3月14日(月)山崎大使ご夫妻のご臨席を賜り、2022年日本人墓地慰霊祭を執り行いました。新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により政府の規制に準じての開催となりましたが、墓地ツアー、慰霊祭、2021年寄付者銘版のお披露目、及び墓石への献花を約60名の皆様と共に全てを滞りなく挙行することができました。中西会長、山崎大使のご挨拶の後、参列者全員による慰霊碑への献花と黙祷が行われました。
お天気に恵まれ、史蹟史料部員による墓地ツアーでは、ご参加の皆様が墓地の沿革や歴史についての説明を熱心に聞いておられました。お暑い中、ご参列くださいました皆様にお礼申し上げます。
献花用生花は毎年ブンガチャンテ様にご提供いただいています
2022年 慰霊祭 会長挨拶
中西会長のご挨拶
本日はご多忙の中、山崎特命全権大使をはじめ、多数の方々にご参集頂きまして、誠にありがとうございます。
シンガポール日本人墓地公園は、1891年、二木多賀治郎氏が身寄りのない同胞や若くして亡くなった「からゆきさん」を偲び、英国植民地政庁の許可を得て、自ら所有するゴム園の一部を墓地にしたことから始まりました。日本人共有墓地の誕生とともに、同胞が亡くなると日本人共有墓地に埋葬し、日本国内の遺族に弔慰するというような、日本人会の原型と言える互助組織が形成されました。
その後日本人共有墓地は終戦後1949年に敵産処分法令により英国植民地政庁に接収され、長い間訪れる人も無く荒れ果てた場所となっていましたが、1953年に日本総領事館に管理が移され、1957年の日本人会再発足とともに、日本人会が総領事館から管理を引き受けております。
1973年、シンガポール政府により市内42カ所の墓地に埋葬禁止令が発令され、日本人共有墓地もその一つに指定されましたが、境内の整理も行き届いていた日本人共有墓地は「日本人墓地公園」として名称を変え存続が認められ、この年の彼岸供養を機に日本人学校生徒の奉仕で墓地清掃活動も行われるようになりました。
しかし経年劣化により墓地の荒廃は徐々に進み、フェンス、排水溝、歩行路など大規模修繕が必要となりました。日本人会理事会は1985年に日本人墓地公園管理委員会を設置し、日本人会再発足30周年記念事業として墓地大改修工事計画を決議しました。その矢先、1987年の正月早々シンガポール政府から日本国大使館に日本人墓地接収通知が届きました。しかしその当時の大使館をはじめとする関係者の御尽力により接収を逃れ、交渉の結果30年リースと更にオプションとしてリース延長期間の20年が付け加えられたため、日本人墓地公園は存続が確認され、大改修を進められることとなり、募金活動を開始しました。曹洞宗からは御堂の寄付を、日本人会法人会員と日本政府からも資金援助を受けましたが、目標の寄付が集まらずにいたところ、日本の新聞で墓地の窮状を取り上げて頂けることになり、その結果日本の企業や個人から多額の寄付金が集まり、最終的に浄財は117万ドルに達し、改修工事費用を賄うのに余りあり、更に今後の管理・維持費、改修費に充てることになりました。
このようにシンガポール日本人墓地公園は、南洋と日本及び日本人との間の、戦前戦中及び戦後の長きに渡る交渉の歴史を象徴する場所と言っても過言ではありません。
今でこそシンガポール日本人墓地公園は、海外の日本人墓地公園の中で最も整備された美しい墓地の一つに数えられ、日本人のみならず周辺住民の方々が暮らしの中で気軽に立ち寄ることができる公共の緑地公園として親しまれておりますが、ここに至るまでには長きにわたる先人の皆様の御尽力がありました。
2021年は新型コロナウイルス対策規制強化により4月から日曜と祝日は会員のみ事前予約制での開門とさせて頂いておりますが、6月には御堂の遠隔カメラを24時間応答サービス付きのものに交換し、墓地公園を見守るセキュリティサービスを強化致しました。
現在日本人会が日本人墓地公園を維持していくに当たっては、実に多くの在留邦人の皆様に支えて頂いております。新型コロナウイルスの影響により大人数での活動は中止されておりますが、例年は日本人学校や早稲田渋谷高校の学生と先生方、日本人幼稚園の先生方に清掃ボランティアのご協力を頂いておりますし、毎月御堂の清掃を行って下さるボランティアグループの方々もいらっしゃいます。現在は日本からの渡航が制限されておりますが、毎年お盆の頃に清掃に来て下さる日系企業の方々もいらっしゃいます。新型コロナウイルスの影響による規制下にあった2021年も多くの方々から墓地公園に頂いた御寄付は年間3万3,000ドルに上り、それらの浄財は墓地公園の管理・維持費の一部に充当させて頂いております。ご寄付を頂いている個人や企業の皆様、大使館の皆様の温かいご支援により日本人墓地公園を美しく維持することが出来ておりますことを、本日この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。
最後になりますが、この日本人墓地公園が、日本とシンガポール両国の平和と友好のシンボルとして末永く存続致しますよう祈念して、私のご挨拶とさせて頂きます。
本日は、誠にありがとうございました。
シンガポール日本人会会長 中西 博
山崎大使による献花
墓地ツアーの様子
赤い前掛けはMs Estee Tanからのご寄付