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編集室より(7月号)2021年

22 Jun 2021

 これを書いているのは、クラスター発生等を受けて発動された感染防止措置発動の初日、5月16日(日)の朝です。窓から見える燦燦と輝くビル群と人車まばらな街並みのコントラストは、丁度1年前の、赴任直後のSHN(STAY HOME NOTICE)ホテルからの景色と重なります。Circuit Breaker(CB)最中の赴任で、当地で待ち受ける新生活への期待と(2週間部屋から出られないことを含む)不安、そして、新型コロナウイルス(COVID-19)で世の中どうなってしまうのかという閉塞感や焦燥感等、当時の様々な感情が一瞬蘇ってきました。そして「ここまで順調に感染抑制してきたのにまた逆戻りか?」という想いも沸いてきました。


 しかしよく考えてみると、現在の状況は明らかに1年前とは異なります。感染力の強い変異株が広がり、「感染抑制→規制緩和→感染拡大→規制強化→」のいたちごっこで、収束には相当時間がかかりそうですが、米国をはじめワクチン先進国では社会生活や経済正常化も進みつつあります。まだワクチンが世界中に行き渡るまでに時間はかかりますが、接種を条件に検疫や社会規制を軽減・免除する動きも出ており、世界は確実に良い方向に向かっていると(信じたいと)思います。


 ところで、大学で仏文専攻だったので・・・という訳ではありませんが、コロナ禍でカミュの「ペスト」という作品が最近また脚光を浴びているとか。その中にこんな一節があります。「ペストと生との賭けにおいて、およそ人間が勝ち得ることのできたもの、それは知識と記憶であった。恐らくはこれが『勝負に勝つ』とタルーの呼んでいたところのものなのだ。」コロナとの戦いはまだ終わっていませんが、無念の死を遂げた故人に想いを馳せ、起きたこと感じたことその全部を記憶に留め、学び、教訓として後世にしっかり伝えることが、今生きる人間として大切なのだと、改めて感じる次第です。


                                                                                  (広報部理事 神田真也)

編集室より(7月号)2021年