史蹟史料部 ニュースレター 桜の花をモチースにした木製パネル（3月号2023年）

桜の花をモチーフにした木製パネル

史蹟史料部

　昨年11月下旬、日本人会に一通のメールをいただきました。それはブギスにあるスタンフォードプライマリースクールの先生からのメールで以下の主旨でいただきました。

　「こんにちは。私たちの学校には、桜の花をモチーフにした、長い歴史のある木製パネルがあります。私たちの学校は、1951年に現在のスタンフォードアートセンターである、ウォータールー ストリート 155番地に創設されました。National Arts Council Singaporeのウェブサイトを確認すると、この建物は1921年に日本人クラブによって日本の小学校として建設されました。

　桜の花をモチーフにしたパネルの所有者を探すことはできませんでしたが、これらのパネルは1951年より前に存在していました。

　現在ヴィクトリアレーンにある私たちの学校は2022年末に移転するため、シンガポール日本人会に問い合わせをさせていただきました。日本人会で、これらの木製パネルを受け継ぐことを検討していただけませんか。」（史蹟史料部で和訳を致しました。）

　1915年に設立されたThe Japan Club新嘉坡日本人会（新嘉坡日本人倶楽部）は、現在のThe Japanese Association Singapore日本人会が設立された当初の名称です。

　シンガポールで日本人小学校が始まったのは1912年で、場所はミドルロードの東洋ホテル内でした。1915年に日本人会が設立された当時は、事務所内に日本人小学校が置かれていました。在外指定学校として認可されたのは1918年のことで、日本人会は1918年に小学校敷地としてウォータールー ストリート155番地に18,000平方フィートの土地を購入しました。そして1921年に完成したのが、Japanese Elementary School（日本人小学校）でした。

　この建物は、現在もスタンフォードアートセンターとして使われています。日本人小学校の写真にあるアーチの入口は今でも存在し、当時の面影を残しています。

　史蹟史料部は、この歴史ある桜の花をモチーフにした木製パネルをぜひ日本人会で受け継ぎたく、すでに学校としての運営を終えたヴィクトリアレーンの旧スタンフォードプライマリースクールに赴きました。

　ブギス駅近くにある鮮やかなイエローとブルーの建物、シンガポールにお住まいの方はよく目にされているのではないでしょうか。

　すでに校舎の移転工事が始まっており、壁に埋め込まれていた木製パネルを取り外してからの引取りであったため、学校内でどのように飾られていたかを見ることはできませんでしたが、長さ275㎝のパネルを2枚、長さ138㎝のパネルを2枚譲り受けました。

　確かに桜のモチーフの彫刻がなされています。日本人の手により作製されたパネルであるという記録はなく、どことなくプラナカンのタイルにも共通したデザインのようにも見受けられます。

　ともあれ、この建物がスタンフォードプライマリースクールになる前から、この桜のモチーフの木製パネルが存在していたことは確かであり、日本人小学校に飾られていたものと推察されます。

1945年の終戦後、いったんシンガポールを引き上げた邦人が徐々に復帰したのは1954年頃のことでした。

　今から70余年前に日本人社会から離れ、スタンフォードプライマリースクールに飾られていた木製パネルを、再び日本人会で受け継ぐことができたことを光栄に思います。
高温多湿のシンガポールで、現在のようなエアコンがない環境で数十年間保管されてきたものですので、木材の傷みは見受けられますが、補修と塗装をして遺すことができる状態です。学校移転に際し、これらの木製パネルを廃棄せず、変遷を調べて日本人会にご連絡をくださったスタンフォードプライマリースクールの先生方に感謝します。

　今後これらの木製パネルをどう保存していくか、そしてどのような形で会員の皆様にもお披露目ができるか、史蹟史料部で考えていきたいと思います。ニュースレターの続報をお楽しみに。

https://www.jas.org.sg/news/the_japanese_cemetery_park_newsletter

参考文献：

「シンガポール日本人社会百年史 – 星月夜の耀−」

シンガポール日本人会　2016年12月23日発行　

「戦前シンガポールの日本人社会‐写真と記録‐改訂版」

シンガポール日本人会　1998年6月27日発行

編集・画像：日本人会 史蹟史料部  両頭真衣