんの言葉の心配は学習の心配として表面化し相談に来られる方もいます。


 今回はこれらのお子さんの言葉の心配の中でも、多くの相談がある2歳から6歳までの小さなお子様の言葉の発達についての心配事についてお話しします。


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 言葉の発達は基礎的な能力の発達がベースになります。それに加えどのような言葉を使う環境にいるか、どんな言葉をよく耳にするかにより、本人の言葉の力である語彙力、文法力、会話力、説明力が育ってきます。シンガポールに住む日本人のお子様は言語環境が日本と異なることが言葉の発達に影響することもあります。


 標準的な言葉の発達年齢は下記のように言われています。


• ヶ月頃:指差しと声で何かを伝えるようになります。


• 歳頃:パパ、ママ、マンマ、ブーブなど言葉らしい音を発します。


• 1歳半頃:多くの子が身近な単語を理解し、言葉を話すようになります。


• 2歳頃:知っている言葉の数が100語を超えると2語文を話すようになり、ブーブーいた、など表現するようになります。「これ?」「なに?」といろんなことに興味をもって質問するようになり、言葉が爆発的に増えます。2歳後半には300語くらいの言葉を持ち動詞を使い「りんご食べる」など2語文で話すようになります。


•3歳頃:1,000語くらいの言葉を持ち「パパ カイシャ いったよ」など3語文で話すようになります。「うさたん たべたよ にんじん おいしいの。うさたん ぴょんぴょん。」など目の前のことを簡単な文章で伝えることができるようになります


•4歳頃:1,500語くらいの言葉を持ち助詞を使って文章を組み立てるようになります「うさちゃんがね、にんじんたべたんだよ。うさちゃんはね、にんじん好きなんだよ。わたしはにんじん嫌い。うさちゃんははしるのはやいんだよ。」誰が何をどうしている、という説明ができるようになります。


•5歳頃:2,000語くらい言葉を持ち助詞を使い会話が成立するようになります。時系列でお話しできるようになり過去の出来事や目の前にないことを親しい人にお話しできるようになります。「今日ね、幼稚園でおやつ食べたんだよ。◯先生が持ってきてくれたんだよ、お芋のお菓子なんだって。おいしかった。」


•6歳以上:3,000語以上の日常で使われる言葉を知っていて、目の前にないことを、知らない人にも説明できるようになります。相手がわかるように言葉を使い分けて、説明できるようになります。読み書きの基礎ができる時期で、ひらがなを読めるようになります。7歳には日本語の文法の基礎が身についています。


 個人差が大きい言葉の発達ですが、標準的な言葉の発達から1〜2年遅れている場合「言語発達の遅れ」と言います。言葉の遅れがあると、相手の言っていることが理解しにくかったり、自分の言いたいことがうまく表現できずに、「口より先に手が出る」「すぐ怒る」「お友達とうまく遊べない」など行動の問題として現れたりすることもあります。5歳までは脳神経の発達の個人差もあり、早期の言葉の訓練により通常発達に追いつく子も多くいます。


 言葉の遅れには様々な原因があり、聴覚や発声発語器官の問題によるもの、知的発達や発達障害に伴うもの、脳の言語中枢の発達に不具合があるもの、環境によるものなど様々です。言語聴覚士は言葉の遅れ具合とその原因を探り、その子に合った関わりを見つけて言葉の発達を促す専門家です。5歳を超えての言葉の発達の遅れは言語発達障害として支援が必要になり、小学校以降学習の困難に結びつくことも多くあり、適切な支援が必要となります。最近の研究では発語や2語文の発話が遅かった2〜3歳児の20%、3歳児健診で言葉の遅れを指摘されたお子さんの40%は言語発達障害を持っていることが明らかになっています。早期介入、早期支援の必要がその後の学習にも良い影響を持つと言われています。言葉の心配がある場合は、どうぞお気軽にクリニックにご相談ください。


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プロフィール:鈴木利佳子(すずき りかこ)


2003年言語聴覚士、2021年公認心理師 国家資格取得 


言語聴覚士として日本の病院で約18年間勤務、2021年来星。


趣味はダイビング、腹話術、旅行、観劇、音楽鑑賞。


専門資格:日本言語聴覚士協会認定言語聴覚士(言語発達障害領域、失語・高次脳機能障害領域)、日本摂食嚥下機能障害学会 専門療法士、日本臨床栄養代謝学会のNST専門療法士、認知症ケア専門士

言葉の発達について(1月号 2023年)