March 2010

アジア文明博物館 / Asian Civilisations Museum


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アジア文明博物館では、シンガポールの人々のルーツをたどる展示を行っています。今回は、シンガポール人口の約9%を占めるイン ド系の人々の故郷 南アジアを、ヒンドゥー教に焦点を当ててご案内いたします。 また現在、2階奥の特別展示場では、“Treasury of the World” と題し、ムガール帝国時代の豪華な宝飾品402点を展示しています ので、こちらも合わせてご紹介させていただきます。

『南アジアギャラリー&ムガールジュエリー展』

Gallery 7 南アジアギャラリー(常設展)

大地に根付いたヒンドゥー教

南アジアギャラリー入り口で、まず目に入るのがインダス文明の遺跡の映像です。インダス川流域には、紀元前2300年頃より紀元前1800年頃まで高度な古代文明が栄えました。

焼きレンガ造りの街路には排水溝も整備され、人々はかなり快適な暮らしをしていたと思われます。象形文字や牡牛の絵が刻まれた印章も有名ですね。 その後、北インドにインド=ヨーロッパ語族の遊牧民であるアーリア人が侵入します。人々を支配するためにアーリア人が持ち込んだ宗教は、インド土着の神々を取り込んで、やがてヒンドゥー教へと姿を変えます。

ヒンドゥー寺院を訪れると、極彩色の神々の姿に圧倒されますね。ヒンドゥー教の核を成す三神は、創造の神ブラフマー、維持の神ビシュヌ、破壊と再生の神シヴァですが、その他にもおびただしい数の神様がいます。ヒンドゥー教徒の人達にはそれぞれに信仰する神がいるわけですが、全ての神は実は姿を変えているだけで、本質的に1神だとも言われます。

アーリア人が生み出したバラモン教とインド土着の神々が混ざり合い、さまざまな神話が作り出されました。アーリア人は土着民を支配しましたが、幾世代にも渡って育まれた思想を支配することはできず、ヒンドゥー教は宗教というよりも古代より大地に根付いている、インドの魂そのものと言えます。


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●ダンシング・ガネーシャ

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●クリシュナ神

愛され続ける神々

さて、ギャラリーを進んでいくと、まるでインドのヒンドゥー寺院の中に迷いこんだようです。幾体もの石造りの神像が壁にかけられ、神聖な気持ちにさせられます。その中でも、日本の若者の間でブームになっているかわいいガネーシャをご紹介しましょう。

ガネーシャは、シヴァ神とその妻パールバティーの長男です。この像はぷっくりとお腹を出して、とてもリズミカルに踊っていますね。よくある姿では4本の手に折れた牙、象を駆る突棒、数珠、托鉢用の椀などを持っています。

この写真の像には6本の腕がありますが、壊れてしまっているので、あと何を持っていたのかわかりません。踊りを踊っているのは、父親のシヴァ神が踊りの名手でもあったためです。ガネーシャは障害を取り除いて成功と幸運をもたらすとされ、特に商売を始めるときに拝まれます。 また『マハバーラタ』を口述筆記したという神話から、知恵と学問の神としても人気があります。何故象の頭をしているかは、ガイドを聞いてください。


ギャラリーの中ほどでは、南インドのタミル・ナドゥーの寺院街をイメージしています。19世紀~20世紀にシンガポールにやって来て財をなしたチェティアの豪邸の一室に、クリシュナの美しい額がかかっています。

クリシュナは、ヴィシュヌ神の変化の1つです。ヴィシュヌ神は、全部で10の姿に変身します。仏陀もその中の1つだとされます。クリシュナは、牛飼いに育てられて見目麗しい青年になります。その姿に牛飼い女達は皆うっとりし虜になりますが、このクリシュナへの献身が、神と人間の魂との宗教的な合一と解釈されます。難しい教義よりもわかりやすいですね。


クリシュナは、美しいばかりではなく、幼い頃から怪力の持ち主で、武勇伝にも事欠きません。中でも毒龍カーリヤを退治した話は有名です。インド民衆に一番愛され親しまれている神でもあります。



寺院を支える信仰

クリシュナの絵がかけられた豪邸を出ると、町にはお祭りの山車がくりだしています。シンガポールでも楽しめるティミティーやタイプーサムの展示もあります。

そして、寺院の入り口にあるゴプラムの向うには、シヴァ系寺院の聖室をイメージした展示があります。ゴプラムは、神々の像で装飾された背の高いヒンドゥー寺院の塔門です。近世南インドで発展しました。南インドでは、本堂よりも周辺の諸堂や門がどんどん大きくなり、バランスが逆転しました。

聖室内にはシヴァ神を表すリンガを展示しています。そして、シヴァ神に向かい控えているのが、シヴァ神の乗り物の聖牛ナンディです。ナンディは、シヴァ神の弟子でもあるとされ、重要な場面でシヴァ神を上手にサポートします。この展示品は、つぶらな目をしてとても愛らしいですね。聖牛にふさわしい花輪や首にかけられたベル、鞍もみごとに彫刻されています。

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●聖牛ナンディ


  このギャラリーの展示を見て、シンガポールのヒンドゥー寺院を訪れると、これまでと違った面が発見できるかもしれませんね。



<ミュージアム日本語ガイドグループ 小林和美>

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ムガールジュエリー展(特別展) “Treasury of the World”
展示期間: 2010年2月12日(金)~6月27日(日)

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●ターバン飾り(A)

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●短剣(B)

ムガール帝国は、1526年〜1858年までインドを支配したイスラム帝国です。最初に帝国を統一したバーブルは、ティムール帝第五代目の子孫で、母親はチンギス・ハーンの子孫とされ、モンゴルの血を受け継いでいます。「ムガール」はアラビア語で「モンゴル」を意味します。

今回の展示では、クウェート王室のアル・サバー夫妻のコレクションから、剣やネックレス、指輪などの贅を尽くした宝飾品の数々がご覧いただけます。このコレクションは、大英博物館を皮切りに、メトロポリタン美術館やルーブル美術館など世界の名だたる博物館で展示されました。アジアでは初めての展示になります。それでは、展示品のいくつかをご紹介いたしましょう。

上記写真のターバン飾りは17世紀のものです。高さは17.3cmあります。クンダンと言われるムガル帝国時代に発展した独自の金細工で、大粒のエメラルドとダイヤをつないでいます。金台座の裏がないため、ステンドグラスのように光がよく通り、宝石の魅力を高めています。

右の短剣と鞘には、金を豊富に使った台座に1685個のルビー、271個のダイヤ、62個のエメラルドなどがはめ込まれています。イスラム独特の花や葉の装飾に加え、ヒンドゥー教で見られるマカラの意匠も用いられ、イスラムとヒンドゥーの文化の融合が伺えます。これは、第四代皇帝ジャハーンギールのデザインしたものだそうです。

その他にもエナメル装飾や、ジェイドに彫刻を施したもの、金銀細工など、さまざまな手法を比較してご覧いただけます。愛妃ムムターズのために白大理石で覆われた墓廟タージ・マハルを建てた第五代皇帝シャー・ジャハーミュージアム日本語ガイドボランティアン。彼の肖像が彫られたカメオも必見です。

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写真所蔵・提供/
Asian Civilisations Museum
(A)(B)のみThe al-Sabah collection, Dar al-Athar al-Islamiyyah, Kuwait

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