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ハローインタビュー シンガポール在住の日本人YouTuber Ghib Ojisan (ジブおじさん) (9月号 2021年)

31 Aug 2021

日本とシンガポールの懸け橋になっていきたい。それが目標です。


 


シンガポール在住の日本人YouTuberとしてご活躍中のGhib Ojisan(ジブおじさん)に、お話を伺いました。


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Ghib Ojisan(ジブおじさん)


聞き手 シンガポール日本人学校中学部教諭 山田祐史、柴引真奈


 


YouTubeを始めようと思ったきっかけについて教えてください。


 


Ghib Ojisan(以下、ジブおじ。敬称略) 2017年頃に、ギターで弾き語りをしながら旅をしていて、それを趣味でアップしていたのが最初ですね。当時、海外で旅をしながらジブリの弾き語りをしている人がいなかったので、一つの動画が急上昇になり、そこからどんどんのめりこんでいきました。企画を考えることや編集作業の楽しさなどもあり、YouTubeにハマっていきました。 


 


シンガポールに移住を決めた理由は何ですか?


 


ジブおじ 旅先で出会った、今の妻(当時の彼女)がシンガポールに住んでいてお互いの状況を踏まえると、僕がシンガポールに移住して共に生活をするのが良いと思ったので移住を決めました。シンガポールのインターナショナルの雰囲気やご飯も好きだったので住んでみたいなと思ったのもきっかけの一つです。その後に、仕事を見つけ結婚をしました。しかし、当時の仕事に対し「(今やりたいことは)これではないな」という思いがうまれ、YouTubeを本気でやりたいという思いを持ったため、自分の会社を設立し事業の一つとして、YouTube活動をしています。


 


シンガポールでYouTubeを発信したいと思った理由を教えてください。


 


ジブおじ 結婚を決め移住をしたのはもちろんですが、当時日本人で日本語を用いてシンガポールのことを発信する人がいなかったため、そこに面白さを感じて続けています。誰もが行く観光地だけでなく、(住んでいるからこそ分かる)シンガポールのコアな場所を発信していこうという思いも続けている理由の一つです。


 


そこからイーシュンの動画がうまれたのですね。 


 


ジブおじ そうですね。運よく地元の方に見てもらえて、そこから視聴者層がガラリと変わりました。今では大半がローカルの視聴者です。


 


YouTubeでのやりがいや大変なことはなんですか?


 


ジブおじ やはり面白い動画を作ってそれを見てもらえることがやりがいですね。再生数だけではなく、コメントやグッドボタンも励みになっています。逆に、それらがない場合は辛いですね。今まで自分が見ていたYouTuberさんの元気がなくなっていくのを見ると、熾烈な世界だというのを感じます。なので、視聴者さんが求めているものを企画して作り、それが数字に繋がらない時には、原因を考えて次に活かすということを常に行っています。YouTuberと聞くと「夢の職業」と思う方もいるかもしれませんが、実際はかなり泥臭い職業です。タイトルの付け方一つにも試行錯誤する毎日です。それが楽しい面でもあり、大変な面でもあります。


 


ぜひ見てほしいという動画はありますか?


 


ジブおじ 耳かきの動画ですね。チャイナタウンの少し怪しいビルに耳かきに行ったのですが、激安で英語が通じずに中国語だけでやり取りを行うお店でした。そういうディープな場所での体験がとても面白く、シンガポールのイメージとも違いますよね。長く住んでいると、慣れてしまいディープな場所に足が向かなくなりがちですが、勇気を出して行ってみるのがけっこう面白いと思います。ぜひこの動画を見てインスパイアされてほしいです。  


 


YouTube内で出演してくださっている方との繋がりはどこからですか?


 


ジブおじ 生配信をしている時に話しかけてくれ、繋がることが多いですね。偶然が繋がって主演してもらうことが多いです。人見知りなのであまりコラボは積極的に行わないのですが、なんだかんだ楽しかったりはします。


 


実際のところ、YouTubeで生計は立てていけるものなのですか?前職と比較して聞かせていただきたいです。


 


ジブおじ ありがたいことに、前職でいただいていた給料よりも今のほうが稼げています。再生回数や企業さんからのPR案件もそうですが、最近は企業さんのソーシャルメディアに出演するというのが増えています。この前はドンキさんのOPENイベントに出演しました。好きな企業さんと一緒に仕事ができるのはやりがいの一つです。


 


以前の仕事を辞めようと思ったきっかけは何ですか?


