ハローインタビュー 「チンゲイパレード作曲者 川島健介さん & 振り付け者 青木弓子さん」(2月号2023年)
31 Jan 2023
チンゲイパレード
作曲者 川島健介さん & 振り付け者 青木弓子さん
何年か経った後に「シンガポール音頭」を聴いたら、このチンゲイパレードのことを思い出してもらえるような曲の存在になればいいなと思います。
プロフィール
川島健介(かわしま けんすけ)
ギタリスト・作曲家
15歳よりギターを始め、ロック音楽に没頭する。その後、音楽を創り出し演奏することに快感を覚え魅力を感じ、オリジナル曲を中心にバンド活動を行う。2009年より活動拠点をシンガポールに移し、作曲家としての楽曲を提供する活動をスタート。2012年よりシンガポールの国家イベント・チンゲイパレードにおける日本人会向け楽曲を担当し日本の伝統音楽とサブカルチャーのミクスチャー曲の作成など多種多様な楽曲を制作している。
HP: https://audiostock.jp/artists/20522
主な作品: JAS チンゲイパレード曲
https://www.youtube.com/watch?v=351GGgKb9OU&list=PLIyy4g2ufb0UDZvrnwkphmQr7GRVtIIGl
TOYOTA MEKONG CLUB CHAMPIONSHIP THEME SONG "TOYOTA MAKES THE WORLD" (2015)
https://www.youtube.com/watch?v=LjYt_SiaxiI
プロフィール
青木弓子(あおき ゆみこ)
JWI公認ZUMBAインストラクター
36歳の時にテニスで右膝の前十字靭帯を断裂。その怪我のリハビリがきっかけで、専業主婦からフィットネスインストラクターに。12年前にZUMBAと出逢い、インストラクター資格取得。2年前に来星するまでは日本のスポーツクラブで週14本のレッスンを担当。来星後はシンガポール日本人会で『簡単ダンシング』『ディスコワールド』のレッスンを担当。その時のご縁で今回のチンゲイパレード2023の踊りに関わらせていただくことになりました。現在はシンガポール各所で撮影したダンス動画をYouTube、Instagramにアップして楽しんでいます。
YouTube https://www.youtube.com/@user-rw2xl6mr8r
Instagram mamio_1008
2023年2月に3年ぶりにF1ピットで開催されるチンゲイパレードで、日本人会の曲として使われる『シンガポール音頭』の作曲担当の川島健介さんと、振り付け担当の青木弓子さんにお話を伺いました。(取材日:2022年12月3日)
聞き手 日本人学校小学部クレメンティ校教諭 ルイーズきよ子、田原口和華子、田端真侑、永地志乃、前島祐太
ー 普段はどのような活動をしていますか?
川島さん 普通の会社員でありつつ、その傍らで音楽活動をしています。SpotifyやiTunesにも曲が出ています。「Kensuke Kawashima」で検索してください。(※1参照)日本人会では「軽音楽部」に所属して音楽をしたりお酒を飲んだり…という活動をしています。このように私は二足の草鞋を履いているという感じです。
青木さん 私は主人に帯同している駐在妻です。少し前まではDP(被扶養者)も働くことができたので、今年の7月末までは日本人会で講座を持っていました。
ー 過去のチンゲイパレードには関わっていましたか?
川島さん 2013年から2020年の8回経験しました。今回で9回目です。
青木さん 今回が初めてです。シンガポールに来たのは2年前の新型コロナウイルス(COVID-19)が一番大変な時期だったので、チンゲイパレードは見たこともありませんでした。ですから、今は大先輩に囲まれて緊張しています。
ー チンゲイパレードに関わることになったきっかけはどんなことですか?
川島さん 私は2009年に来星しました。チンゲイパレードの前任者が日本人会の軽音学部に所属していらして、その方が帰国されるにあたって作曲とプログラミングを引き継いだことがチンゲイパレードに関わり始めたきっかけです。
青木さん 昨年春まで日本人会の民踊同好会に所属していたご縁で、今年の夏まつりの民踊同好会の出し物に飛び入り参加させていただきました。その打ち上げの際、チンゲイパレードで「シンガポール音頭」をやるらしいというお話を聞いたので、よかったらやらせてほしいと自ら手を挙げた次第です。シンガポール音頭には、元々民踊同好会の振り付けがあります。日本人会のチンゲイパレードの第1回参加の時に使用した「シンガポール音頭」でしたので、今回はそれをリメイクしようということになりました。
川島さん 昨年、シンガポール音頭を作曲された方が亡くなられました。個人的にはその方の思いを受け継いで、何か自分のテイストを入れながら新しいものを作りたいという思いがありました。元々のシンガポール音頭をリスペクトしつつ、新しい要素を入れるようにしてみました。詩は、元々のシンガポール音頭から抜粋して使っています。
ー チンゲイパレードで伝えたいことは何ですか?
