編集室より(11月号)2025年
01 Nov 2025
シンガポールに来てから、「あまりに高くて欲しいものが買えない」「あまりに高くて食べたいものが食べられない」「飲み会では、あっと言う間に$100札が飛んでいく」「日本で趣味としていたテニスや釣りが気軽にできない」という四重苦に、悶々とした日々を過ごしていた。
そんなある日、私は深夜の街に出かけた。決して飲み屋に行ったわけではない。時刻は深夜の午前2時、目標30kmのジョギングに出かけたのだ。
あてもなく走っていると通りがけに、“Jurong Lake Gardens”に出くわした。どうやら深夜でも入れるようだ。時折獣の鳴き声のようなものが聞こえるだけで、静寂に包まれ、湖面には中国庭園の塔と月が映し出された幻想的な雰囲気が漂っていた。さらに走っていくと、突然足元にライトアップされた蛇行する木道(後で調べたら“Rasau Walk”という歩道)が現れた。まるで自分のためにライトアップされたライブステージのようで、「このまま天国まで駆け上がっていけるのではないか」と心躍らせながら駆け抜けた。その突如目前に現れた非日常的な一場面をきっかけに、「自然を感じられるところでジョギングすることは、なんて楽しいんだ。お金もかからないし、走りながら私の好きな美しい野鳥(特にカワセミ)やトンボ、蝶を見つけることができるかもしれない」との思いが頭を駆け巡った。
さっそく次の週末、“Tampiness eco green”を訪れた。こぢんまりとした自然の楽園といった雰囲気で、歩道もふさふさしていて歩くだけで気分爽快、バナナの実の前で2羽の野鳥(どうやらヒヨドリらしい)が留まっているところを写真に収めることもでき、うれしくなった。さらに足を延ばした“Pasir Ris Park”では、灼熱の太陽が照りつけるなかでも、生い茂るマングローブのおかげで快適に走り続けることができた。
すっかり自然のなかで走る楽しみを覚えた私は、その後も“Ubin island”で美しい貯水池や淡い紫の可憐な花と実を見つけ、“Coney island”では美しい海の景色に出会い、“MacRitchie Reservoir Park”では1回目にアオスジアゲハを、2回目に念願のカワセミを見ることができた。
自然の中をジョギングしながら、時に立ち止まり、そこで出会う美しい自然や動植物を見て、小さな、でも確かな幸せを幾度となく感じることができた。しかも、今回紹介したところは、すべて無料で楽しむことができる(Ubin islandだけは片道$4のボート代がかかるけれど)。シンガポールでお金をかけずに、これほど楽しめて心も体もリフレッシュできるなんて。
まだまだ他にも行ってみたいところや紹介したい場所がいくつもあるので、またの機会に報告するとしよう。
(シンガポール日本人学校小学部クレメンティ校 編集部 石川創未)