 


ジブおじ 以前は会社に勤めてデジタルマーケティングをやっていて、それはそれでもの凄くいい経験だったのですが、それよりも自分の事業を伸ばしていく方が楽しいと感じたんです。頑張ったら頑張った分だけ自分に返ってくる上、エキサイティングなことも多いですね。あとは、単純にシンガポールでは副業ができないので、それだったら「YouTubeを本気でやるために自分で会社を作ろう」と思った次第です。


 


以前の仕事と今の仕事の違いは何ですか?


 


ジブおじ 今の仕事は楽しいです。全てが自分事なので、やりがいもあります。会社勤めの頃は自分で仕事を選ぶのは難しかったのですが、今はやりたくない仕事は断れます。逆に、やりたい仕事だったらどんなに低い賃金で引き受けても、誰にも文句を言われません。会社員と違って安定した給料はないのですが、リターンが大きく、自由度も高いのがYouTuberの一番の魅力だと思います。


 


奥様との馴れ初めを聞かせてください。


 


ジブおじ 旅先のシンガポールで出会ったのがきっかけですね。当時、ギターで弾き語りをしながら世界中を旅していて、1年間で30カ国旅していました。様々な国で弾き語りをしていると「俺ん家こいよ」と話しかけてくれる人がいたり、台湾ではご飯をごちそうしてくれたりする人もいました。そんな生活の中、シンガポールでジブリを演奏しているときにジブリ好きの妻が話しかけてくれ、そこから今の関係に至ります。


 


YouTubeでも聞ける、あのジブリの演奏ですね。出会いの場所はどこですか?


 


ジブおじ チャイナタウンです。


国際結婚をして実際に感じているメリットは何ですか?


 


ジブおじ 日本の方と結婚したことがないので、(日本の方との結婚生活と)比較することはできないのですが、やはり義理の家族との関係の深さでしょうか。僕は義理の家族とは週に1回は必ず会っています。国が小さいので会いやすいというのがありますが、家族の繋がりが強いので、妻とだけ結婚するというよりは妻の家族全員と結婚をしたという距離感です。あとは、シンガポールでは義理の家族が子どもの面倒を見てくれたりもするみたいです。僕の場合、とても良い家族に恵まれたので、ラッキーだと思っています。


 


逆に、デメリットはありますか?


 


ジブおじ ある日のデートで僕と彼女は道に迷ってしまったのですが、その時に彼女のことを少しからかったんです。「ほら、方向音痴なんだから。」みたいに軽い感じで。すると、彼女がもの凄く怒っちゃったんです。後ほど考察すると、「女性だからといって下に見てほしくない。対等に扱ってほしい。」という想いだったんだと気付いたんです。対等に見てほしいという気持ちは、日本の女性よりも強く、日本の女性と異なる部分だと思います。デートでのこのような失敗をした経験がたくさんあります。その他に、義理の家族との時間が多く、必然的に自分の時間が減る、というのがあります。家族の時間と自分の時間のバランスを大事にしなければいけないですね。


 


シンガポールの魅力は何だと思いますか?


 


ジブおじ  いろいろありますが、良い意味でテキトーということですかね。近くのモールに行く格好ひとつにしても、タンクトップにサンダルというラフな格好で行けます。英語も完璧な文法でなくても聞いてくれますし、テキトーな文法でも通じます。あとは、人と人との距離が近いことですね。撮影の機材を見て「どこで買ったの?」と気軽に道端で話しかけられることがありましたが、話しかけやすい社会の雰囲気がシンガポールにはあります。


 


シンガポールのお薦めスポットを教えてください。


 


ジブおじ 個人的に面白かったのはエビ釣りです。他には、自転車でシンガポールを巡るのも楽しいですし、いつも行っているイーシュンとかドローカルな雰囲気でたまりません。


 


今の内にやっておきたいことは何かありますか?


 


ジブおじ また、コロナがあけたら飛び回る予定なので、今の内にシンガポールをもっと開拓したいなと思っています。今は海外に出られないので、チャンスだと思って、色々な体験やまだ行ったことのない所へ行ってみたいです。


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今までに挫折した経験はありますか?


 


ジブおじ 挫折だらけですね(笑)。イーシュンの動画でローカルの人に見られる前までは、再生数も影響力も無かったですし、それがずっと続いていたのでそれが一つの挫折です。どんなに頑張ってもなかなか報われない。他は、狙った企画、これはいけるだろうと思った企画を公開しても全然再生されないこと。それが企業さんのPR案件だった時が一番辛いですね。お金を貰っている以上、もの凄く責任を感じます。再生数を稼いで、企業さんの商品が売れるようにしないといけないので、気合を入れて動画を作るのですが、それでもごくたまに再生回数が少ない時があるのがもの凄く辛い。こんな感じで、日々、再生数や面白い動画を作るために自分と闘っています。


 


逆に今までの成功体験は何ですか?


