安全な国でも
油断禁物

シンガポールでは島内を6つの地域に分けて、それぞれを管轄する地域警察本部があります。今回はそのうちの一つ、「タングリン地域警察本部」に中学生6名が訪問し、取材を行いました。まずは警察の方からスライドを使って、地域警察本部の紹介や役割、頻繁に起こる犯罪とその予防策について教えて頂きました。また、スリの瞬間を防犯カメラの映像で見せて頂きました。そのあと、生徒からの質問に警察本部長さんが答えて下さいました。

聞き手 (1年国際委員)
楠 なつせ、中薗 英里、河邉 瑠奈、辻 晃希、小坂 涼、岡部 史弥
付き添い(教師)
尼子 さやか、内山智博、大中さゆり、Scott Provens
杉野一夫(南十字星編集長)

日本に交番制度を研究するチームを送りました。そしてシンガポールに適用した「Neighborhood PoliceCentre (NPC)」・「Neighborhood Police Post (NPP)」という制度を作りました。地域の治安維持のため、話し合いなどを通じて警察官と住民組織の連携・協力を強化するという大きな役割を果たしています。6つの地域警察本部の下に、35のNPCが設置され、その下には65のNPPが設置されています(現在64)。シンガポール人の中には親しみを込めて、「KOBAN」と呼ぶ人もいます。※NPCとは、NPPを統括する組織です。(2013年)
 
NPCの所在地は、付近の道路にこのような標識等で表示されています。(2013年)

問 シンガポール警察は日本の交番システムを導入したと聞きました。どのように採用したのですか。
日本に警察のスタッフを派遣して、交番システムを勉強しました。コミュニティに密着した警察の存在が大事であることを勉強しました。交番が常に犯罪状況を住民に伝え、住人と緊密に情報交換することが犯罪防止につながることを学びました。日本から学んだ交番システムをシンガポールの事情に合わせて調整し、改善しました。

問 自転車でパトロールはしますか。

自転車によるパトロールは当初警察官に不評でした。自転車の質が悪い上、警察官のユニフォームは厚手の生地で、自転車に乗るには向きませんでした。そこで自転車を改善し、ユニフォームを涼しいものに変え、自転車のパトロールを再開します。自転車のパトロールは狭い路地にも目が行き届き、小回りがききます。

問 国際水準で見ると、シンガポールの犯罪率はきわめて低いようですが、どうしてですか。

シンガポール警察は犯罪発生率が低いと言わないようにしています。確かに犯罪発生率は低いけれども、犯罪は現におこっています。国民が安心しきって、防犯の準備を怠ることは困ります。犯罪率が低いことの要因は2つあります。まずは経済状況の良いことが重要です。職について、生活費に困らなければ悪いことはしません。第2の要因は警察が有能であることです。犯罪が起きれば直ちに犯人を捕らえ、法的措置を取ります。良好な経済状況、高い犯人検挙率、この2つの要因が犯罪の抑止につながります。

問 シンガポールは安全な国ですが、テロの備えはしていますか。

テロに対しては断固とした対応を取ります。過去にシンガポール航空の飛行機がハイジャックされるというテロ事件が発生したことがありました。テロリストは全員射殺されました。こうした断固とした警察の姿勢がテロリストへの警告となり、抑止力となります。

問 シンガポールには警察官が何人いますか。そのうち女性は何人ですか。

警察官は全部で1万1千人(グルカ兵は除く)です。婦人警察官はそのうち15%、本当はもっと増やしたいと思っていますが、補充がままならないでいます。

問 振り込め詐欺事件はありますか。

たくさんあります。頻繁にあるのがラッキードロー詐欺です。「おめでとうございます。あなたは宝くじで100万ドルが当たりました、ついては事務手続き費用として5千ドル振り込んでください」という電話やe-mailが届きます。それから誘拐を装った詐欺事件、犯罪者はあちらこちらに電話をかけます。子供の泣き叫ぶ声を聞かせて、子供を誘拐した、命が欲しければ、身代金を振り込めというものです。ばかばかしいと思うかもしれませんが、数百人が被害に
あっています。

問 シンガポールにやくざはいますか。

シンガポールにはやくざはいません。治安維持法があって裁判手続き無しで危険人物を監禁することができます。厳しく取り締まっています。

問 護身術を身につけることは自己防衛に有効ですか。

護身術を習うことは悪くはありませんが、犯罪者に遭遇したときには抵抗しないことを勧めます。犯罪者がナイフなどの凶器を持っていると、危険です。また後ろに仲間がいたりすることもあります。お金が欲しいと言われたら、抵抗しないでお金を渡すことの方が身のためです。欲しいものが手に入れば、多くの場合、犯人はいたずらに傷つけることはしません。

問 日本では歩行者が優先されますが、シンガポールは如何ですか。

シンガポールの法律では歩行者優先です。でも同乗者との話に夢中だったり、携帯電話をかけていたりして、運転中十分な注意を払わないドライバーがいます。シンガポールのドライバーは日本人と比べて運転マナーが良いとは言えません。事故に巻き込まれて歩行者優先だと叫んでも遅すぎます。歩行者優先といっても、歩行者は常に自分の身は自分で守る姿勢が必要です。

問 シンガポールのドライバーは道を曲がるときにシグナルを出しませんね。 

交通法規では右折、左折をするときにはシグナル(ウインカー)を出さなければなりません。シグナルを出さないと罰金70ドルが課せられます。70ドルは安すぎるのかも知れません。シンガポールのドライバーがあまりにシグナルを出さないので、あるアメリカ人が新聞に投稿し、シンガポール人は方向指示器のついていない安い車を買っているんではないかと皮肉ったことがありました。

問 時々電車の中で警察官を見かけます。何をしているのですか。

スペインのマドリッドでテロリストによる列車爆破事故が起こりました。この事件をきっかけに、公共交通機関を取り締まるトランスポート・コマンド警察を設置し、MRTの構内、車内の警備を行っています。公共交通機関はテロに狙われやすいターゲットですので、警備を強化することにしました。

問 警察隊はいくつぐらい銃を持っているのですか。

それは秘密です。いろいろな種類の拳銃を持っています。

問 一番難しい仕事は何ですか。

シンガポールの住民は防犯に対する意識が薄い。シンガポールは安全で自分には犯罪は及ばないと思っています。国民の防犯意識を向上させるために、いろいろと啓蒙活動をしていますが、なかなか難しい仕事です。

問 警察のモットーは何ですか。

防犯と抑止と捜査です。警察は国民の生命と財産を守ることに全力を挙げています。

問 日本人社会に何かメッセージがありますか。

日本人がスーパーマーケットで窃盗の被害に遭うケースが増えています。トローリーにハンドバックを置いたまま、品物に気をとられている隙にバックを盗まれる事件が時々報告されます。スーパーマーケットではくれぐれもハンドバックをおいたままにしないように、皆さんから注意喚起をしてください。シンガポールは安全な国ですが、それでも犯罪は発生します。くれぐれも油断しないように!

取材の感想 (河邉瑠奈)
日本からシンガポールに来るとき、シンガポールは安全だと言われていましたが、今回警察署で説明を聞いたり、ビデオを見たりして、私の周りにも危険はたくさん潜んでいるのだと知りました。今までバックをそのままにして少し離れたりしていましたが、自分の身は自分で守ることが大切なので、これからは気をつけていきたいと思います。
これからは学校の委員会活動でも、みんなの安全に対する意識が高まるような活動をしていきたいと思います。

(文責・写真:尼子さやか、杉野一夫)