川島さん パレードにはたくさんの方が参加するので、皆さんが楽しめるものという前提で個人的な思いも込めてみました。
青木さん 曲の初めの部分は民踊同好会の方々の思いを残し、曲調がアップテンポに変わるところは、「どなたでも踊れて楽しくかつ簡単なもの」いうことを念頭に置いて振り付けを考えました。
ー 作曲、振り付けをする際に大変だったことはどんなことですか?
川島さん 技術的なところでは、曲の長さの縛りがあることです。例えば入場は1分で、その後のパレードは1分で終了するということです。その時間に合わせて曲を構成しなければならなかったのは技術的には難しかったです。また、元々あったシンガポール音頭の雰囲気を壊さずに、自分らしいテイストを出すということで、自分の中でどのラインでOKを出すべきかがとても難しかったです。原曲の作曲者がご存命だったら、相談してアドバイスをいただくこともできたでしょうが、それができなくなったので自分の判断でしなければならない難しさもありました。また、チンゲイパレード実行委員として多くの方が関わるので、その方々の思いを、曲でどう応えていくかというところも難しいところでした。しかし、今回に関してはコンセプトがはっきりしているのでやりやすかったです。
青木さん 曲の構成など、周りの方に教わりながら原案を作りました。今後は色々な意見を取り入れながら参加者全員で作っていく感じにしたいと思っています。私はZUMBAというダンスのインストラクターです。そもそもZUMBAというのは正確な動きを要求するものではなく、その場で真似をするだけでよい気楽なダンスなんです。しかし、今回は細かいところまで皆さんにお伝えして、揃えなければならないというところが 大変だなと感じています。またダンス中に歩く距離も決まっているので、歩数や歩幅の調整なども今後考えなければと思っています。
ー お二人にとってのチンゲイパレードとは何ですか?
川島さん 私は今回で9回目なので、ある意味毎年のルーティンのようになっています。昨年までの2年間はF1ピットで開催されなかったので、いろいろな意味でのルーティンが戻ってきたなという感じです。
青木さん ここシンガポールでしかできないことで、かつ国をあげての大きなイベントなので、私にとってはかけがえのない心が躍る行事です。
ー 曲について教えてください。
川島さん 歌詞は元々あったシンガポール音頭(5番まであります。)の中から印象的な部分を抜粋して使っています。歌は、シンガポール在住で、ヴォイストレーナーもしていらっしゃる「Ryna(リーナ)さん」というプロのシンガーの方が歌ってくださいました。Rynaさんからは、シンガポール音頭はとてもいい歌なのでぜひ歌いたい、と言ってくださっていましたので、今回初めてお願いした経緯があります。今までは、歌がないものにしたり、どなたかに歌っていただいたり、初音ミクを使ったりしたこともあり、いろいろ趣向を変えながら試行錯誤してきました。そして今回は、「比較的オーソドックスかつ日本のトラディショナルな部分を感じてもらえる盆踊りテイストなもの」という形になっていると思います。盆踊りは、日本人にとって体に染みついているリズム感なのではと思います。
ー 曲作りにかけた時間はどれくらいですか?
川島さん 曲作りは無形なものなので、どれほどの時間がかかるかはなかなかイメージしにくいとは思います。今年の場合は9月にチンゲイパレードの開催が決まったので、10月から取り組みました。仕事をしながらの作曲活動だったので、とても大変でした。
ー 参加するダンサーへメッセージをお願いします。
川島さん まずは楽しんでいただきたいです。曲という観点で言うと、曲を聴いたときにその時代のことが思い浮かぶものだと思います。チンゲイパレードはその期間はヘビーローテーションで聴くことになる曲ですが、何年か経った後にその曲を聴いたら、このチンゲイパレードのことを思い出してもらえるような曲の存在になってくれればいいなと思います。
青木さん みんなで楽しく参加ができたらと思います。1番は楽しく、2番は笑顔で、3番は無理なく踊りましょう!