 


ジブおじ 日本人YouTuberとしてまだまだですが、ある程度の知名度が上がったことが一番大きなことかと思います。今までこういう人っていなかったようなので、「シンガポール在住の日本人と言えば、ジブおじさんだよね。」と言われるようになったのは一つの成功体験かな、と思います。実際は、ここから墜落しないように必死でもがいていますが。(笑)


 


日本からシンガポールに来る人は、ジブおじさんの動画を見ている方が多いですね。


 


ジブおじ そうなんですね。ありがとうございます。


 


動画編集には、どれぐらいの時間をかけていますか?


 


ジブおじ 大体、僕の動画は1本が8分から15分ぐらいなので、編集時間は動画によって異なりますが、6時間から10時間ぐらいかかっています。結構ヘビーですね…。(笑)僕の場合、日本語訳もつけているので。最近は、ありがたいことに手伝ってくれる方がいて、外注することもあります。撮影が大体2〜3時間。編集が6〜10時間。丸1日かかっていますね(笑)。


 


私達が思っている以上の大変さがありますね…動画は週に何本出されていますか?


 


ジブおじ 2本〜3本出しています。


 


今、考えている企画は何かありますか?


 


ジブおじ ダーツが当たった所に行くみたいなものとか、僕は自転車が好きなので、自転車でシンガポールを1周するチャリ旅とかをしたいなと。その中で地元の方々との触れ合いとか、現地グルメをお見せできたらなと思います。あとは、コロナがあけて渡航制限が解かれたら、日本人が沢山観光に訪れると思うので、日本人に需要のある観光地での動画も撮っていきたいです。例えば「マリーナベイサンズでやるべきこと」とか。今は現地民がターゲットですが、日本人の方にも見て欲しいので、そういった観光地の動画も撮っていきたいですね。


 


今現在の1日の生活スタイルを教えて下さい。


 


ジブおじ 7時半頃に起きて、最近コーヒーはやめているので抹茶を飲んで、8時半から家のジムで筋トレをして、9時半からようやく仕事を始めます。どういう動画にしようか企画を考えて、動画の冒頭で何を喋るか台本を簡単に作ります。動画の最中に言い逃したくない大事なことやデータ(このお店は1990年に開いたなど)をちゃんとメモして、カンペのようなものを作っています。動画のエンディングも台本を作っています。最終的には、この動画を見た人がどんな行動を起こして欲しいか、どんな気持ちになって欲しいかを考えてエンディングも作っています。撮影がある日は11時から14時まで撮影をして、14時半からはLIVE配信チャンネルでLIVE配信を1時間して、15時。15時半にようやく家に帰って、そこからシャワーを浴びて、その後に編集をします。昔はずっと仕事をしていたのですが、最近は妻との時間を大切にするようにしているので、妻が仕事から帰って来る19時頃まで編集をしています。あとは、妻にご飯を作ったり、YouTubeやゲームをしたりして、22時半か23時には寝ますね。健康的な生活です(笑)。


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憧れのYouTuberはいますか?


 


ジブおじ グルメ系YouTuberのMark Wiensさんですね。800万人ぐらいの登録者がいるグルメ系YouTuberです。笑顔で明るいところとか、単純に人間性がいいところだとか。実際にお会いしたことはないのですが、指針の一つとして自分の動画にも反映しています。


 


YouTuberとして意識していることは何ですか?


 


ジブおじ 再生数を取るために、みんなが興味関心のあるテーマを作ることが一つと、なるべく自分にしか出来ないオリジナリティのあるものを作りたいなと思っています。僕にしかないものと言えば、日本人の視点を動画に加えること。例えば、フランス人がたこ焼きを食べた時にどんな反応をするのか日本人としてちょっと気になりますよね。このように逆の視点で、「日本人がシンガポールのこの食べ物を食べた時にどういう感想を持つんだろう。」という動画が見たいのではないかとか。あとはシンガポール人の義理の家族との動画も人気ですね。日本人の僕と義理の家族のシンガポール人とのやり取りをYouTubeで上げられる人はそんなにいないので、こういった自分にしかないできないことをやろうとは意識しています。


 


どんなYouTuberを目指していかれますか?


 


ジブおじ 日本とシンガポールの架け橋になれるような存在になりたいなと思っています。シンガポールの人は日本が大好きで、日本の文化にも詳しいし、毎年日本に行っている人もいます。けど、逆はそうでもないと思うんですよね。なので、もっとシンガポールの面白い所や日本人が知らなそうなシンガポールを紹介していってシンガポールに興味を持って欲しいですね。シンガポール人には日本のことをもっと紹介したいし、日本人にはシンガポールのことをもっと紹介したいし、仲介に立つ人でいたいですね。


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YouTubeは自分にとってどんな存在ですか?


