ー文化部ー
2022年6月26日(日)、日本人会ボールルーム(2F)にて、チャリティ茶会2022『茶祖 陸羽と利休 –夏は涼しく–』を開催致しました。千利休生誕500年にあたる本年、それにちなみ、中国から渡ってきた茶や唐物道具を用いた喫茶が、日本において茶道の形をなし、利休の登場によって侘びの形を確立させそれが現在の裏千家茶道へと繋がる流れをテーマとしました。
会場入口前コーナーでは、利休坐像と茶書数点を展示し、流れの導入部分紹介をしました。中国唐代の陸羽によって著された『茶経』は最古の茶書であり、単なる喫茶法を超えて茶道に至る精神性に触れた、茶道の源流とも言える書。『喫茶養生記』は、廃れていた喫茶の習慣を再び日本に伝えた僧・栄西によるもので、茶の製法や効能が説かれたもの。利休とその弟子・南方宗啓の文書を編纂し、利休没百年後に集成を見る『南方録』は、利休茶湯伝書で、いずれも流れの節目に位置する書物です。
ボールルーム内では、中国から渡った茶と道具の数々による喫茶が、利休によって変化を遂げるのを、二つの茶席で再現し対比させました。まず、利休以前の書院の様子を、8畳の広間・三幅対の掛物・真の青磁花入・台子と唐物皆具などで、次に本席では、利休により確立された侘びの形を、2畳の小間・和物道具 (身近に入手できる素材で作ったものや生活道具の転用などによる、装飾を削ぎ落とした茶道具の数々)で、それぞれ紹介しました。後者の2畳小間では、利休の導入した黒楽茶碗・利休型中棗・木地釣瓶水指などの他、裏千家9代家元不見斎(利休からおよそ200年後)好の苫屋香合、16代家元坐忘斎(当代家元)ゆかりの大徳寺老師による茶杓などを取り合わせ、デモンストレーション・呈茶を行い、利休以後現代まで繋がる流れをご来場者に感じていただくとともに、水のさまや水音の際立つ洗い茶巾点前により、利休七則のひとつ『冬は暖かく、夏は涼しく』にあるように、夏の茶会ならではの涼をお届けできたのではと思います。
共催のイベントとして、留香茶藝による中国茶会が同時開催されました。中国茶の視点から陸羽を紹介するとともに、茶会開催時間中に、すべて異なる茶葉、異なるテーマ、異なる点前での、全23回に及ぶデモンストレーション・呈茶を行い、そのバリエーションの豊かさを披露しました。
コロナ下での政府による人数上限やセイフティーディスタンスなどの制限が、大幅に緩んで以降の開催でした。各回ほぼ満席の状態でたいへん多くの方々にご来場いただき、日本とシンガポールの茶文化双方をお楽しみいただけたものと思います。収益金は日本人会を通じ、慈善団体へ寄付されます。
ご来場の皆様、ご後援いただいたシンガポール日本人会様、在シンガポール日本国大使館ジャパンクリエイティブセンター様に心より感謝申し上げます。