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自分の気持ちを上手に伝えるコミュニケーション(4月号 2023年)

31 Mar 2023

自分の気持ちを上手に伝えるコミュニケーション





臨床心理士・公認心理師 坂牧 円春


 


 みなさんは、自分の気持ちや思い、要求などを上手に他者に伝えられていますか?仕事や頼まれごとを断ることができなかったり、手伝ってほしいことをうまく頼めなかったりして、一人で抱えてしまいストレスを溜めてしまうことはないですか?また嬉しい気持ちや感謝の気持ちをあえて言葉で言わなくても伝わるだろうと思い込んでいて、実は相手に伝わっていなかったということはないでしょうか?


 


 私たちの人間関係のもち方は大きく3つに分けることできます。


 


①攻撃的(アグレッシブ)


 自分のことだけを考えて、相手のことを大切にしていないコミュニケーション。


特徴:一方的に主張する、支配的、他者を否定する、責任転嫁、強がり、相手に指示


子ども向けの言い方:いばりやさん


攻撃的画像.png (65 KB)


 


②非主張的(ノン・アサーティブ)


 自分よりも他者を優先にして自分を後回しにする


コミュニケーション。


特徴:黙る、服従的、自分を否定する、弁解がましい、引っ込み思案、相手任せ


子ども向けの言い方:おどおどさん


非主張的画像.png (69 KB)


③アサーティブ


 自分も他者もお互いを大切にする率直なコミュニケーション。


特徴:柔軟に対応する、歩み寄り、自分の責任で行動する、正直、自他協力


子ども向けの言い方:さわやかさん


アサーティブ画像.png (59 KB)


 普段、自分はどのようなコミュニケーションをとっているか思い返してみてください。常に自分を後回しにして、気持ちや思いをグッと我慢して非主張的なコミュニケーションをとっていると、人と付き合うことが面倒になったり、疲れたりしてしまったりし、人間関係を避けるようになることもあります。そのような人の場合、自分が素直に適切に自分を表現できていないことに気づかずに、人間関係とは疲れるものだということだけに焦点が当たっていることもあります。


 また、大人との関係であれば、問題なく上手に付き合えるのに、子どもに対してだけ攻撃的になってしまっている場合もあります。子どもとの関係では、主導権を親が持っていなければならない、親はこうあるべき、子どもはこうしなければならないという考えが強くあり、その通りにならない場合に、子どもを責めるようなコミュニケーションをとってしまっていることもあります。


 それから、職場で上司や同僚には非主張的だけれど、家庭では妻に対して攻撃的になる場合や、学校で友達には攻撃的だけれど家庭で親には非主張的になる場合など、状況や相手によってコミュニケーションのタイプが変わる場合もあります。


 その背景には、長い間に作られた行動パターンが習慣化されているということが考えられます。親や権力者には従わなければならないと思っていると、自分が子どもや地位のない立場にいる時には非主張的になり、自分が親や地位のある立場に立つと攻撃的になるということもあります。また、過去のある状況でやってきたコミュニケーションの仕方が身についていて、無意識に繰り返している場合もあります。


 自分のコミュニケーションのあり方を振り返って、“アサーティブ”なコミュニケーションが取れるように意識してみましょう。


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 そのためには、まず自分の気持ちを明確にすることが第一歩となります。


 「私は何を感じているのか?」「私はどうしたいのか?」「私は誰に何をしてほしいのか?」などと、「私は」と主語にして考えてみると、自分の内面に意識が向いて、気持ちや思いが明確になりやすいです。


 そして、自分を主語にして相手に伝えると、攻撃的にならずに自分の思いや気持ちを表現しやすくなります。


 たとえば、「うるさい」ではなく、「私は静かにしてほしいと思っている」、「部屋が汚い」ではなく「私は部屋が汚いと感じている。だから、片付けて欲しい・一緒に片付けよう」、「(夫に対して)今日も飲み会で夜遅いの?」ではなく「私は、あなたに早く帰ってきて欲しいと思っている」など、主語を私にして伝えると、表現しやすくなります。


 また、日頃から他人の期待に必ず応えなきゃいけない、誰からも好かれなきゃいけない、どんなことでもやるからには十分にやらなきゃいけないという思い込みがある場合は、非主張的になりやすいということが考えられます。反対に、相手が間違いをしたら非難するべきだ、相手が失敗をしたら頭にくるのは当然だという思い込みがある場合は、攻撃的になりやすいということが考えられます。


 自分にも知らず知らずのうちに、強い思い込みがあって、素直なコミュニケーションを妨げていることもあるかもしれません。


 コミュニケーションは練習していくことで上手にできるようになります。自分の気持ちを大事にしながら、相手に具体的に自分の思いを伝える練習をしてみると良いでしょう。


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文責:坂牧円春


画像:いらすとや


参考文献:


・図解 自分の気持ちをきちんと〈伝える〉技術 人間関係がラクになる自己カウンセリングのすすめ 平木典子


 


プロフィール:坂牧円春(さかまき まどか)


臨床心理士・公認心理師


日本女子大学人間社会学部心理学科卒業、日本女子大学大学院人間社会研究科心理学専攻博士課程前期修了。


非常勤講師として専門学校や大学に勤務し、臨床心理士として精神科クリニック、幼児相談室、大学の学生相談室、保健センターでの乳幼児健診、心の健康電話相談などでの臨床経験を経て、2017年2月より日本人会クリニックに勤める。


好きなこと;料理、読書、旅行、シュノーケリング


 

自分の気持ちを上手に伝えるコミュニケーション(4月号 2023年)