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編集室より(6月号)2022年

26 May 2022

 


 


 早いもので2022年もすでに半年が過ぎてしまいました。去年11月号の南十字星“ドクターからの手紙”で「年を取ればとるだけ、その人の人生に対する1年の割合が短くなり、長生きするほど、過ぎ去った1年が短く感じるのでは…」という記事を読み、なるほど、どうりで最近1年が過ぎるのが早い!と、納得しました。


 さて、今年2022年は日本軍によりシンガポールが陥落して80年の節目の年になります。年頭、図書館では80年前の陥落についての講演やフォーラムが開催されていました。また現在シンガポール国立博物館では“Dislocations:シンガポール陥落の記憶とその意味”と題した展示が開催されています。実際にシンガポール陥落を経験された方々が年々少なくなっていく中、できるだけその方々の経験と記憶を残し、それを次の世代に伝えることが大きな目的の展示です。はからずもこの展示の期間中にウクライナとロシアでは戦争が始まってしまいました。


 この展示は今から20年後の陥落100年の年に、その記憶と意味をしっかり伝えていくという具体的な目標が盛り込まれています。戦争などの悲惨な経験や心に深く残る体験は自分の中での時間の長さがどのように変化しても、重い記憶として鮮明に残っているものです。展示の最後のゾーンでは、陥落を体験した方々が、お孫さんや若い学生たちに80年前に経験したことを、ついこの前のように語っている姿がスクリーンに映し出されていました。子供たちにとっては遠い昔の出来事ですが、一生懸命聞いている姿が印象的でした。時の長さの感じ方は人さまざまですが、戦争などの記憶は時を超えて語り継ぎ、風化させてはいけないと、あらためて感じました。


 


(編集部 西山ひろ美)

編集室より(6月号)2022年