 


ジブおじ ライフワークですね。仕事でもあるし、趣味でもあります。良いバランスなのかなと思います。趣味だけだとこんなに続かなかっただろうし、仕事だから大変な面も結構あるんですけど、やりがいはすごくあるかなとは思いますね。


 


YouTubeを配信することで、皆さんにどんな影響を与えていきたいですか?


 


ジブおじ シンガポールのことをもっと知ることができ、日本のことも知ることができるチャンネルにしていきたいなと思っています。


 


シンガポールの魅力を伝えるために、どんなことに挑戦していきたいか教えてください。


 


ジブおじ 今考えているのは、出来るだけ密度が高くて幅の広い情報を届けることです。シンガポールの情報はあまりネットにはなく、あったとしても観光地ばかりなので、サブカルチャーやシンガポールの文化や地元エリア、シンガポールの穴場スポットの情報を発信できたら良いですね。「シンガポールと熱狂」というWebサイトもやっているんですが、動画を見ない人も多いと思うので、そういった人のためにWeb媒体でも情報発信をしていきたいです。もう一つ大事にしているのは、シンガポールのリアルなところをお見せすることですね。シンガポールの情報として上がって来るのは、キラキラした情報(例えば、ゴミが落ちていない、罰金大国というイメージ)ですが、意外とポイ捨てするし、トイレも流れていないことが多いし…意外と緩いんですよね。「明るい北朝鮮だ」とか言う人もいますが、実際は全然そんなことはない。そういった「シンガポールの本当の姿」を見せていきたいとは思っています。


 


今後、どんな人生を歩んでいきたいですか?


 


ジブおじ 短いですが、楽しく、健康に生活していきたいですね。(笑)


 


シンガポールには多くの日本人の子どもが在住していますが、小さい頃に海外体験をするメリットは何だと思いますか?


 


ジブおじ 一番は「他と違った経験が出来る」ということですね。シンガポールに長い間住んだというだけで、日本に行くとかなり珍しがられると思います。例えば、英語が喋れるとかイスラム文化などの異文化の理解や教養が培われると思いますし、これは大事なことだと思います。僕は大学から日本に住んだのですが、アメリカから来たというだけで、珍しがられました。人と違うということは大事だと思います。今、何でこんな僕の動画に興味を持ってくれているかというと多分日本人だからです。日本人で、英語でYouTubeをやっている人ってあまりいないので、他と違うことが武器になっています。異国での生活は大変なことも多いとは思いますが、それがいつか武器になる日が来ると思います。


 


シンガポールに在住している日本の方に伝えたいことは何ですか?


 


ジブおじ 先ほどとかぶるところもありますが、ディープな体験をしてみることですね。やはり、新しい体験をすると今までとは違ったシンガポールの一面が見えると思います。日本の方は有名な観光地をめぐり、何度も同じ場所に行くイメージがあります。そこからひとつ勇気を出して、行ったことのない場所へ行ってみてほしいと思います。


 


最後に読者の皆さんに一言、お願いします。


 


ジブおじ チャンネル登録、お願いします(笑)。


 


ありがとうございました。


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インタビュー後談


 今回はYouTuberとして活躍されているジブおじさんに取材を行いました。取材中どのような質問にも快く答えていただき、その答えは私たちの日常を刺激するような言葉で溢れていました。近年、世代問わず様々な方に求められているYouTube。日常的に「将来の夢はYouTuber!」と聞くことも増えたように感じます。今や憧れの職業であるYouTuberの裏側の部分は、本当に泥臭く1つの動画にかける思いの強さを言葉のいたるところから感じました。需要の増え続けている媒体だからこそ「自分にしかないもの」を求め続け、どんな時もリアルを発信し続ける姿勢がジブおじさんの魅力なのだと思います。「求めよさらば与えられん」という言葉があるように、シンガポールでの貴重な生活体験が慣れや飽きで平凡な日常にならぬよう、私自身ディープな体験を求め続け刺激のある日々を過ごしたいと強く感じました。ご多忙な中、取材を承諾してくださったジブおじさん、そしてこのような機会を設けてくださった池上編集長、素晴らしい時間と貴重な体験をありがとうございました。


 


文責・写真:広報部編集委員 山田祐史、柴引真奈


画像提供:Ghib Ojisan(ジブおじさん)


 

ハローインタビュー シンガポール在住の日本人YouTuber Ghib Ojisan (ジブおじさん) (9月号 2021年)