国を守れる
仕事をしたい

 



艦長の大谷三穂さん

日本の海上自衛隊の練習艦である「しまゆき」 が、訓練の航海中にシンガポールの海軍基地 に寄港しました。その際に、「しまゆき」の艦長である大谷三穂さんに中学2年生7名が取材をさせて頂きました。まず、自衛艦内の見学をさせて頂き、どのような施設の中で訓練を行っているのかを教えて頂きました。その後、生徒からの質問に艦長さんが答えてくださいました。

聞き手
(日本人学校中学部生徒)
坂本望花     
佐々木昴太郎
土橋萌乃
デイビス•レイ
福元雄人 
吉田誠
兵海奈


付き添い 
齊慶辰也(教諭)
佐藤剛毅(教諭)
竹川亜希(教諭)

 

 

 

 

問 艦長さんは現在、この船の中で何人の自衛隊員を率いているのですか。 
大谷:この船は約200人の隊員が乗っています。狭い船ですが、中にはたくさんベッドがあって、200人の人が寝ることができるようになっています。
問 今、艦内で女性隊員はどのくらいいますか。
大谷:15人です。約1割くらいです。また、今、学生も乗せて航海をしていて、2人の女性の学生がいます。
問 主にどのような仕事をしていますか。一日の仕事の流れを教えて下さい。 
大谷:船は、海に出ている時、岸壁に横付けしている時、横付けしていない時があり、その時によって仕事の内容がだいぶ変わってきます。船が出航しているときは、様々な船がいる中で、最初に航海計画・航路を決めて、船を進ませるのですが、そのコースに船を操艦しなければなりません。艦長は自分が船を動かすのではなく、幹部の人が船をコースに乗せていくように船を操艦します。艦長はそれができるように横で監督しています。例えば、漁船が来たらこっちに行きなさいとか、そういうことを言いながら。また、普段は訓練をしています。例えば、船が万が一火災になったとか、物にぶつかって浸水したりしたとか、舵が壊れたりとか、そういった時にどういう対処をするのかという訓練をしています。
問 艦長さんの乗っている船はどのくらいの間、運航していますか。
大谷:港から港の間は最長2週間ぐらいです。船は車と一緒で、燃料を積まないといけないし、みんなが食べる野菜やお肉なども積まないといけない。ある程度の長い出航になると、港に入って燃料を積んだり、食べものを積んだりしないといけないので、だいたい2週間くらいです。
問 航海中に、一番安らげる時はいつですか。
大谷:広い海の上で他に船がまったくなくて、この船が一隻だけ動いている時が一番安らぎます。夜には普段見たこともないような星空が見られたり、360度水平線が見えるような海域を通っていると、とても安らぎます。また時々、イルカや鯨が群れをなしているのを見ると、こんな広い海の中で出会えたんだなと思うと安らぎます。
問 逆に一番緊張するときはいつですか。
大谷:シンガポールは特にそうですが、行き合い船が多く、民間の船がすぐ近くを横切ったり、漁船が目の前を横切ったりすると、船をすぐに止めたり、避けないといけません。その時はやっぱり緊張します。車みたいに道路がないので、船がぶつからないように安全に航海するために緊張します。
問 自衛艦の中でどのような訓練をされていますか。また、一番きつい訓練は何ですか。
大谷:潜水艦を探すような訓練とか、もしどこからかミサイルが飛んできたらどうするとか、というような訓練をします。訓練はどれもきついです。また、24時間船が動いているため、常に誰かが起きて船を見ていないといけない。そのため、睡眠時間が短くなることもあるので、そういう意味で体力的にはきついかなと思うことがあります。
問 自衛艦に乗っている中で一番危険なことは何ですか。 
大谷:動いている船は、波が荒いと船がすごく揺れる。慣れていない人だと、船酔いするだけでなく、足下がすごく揺れるので、怪我をしそうになる。船に乗り慣れている人はいいけれども、乗り慣れてない人はちょっと危ない。特に甲板上にいる時は、潮に流されないようにみんな気をつけて仕事しています。
問 艦長になる条件はありますか。
