数年前になりますが、シンガポール日本人学校で風邪が流行って学級閉鎖になったことがありました。常夏のシンガポールで学級閉鎖があったことを聞いて驚かれる人がいましたが、実はシンガポールでも風邪は最もかかりやすい病気の一つです。シンガポール日本人会の診療所で働く医者のお話ですと、外来患者数ナンバー1は風邪で、全体の20~30%をしめています。

 日本では風邪のシーズンは冬場と決まっていますね。夏に風邪のために学級閉鎖になることは日本では考えられませんね。

 風邪の原因の一つは冷房ではないかと考えられます。冷房が寒くて体調を崩したという話を時々聞きます。また冷房の効いたは部屋はドアも窓も閉めていますので、風邪のウイルスが部屋の中を循環し、感染してしまうことになるわけです。ちなみにシンガポールの現地の小学校、中学校には冷房がありません。

 東南アジアのホテルに入ると冷房が効きすぎていますね。

 オフィスも映画館もホテルも病院も冷房がよく効いていて寒くて、カーデガンや上着が必要です。20度ぐらいにセットしています。シンガポールに来たばかりの日本人駐在員から時々耳にする不満は事務所内の冷房の効きすぎです。皮肉なことに熱帯のシンガポールで寒さが一部の日本人の悩みになっています。

 シンガポール政府は国民に節電対策を訴えているのですか。

 

 

 日本では外気と室内温度の差が5度以内にしなさいというガイドラインがあるそうですが、ここでは晴れている日、外気との温度差は10度ぐらいになります。何でも徹底的に行なうシンガポール政府ですが、冷やし過ぎを注意するようなお達しを聞いたことはありません。冷房についての節電の取組みは日本との比較では緩やかな感じがします。リー・クアンユー元首相はシンガポールにとって最も大きな20世紀の発明は冷房設備だと述べたことがあります。冷房が導入されたことによって常夏の人々の生活様式は一転しました。オフィスや工場での労働環境は大幅に改善され、シンガポールが先進国に仲間入りを果たす上で冷房の果たした役割はおおきかっただろうと思われます。

 仕事の生産性は格段に上昇したのでしょうね。

 

 きっとそうでしょう。大袈裟な事を言うようですが、経済発展に冷房が果たした役割は大きかったでしょうね。私がまだシンガポールの大学に通っていた時の話ですが、ロシアからきた学生数人が視聴覚室に入った時、寒い寒いといって肩をすぼめて温度を上げてくれと言いました。視聴覚室にいたシンガポール人スタッフは半袖の腕をさすって気持ちが良い、ロシア人は寒がりだなと言いました。理解しがたい光景でした。

 シンガポール人の方がロシア人より寒さに強いとは思えませんよね。

 

 

 シンガポールの人たちはロシアの冬を前にしたら、きっと逃げ出すでしょうね。しかし快適と感じる体感温度はシンガポール人のほうが低いのかもしれません。私は人生の半分以上をシンガポールで暮らしていて、私の肌感覚はシンガポール人と同じになりましたので、この感覚はよくわかります。数年前12月に北海道を旅行したことがありました、その時ホテルの部屋が暑苦しくて、困りました。暖房を調節しようとしても涼しくなりませんでした。またタクシーに乗った時、暖房の温風で気持ちが悪くなりました。熱帯の国の人々は冷房を効かせることが良いサービスだと思っていますが、寒いところの人たちは暖房を効かせることが良いサービスだと思っているようですね。

 寒い国の人は温かさを求め、暑い国の人は涼しさを求めるということでしょうか。

 私の印象ですが、心地よい体感温度に寒い国の人と暑い国の人との間には2、3度の差があるような気がします。私のオフィスの室内温度は25℃と設定しましたが、これを決めるまでは日本人スタッフとシンガポール人スタッフとの間で冷房の温度調整を巡ってホットな争いがありました。