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クリニックからの手紙 「怒りとの付き合い方」(8月号 2024年)

01 Aug 2024

怒りとの付き合い方





臨床心理士・公認心理師 坂牧 円春


 


 4月号のコラムで感情のお話を書きましたが、今回は怒りという感情について、もう少し書いてみようと思います。


怒り


 怒りとは、「急激で衝動的な反応であり、比較的、短い時間しか続かない感情」と考えられています。他の人や出来事からの侵害や攻撃から守ろうとする反応でもあり、また、自分のその感情状態を相手に知らせる反応でもあります。


 相手からの侵害や攻撃から身を守るというのは、生き物が生存していくためには必要な反応です。ただし、その反応の仕方は、社会の中で他者と交流して生きていく人間にとっては程よく調整する必要があるでしょう。


 また、侵害や攻撃というのは、自分の考えを尊重してもらえない、自分の意見が批判される、自分の存在を認めてもらえない、自尊心を傷つけられるということも含まれることもあります。このような思いをすると、私たちは当然傷ついたり、悲しくなったりします。つまり、怒りが起こる時には、心の奥に傷つきや悲しみもあるかもしれないということが考えられます。


怒るという行動


 怒るという行動は、とても目立ち、時には周りの人を驚かせたり、傷つけたり、かえって自分が後で嫌な思いをすることもあります。しかし、単に「怒っちゃいけない!」「イライラしちゃいけない!」と抑えこむのではなく、怒りの奥にある自分の気持ちに目を向けることが大切だと思います。


 自分の奥にある気持ちに気づくと、少し冷静になれたり、今すべき行動が見えたりします。そして、自分の小さな怒りの火花を大きな炎にさせているのは自分かもしれないという視点もあるといいでしょう。怒りを感じた事柄や相手に対して、よりネガティブに考えて自分で自分の怒りを大きくしてしまうこともあります。その事柄や相手にこだわって考え続けてしまうと、どんどん怒りの炎が大きくなり、自分でその火を消せなくなってしまいます。


 一旦、距離をとって落ち着いて思い返してみると、そんなにこだわらなくてもいいこともあるかもしれません。


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怒りとの付き合い方


 怒りとうまく付き合っていくためには、まずは、自分が怒りを感じていることに気づくことから始めましょう。


自分がイライラしている時


体の反応から、自分のイライラに気づく


(例:肩に力が入ってる、眉間にしわが寄っている、身体が熱い、鼓動が速い、声が大きい)


イライラする心の奥にはどんな気持ちがあるのか考えてみる


数秒でもリラックスや肩の力が抜けるようなことをしてみる


<リラックスの仕方のヒント〉


●怒りは10秒以上は続かない→「クールダウン」:深呼吸、目を閉じる、トイレなど別室へ行く、ストレッチ、温かい飲み物をゆっくり飲む


●気持ちの切り替え→「気晴らし」:場面を変える、散歩に出てみる、好きな音楽を聴く、好きな動画を見る、お茶をしに行く


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子どもがイライラしているとき


自分の気持ちに気づかせる


 (例 「顔が怖くなっているよ」「声が大きくなっているよ」「イライ ラしているように見えるよ」「表情が険しいよ」と気づかせるようなことを伝えてみる)


思い当たる理由を一緒に探してみる


 (例 「負けて悔しかった?」「叱られて悲しくなっちゃった?」「あな  たの言い分を聞いてもらえなかったんだね」「お腹がすいたね」「暑くてつかれたよね」)


落ち着いた後に、そのような気持ちがわいてきた時にどうしたらい いかを一緒に考えてみる


 
(例 先生に話してみる、むしゃくしゃしたらクッションをパンチす る、
おやつを食べる、自分の部屋でひとりになる


 


 1人ではなかなか怒りのコントロールができない時は、カウンセリングを通してカウンセラーと一緒に考えていくことも一つの方法です。


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文責:坂牧円春、画像:いらすとや


 


プロフィール:坂牧円春(さかまき まどか)


臨床心理士・公認心理師


日本女子大学人間社会学部心理学科卒業、日本女子大学大学院人間社会研究科心理学専攻博士課程前期修了。


非常勤講師として専門学校や大学に勤務し、臨床心理士として精神科クリニック、幼児相談室、大学の学生相談室、保健センターでの乳幼児健診、心の健康電話相談などでの臨床経験を経て、2017年2月より日本人会クリニックに勤める。


好きなこと:料理、読書、旅行、シュノーケリング


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クリニックからの手紙  「怒りとの付き合い方」(8月号 2024年)