大谷:船に乗って何年か勤務しないといけません。勤務年数が、少なくとも8年くらいは必要です。また、艦長になるために教育を受けなければいけません。講習みたいなものを受けます。艦長は船を出港や入港をさせないといけないので、船を動かす適正や技量が見られます。そこで評価・判定されてやっと艦長になれます。非常に狭い門ではあります。
問 艦長になってから、最も大切だと思うようになったことは何ですか。
大谷:たくさんありますが、一つは自分の部下が200人近くいるので、彼らの健康や精神面の管理をすることです。長い航海に出ると、狭い船の上にずっといて、長い間ずっと陸を見ないで仕事をしています。なので、みんなの体は大丈夫かなとか、病んでいる人いないかなとかを考えます。また、その人たちにも家族がいるから、その家族は元気かなとか、そういうところを考えていないといけないなと思っています。
問 仕事のやりがいはどういう時に感じますか。 
大谷:長い出航の後に、自分の母港である港に無事に帰ってきた時にやりがいを感じます。「良かった、みんな無事に帰って来たな」と。船はやっぱり危険といつも隣合わせにあるので、自分の部下や乗員をみんな無事に連れて帰ってきた時にやりがいを感じます。
問 なぜ、自衛隊に入ろうと思ったのですか。
大谷:私は、防衛大学校出身です。将来の陸・海・空の自衛隊の自衛官を育て、将来的に幹部になることが考えられている学校です。その学校にまず入ろうと思ったのは、ちょうどテレビを見ていた時に、湾岸戦争という戦争を見ました。それを見た時に、日本は平和な国だから、世界で戦争をしているという現実がなかなか受け入れられませんでした。しかしその後、もし日本が戦争に巻き込まれたら、どうやって自分の国を守ろうか、どうやって家族を守ろうかということを考えるようになりました。ずっと自分は平和な世の中だと思っていたのに、世界では戦争をしていることが、当時、非常にショッキングで、なんとかして国を守れる仕事に就きたいと思ったのがきっかけです。また、その当時に、それまでは男性しか入れなかった防衛大学校でも女性を受け入れるようになり、女性に門戸
が開かれるようになったのです。そして、女性の一期生として防衛大学校に入るのを決意し、入学し、その後自衛隊に入りました。
問 実際に隣国が攻めてきたらどのような仕事をするのですか。
大谷:自衛隊の船は様々な種類があり、戦争が起こった時に行かないといけない船と、それを後方で支援する船があります。例えば、戦争に行く船に油を補給する船とか、いろんな役割の船があります。現在、この「しまゆき」という船は戦争に参加する任務にはなく、将来、船に乗る人たちの教育をする船となっています。なので、普段は学生さんを乗せて、船に乗るための訓練や教育を行い、実際に戦争が起きたらすぐに行かないといけないというわけではありません。しかし、実際にはその時の状況で、日本が戦争に巻き込まれたら行かないといけなくなるかもしれません。
問 航海中、場所によって時差の関係で時間が変わると思いますが、その中でスケジュールはどの時間に合わせているのですか。
大谷:夜中の12時に1時間遅くしたり、進ませたりしています。そして、時差を合わせたことをみんなにお知らせして、動いています。日本からアメリカに行く時は、しょっちゅう時差を修正していかないといけないので大変です。でも、それをまとめてやらないようにするために、ある程度日にちをおいて、時差ぼけにならないように気をつけて航海航路を考えています。
問 時間とか週を忘れないために海軍は金曜日にカレーを食べると聞いたことがありますが、それ以外に、日にちが分かるようにしていることはありますか。
大谷:ないですね。本当に金曜日のカレーが重要です。お昼にカレーが出てきたら、「今日は金曜日なんだ」と思えます。なので、メニューを変えて月曜日にカレーが出てくると、みんな金曜日だと思ってしまうくらいです。土曜日や日曜日でも船が動いているので、今日は休みだという感覚がなくなっていきます。船に乗っていると、それだけ金曜日カレーというのは重要で、金曜日のカレーは曜日を思い出させてくれるメニューなのです。

(文責、写真:竹川 亜希)

インタビュー後談
とても気さくで明るい雰囲気の艦長さんでした。今、戦争状態にはない日本ですが、日本の安全と平和のために活動されている方々の存在を身近で感じることができた貴重な機会でした。