私たちが住んでいるシンガポールという国は、実は大小60余りの島から構成されているのをご存知でしょうか?一番大きいのがシンガポール島ですが、ほとんどの島は周囲が1kmにも満たない無人島です。その中に、「ゴミでできた島」があります。いったいどんな島なのでしょうか。
今回は、シンガポールの夢の島、『セマカウ島』についてご紹介します。
 ゴミはいずこへ?

島を訪ねる前に、シンガポールのゴミ事情について少しお話しましょう。シンガポールに居住するようになって驚いたことのひとつに、ゴミの廃棄方法がありました。可燃でも不燃でも、ひとまとめにしてキッチンの横にあるダストシュートから投入すればよいので、いつでも簡単に捨てることができます。日本の自治体ように曜日や細かい分別の指定もありません。1Fの集積所に溜められ、毎日収集されています。 急激な人口増加と都市化のため、シンガポールのゴミの排出量は年々増加し、1970年から2010年までの40年間で6倍にもなったそうです。
ところで排出されたゴミは、いったいどこに運ばれ、どのように処理されているのでしょうか? 回収されたゴミは、国内で稼働しているTuas、Tuas Southの両Incineration Plant(国営)、Senoko Waste-to-Energy Plant、Keppel Seghers Tuas WTE Plant (民間)の4つの焼却場に集められます。
その内58%がリサイクルされ、40%が高熱で焼却されています。残りの2%は焼却できない廃棄物(建設廃材やコンクリートなど)です。焼却することにより廃棄物の体積を減らすことができますし、さらに発生した熱エネルギーは電気を生成するために使用することができます。そして焼却灰および焼却できない廃棄物のみがTuas Marin Transfer Station (TMTS)から専用のボートに積まれ、『セマカウ島』に持ち込まれるのです。Tuasからの距離はおよそ25km、夜間に3時間かけて運ばれるそうです。

 

 セマカウ島はどんなところ?
セマカウ島は、シンガポール本島の8km南に位置しています。シンガポール初の廃棄物の海上最終処分場として、4年間の歳月とS$6.1億をかけ開発されました。建設には日本の企業が携わっています。1999年4月、それまで使用していたシンガポール本島のロロンハルス埋立処分場が満杯になり閉鎖されたため、島での埋立が始まりました。もともと小さな漁村であったセマカウ島とセカン島ですが、住人が本島へ移転し無人島になったのち、島の周りを囲むように7kmの岩堤防が造られ、二つの島を連結しました。その中を11の区画に分け、順に埋め立てています。埋立地の面積は350ヘクタール、6300万㎥のゴミ処理が可能です。すでに半分以上の区画が埋め立てられました。汚染物質が海水に溶け出さないように、島の周りの堤防は、不透過性の膜で裏打ちされ、海底粘土や岩石層がおかれるなどの対策がなされています。また浸出水は、専用のプラントで処理されています。そのおかげで、西部海岸沿いのサンゴ礁は破壊されずに元の状態を保ち、植林されたマングローブは成長をつづけています。島の周囲の海洋生態系がきちんと管理され、保護されているのです。
 セマカウ島に行ってみよう!

2005年7月、セマカウ埋立地は、リクレーション活動のために一般開放され、誰でもが島に行けるようになりました。ただし個人で行くことはできません。環境庁や許可をされた団体が、干潟観察、天体観測、バードウォッチング、スポーツフィッシングなど、さまざまな活動を提供していますので、そのガイドツアーに参加するのが一般的です。
12月の日曜日、Nature Trekker主催のバードウォッチングツアーに参加しました。West Coast Pierから12人乗りのボートに乗り、島を目指します。島では入場人数を制限しているため、参加者は予め申請し、当日、パスポート、グリーンカード(居留証)の携帯は必須です。また、持ち込むカメラのメーカー名や型番も事前の登録も必要でした。およそ45分で島に到着しました。
「ゴミの処分場なのに悪臭がしない」第一印象は想像していたものと違っていましたが、これは島のどこに行っても同じ状態で感動しました。今回のツアーのプログラムは、セマカウ島の生物や野鳥についてのレクチャー、島の歴史や埋立業務についての話をそれぞれ聞いたあと、実際に戸外で渡り鳥を観察するというものでした。堤防に沿って作られた幅10mの舗装道路をマイクロバスが走ります。ポイントごとに停車しながら、島を半周して堤防のはずれまで行きました。バードウォッチングでは、Malaysian Plover(マレーシアチドリ)やGray Heron(アオサギ)、Whimbrel(チュウシャクシギ)などの渡り鳥を見ることができました。シンガポールの他の自然保護区がそうであるように、ここもまた渡り鳥の中継地点になっているのです。埋め立てられた土地にはすでにLalang(茅:チガヤ)が生い茂っていました。
セマカウ島では、熱帯の海洋動植物や野鳥が観察できるだけではなく、廃棄物がどのように取り扱われ、安全に埋め立てられるのかを知ることができます。そして埋立地が年月をかけ、野生の花が咲き、鳥たちが戯れる草原に変わっていった様子を目の当たりにでき、改めて環境保護の大切さを学ぶことができる場所です。ぜひ一度訪れてみてはいかかでしょう。

 さいごに
セマカウ島では、現在、1日に焼却灰約1400トン、非焼却廃棄物600トンが埋め立てられています。このままでいくと、処分場は2045年には満杯になってしまうそうです。環境庁は、ゴミの排出量を減らすため、資源ゴミのリサイクル・リユースを推奨するプログラムを実施し、今後のリサイクル率を60〜70%にまで上げる目標を提示しています。これは、セマカウ島埋立地の使用年数を延長させることにもつながります。皆さんももう一度、身の回りのゴミを減らす工夫を見直してみませんか?まだまだできることがあるかもしれません。

埋立地の区画 まだ海水が溜まっている

埋め立てられた区画1はすでに草原に
ツアーについての詳細は、下記HPをご覧ください。
◆ The Raffles Museum of Biodiversity Research
  http://rmbr.nus.edu.sg
◆ The Nature Society(Singapore)
  http://www.nss.org.sg
◆ The Astronomical Society of Singapore (TASOS)
  http://tasos.org.sg 
◆ The Sport Fishing Association of Singapore (SFAS)
  http://www.sfas.net
◆ Nature Trekker
  http://www.naturetrekker.org

参考: National Environment Agency : http://app2.nea.gov.sg

(文・写真 別所 隆子)


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