<July 2011 掲載>

シンガポールと言えば、誰でも思い浮かべるのがマーライオン。では、マーライオンの「マー」って、いったい何なのでしょうか?「マーメイド」(人魚)が女性でなくライオンになっているから「マーライオン」となっているの?シンガポールにはライオンがたくさんいたの?マーライオンは男?それとも女?どうして、マーライオンが誰もが知るシンガポールのシンボルとなっているのでしょうか。ここでは、その「マーライオン」のルーツを手繰り、現在に至るマーライオンの歴史を辿ってみたいと思います。

◆ マーライオンの由来

シンガポールは約700年前、マレー語で「港町」を意味する「テマセク」という名前で知られていました。マレー年代記(スジャラムラユ)によると、パレンバンの王子サンニラ・ウタマがこの島にやってきて、ライオンと思われる獣を発見、以降、この地をサンスクリット語で「ライオンの町」という意味の「シンガプーラ」と名付けました。現在のシンガポールという国名はここから来ています。頭はライオンで胴体は魚「マーライオン」は海を表す「マー」と「ライオンの町(シンガプーラ)」であるこの国の歴史に由来していたのです。しかし、当時シンガポールにはライオンは生息していなかったともいわれ、王子が見たのは、虎であっただろうとのことです。

    

◆ マーライオン誕生

マーライオンは今年で39歳の男性です。その誕生までの経緯は更に古く1964年、バンクリフ水族館の館長フレーザー・ブルーナーがデザインし、シンガポール観光局のロゴマークとして使われたことに発端します。その後、シンガポール大学(現シンガポール国立大学)の副学長Kwan Sai Kheongによって彫像にするという構想が打ち出され、彫刻家Lim Nang Sengによって制作、シンガポール政府観光局(現Singapore Tourism Board)の後援にて総額165,000ドルをかけて生まれました。1972年9月15日、初代首相リー・クアンユーによって除幕式が行われ、フラトンホテルの先にあるウォーターボートハウス(アンダーソン橋の先)に置かれました。
このように、シンガポールリバーの入口に立っていたマーライオンですが、1997年にエスペラネード橋ができて、橋でマーライオン像が遮られ、その場所がもはやシンガポールリバーの入口ではなくなったことから、現在のマーライオンパークに移されました。そして、吉兆を示す東向きに置かれ、正面からの姿も見えるように展望デッキも伸ばされました。ちょうどマーライオンが30歳の誕生日である2002年の9月15日に、すでに制作者のリム・ナンセンは他界していましたが、彼のご家族が列席し再びリー・クアンユーによって盛大な祝典が行われました。
シンガポールリバーに臨みシンガポールの市街地の風景を背に水を出しているマーライオンは、今では、シンガポールに来たら、だれもが訪れる第一の観光スポットとなっています。

◆ マーライオンがホテルに

そんな歴史を持つマーライオンが、今年、大変身しました。
左の写真は2011年3月13日から5月15日まで行われた2年に一度の芸術祭典「シンガポールビエンナーレ2011」での日本人アーティスト西野達さんの作品「マーライオンホテル」の室内です。いつもは遠くで水を出している、高さ8.6m、重さ70トンの巨大彫刻マーライオンが、期間限定で触れる距離で添い寝ができる存在となりました。西野さんによると「色々な国から来訪し、一定の期間を過ごして去っていく、港町シンガポールとホテルの特性が一致した。」との理由で「マーライオンホテル」という作品になったそうです。

     


◆ マーライオンは全部で何体?

さて、質問です。右の①②のマーライオンは、いったいどこにあるでしょうか?皆さんは、シンガポールにマーライオン像がいくつあるかご存知ですか。マリーナベイ・マーライオンパークの初代マーライオンとその後ろの2メートルの小さいマーライオン。セントーサ島に37メートルもある大きなマーライオン。そして、あまり知られていませんが、マウントフェーバー公園とシンガポール観光局(STB)本店にもそれぞれ1体ずつあります。
①の写真は、セントーサ行きのケーブルカーの発着地にもなっているマウントフェーバー公園のマーライオンです。マウントフェーバーは、ブキ・ティマに次いでシンガポールで高い山の一つであり、マーライオンがある展望台(Mt. Faber Point)からは、360度の眺望が楽しめ、シンガポールの高層ビル群、セントーサ島はもちろん、天気の良い日にはインドネシアの島まで見渡すことができます。また、1階の壁面には、シンガポールの歴史が時代を追って分かる見事な壁画も彫られています。(一番初めの写真)
②の写真は、タングリンにあるトレーダーズホテル正面玄関の前にあるシンガポール観光局の3メートルのマーライオンです。

  
 ① マウントフェーバー ② シンガポール観光局 ③ セントーサ島 ④ マーライオンパークの親子マーライオン


◆ 日本にもあるマーライオン

ところでマーライオンが日本にもいることを御存知ですか。1989年11月にSTBが北海道の函館スパビーチに設置、以来、海の守り神となっているマーライオンのお陰で、近海では海の事故がなくなったと言われています。
二つ目はシンガポールボタニックガーデンと姉妹提携している南房パラダイス(千葉)。そして三つ目は、シンガポールに初めて居住した日本人、山本音吉の故郷である愛知県の美浜町です。2005年の愛知万博のシンガポール館で使われたマーライオンがその後、音吉の故郷、美浜町に寄贈されました。
シンガポールを代表する「マーライオン」、日本とも深い関係で結ばれているのですね。そして、私たちが普段生活している意外に近くにもいます。お散歩がてらシンガポールにある5つのマーライオン、そして、機会があれば、日本のマーライオンにも会いに行ってみてはいかがでしょうか。「マーライオン」はこれからもシンガポールの顔として、世界の人々に愛されていくことでしょう。

(文・写真 穴井美佐)

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