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ハリラヤ・ハッジ(犠牲祭)/ Hari Raya Hajj 2010
● 取材日: 11月17日(水)
● 取材場所: アンナダ―モスク

ハリラヤ・ハッジ(犠牲祭・イードルアドハ)は、ハリラヤ・プアサ(断食明け祭・イードルフィトル)とならぶイスラーム2大祭の1つで、イスラームの5行のうちの1つである、聖地メッカへの大巡礼(ハッジ)の終了を祝う祝日です。メッカ巡礼に行っている人たちは巡礼先で、巡礼に行かなかった人たちはそれぞれの地で礼拝を行い、羊や山羊など動物の犠牲を捧げる儀式(クルバン)を行います。
朝8時から、モスクでハリラヤ・ハッジの礼拝とクルバンの儀式が行われるということで、ビシャンにあるアンナダーモスクを訪ねました。モスクには正装をした信者たちが続々と集まり、1,2階で男性信者が、3階で女性信者が礼拝を行っていました。礼拝のあとモスクの裏手に行くと、90頭ほどの羊がクルバンの儀式のために待機していました。今年はシンガポール全体で、47のモスクで約6千頭の羊が犠牲になるということでした。
儀式を待つ間、モスクのチェアマンのモハンマド・アリ・アタン氏とイスラーム評議会のマズリナ・アフマド・マズランさんから施設を案内して頂き、クルバンの宗教的意義について説明をして頂きました。クルバンとは、預言者アブラハムに対して、神がその信仰心を試すために最愛の息子イシュマイルを犠牲に捧げるよう命じられ、アブラハムが苦悩の末息子を捧げる決心をしたときに、その信仰心をお認めになられた神が代わりに羊を屠るよう言われた、という故事にちなんだものだそうです。この故事をムスリムたちは偲び、神への信仰と忠誠心、感謝の気持ちを表すために、ハッジの行の中でこの儀式を行うとのことでした。ハッジに行っている者はもちろん、行かなかった者も経済的に余裕のある場合は、羊、山羊、ラクダ、牛などを購入して犠牲にし、その肉の一部を生活に困窮した信者に配るということでした。また、現代の状況に合わせて、羊になるべく苦痛を与えないように、船輸送から空輸に変えるなど、動物愛護の考え方も大切にしているという話を伺うことができました。


説明の後、いよいよクルバンを見学することになりました。普段口にしている肉ももちろん屠殺され、加工されて店頭に並んでいることは理解していましたが、実際その場面となると、少し気後れし遠慮がちに見学しまし。屠殺はボランティアの信者たちが行います。まず羊の頸動脈と喉を鋭利な刃物で切り、血を流して絶命させます。私が想像していたよりも1頭にかかる時間が非常に短かったので驚きました。羊を長時間苦しませず、また待機している羊には屠殺の場面を見せないなど、恐怖心を抱かせない工夫もなされていました。
犠牲にされた羊は、すぐに皮をはぎ、解体し、料理するという作業が、信者の手による流れ作業で行われていました。この日の料理は羊肉入りカレーでした。見学した私たちもカレーをいただきました。命をくれた羊にいつも以上の感謝の気持ちを込めて「いただきます」と言いました。ムスリムの宗教行事に参加することで、イスラームのことを今までより深く理解することができ、また「命を頂いて私たち人間は生きている」ということを実感できた今回の取材でした。
(編集部 藤田 佳嗣)