川島さん 歌いながら踊ると表情も豊かになるので、無理に笑顔を作るのではなく、歌いながら自然な笑顔がとても良いと思います。
青木さん 歌うと自然に口角が上がって無表情にはならなくなります。「シンシンシンシンシン、シンガポール」のところなどは特に口角があがるので、なるべく歌いながら踊っていただけたらよいと思っています。
ー 観覧する方々へメッセージをお願いします。
川島さん 3年ぶりのF1ピットでの開催なので、2023年現在の日本人会のパフォーマンスはこんなものだ、というところを感じ取ってほしいです。そしてとても楽しい曲調なので、一緒に楽しんでくださいということです。私たちのパフォーマンスだけでなく、チンゲイパレード全体を楽しんでいただければと思います。
青木さん 見て楽しんでください。一緒に踊っていただけるくらい同調していだだけたらありがたいです。
ー 今の活動を始めたきっかけを教えてください。
川島さん 実は私は楽譜を読めません。ギターを弾きながら鼻歌交じりで曲を独学で作ったりしていました。スタートは中学生くらいだったと思います。その中で曲のつくり方を自然に学んでいきました。そのうちにパソコンの作曲ソフトを使っていろいろな楽器の音を自分の鼻歌につけていく作業をするようになりました。私の家は、パソコン、ギターが何本か、小さな鍵盤、そしてモニターとスピーカーがあるだけです。したがって普通の家にちょっと機材があるという程度です。音源のソフトを使って曲を作ることは自分一人で作業できますし、質の高いものに仕上がるという良さがあると思います。
青木さん 専業主婦でテニスをしているときに、前十字靭帯断裂という大けがをして、リハビリの先生から一生筋トレが必要だと言われました。その時「筋トレを仕事にすればいいのでは…」と思ったことがインストラクターになったきっかけです。10年間はサーキットトレーニングのトレーナーをしていました。その間にズンバのインストラクターの資格を取りました。ズンバのインストラクターとしては今年で6年になります。大きなけがをしなかったら今の自分はいませんでした。ですから、けがに感謝をしています。
ー 今後の活動について教えてください。
川島さん 自分の曲や音楽をたくさんの人に聴いてもらえること、そして今まで自分が培ってきた技術や経験を、何らかの形で誰かに伝えたり影響を与えたりできたらいいなと思います。
青木さん 実はこのアフロのかつらをかぶって、たまにシンガポールの街中で踊っているんです。マーライオンの前でも踊りました。許可が必要そうな場所では、踊っていいか事前に確認していますが、今のところ断られたことがありません。
「まんぼーまみお」とYouTubeで検索していただければ、楽しく踊っている様子を見ていただけるかと思います。(※2参照)
最初は1人で踊っていましたが、嬉しいことにだんだん一緒にやってくださるお友達が増えてきました。踊ることが大好きなので、今後もお友達と一緒に街中で踊り、シンガポールの素敵な風景とともに皆様に元気をお届けする活動を続けていきたいと思っています。
ー 本日は練習でお疲れのところ、本当にありがとうございました。
2月のチンゲイパレードをとても楽しみにしています。
※1 https://audiostock.jp/artists/20522/albums/1108
※2 https://www.youtube.com/@user-rw2xl6mr8r/featured
インタビュー後記
ダンサーとして、チンゲイパレードに初めて参加する私たちは、1回目の練習にはとても緊張して参加しました。しかし、青木さんの楽しく優しいダンスのリードと、川島さんの親しみやすいシンガポール音頭の曲調に、緊張感も一気に解けて、和気あいあいとした雰囲気の中、楽しく踊ることができました。実際インタビューさせていただいて、フレンドリーでユーモアたっぷりなお二人のお話に、時間がたつのも忘れてお話を伺いました。チンゲイパレードに対するお二人の思いや、シンガポール音頭についての経緯を知ることができ、チンゲイパレードに参加する者の一人として、当日は楽しみながら精一杯踊ろうという気持ちになりました。
文責・写真:日本人学校小学部クレメンティ校教諭
ルイーズきよ子、田原口和華子、田端真侑、永地志乃、前島祐太