毒物による障害
March 2010
毒物にさらされることを暴露(ばくろ)と言います。暴露は暴露時間の違いにより急性と慢性の二つに分けられます。急性暴露は原因物質に24時間以内の短い時間、慢性暴露は概ね3ヶ月以上の長期にわたりさらされた場合のことをいいます。
急性暴露
急性暴露の特徴
- 突然で濃厚な暴露。
- 毒物が短時間で体に吸収される。
- 原因物質はひとつで、量は大量なことが多い。
- 回復可能なことも多い。
急性暴露の原因となりうる化学物質(薬など)と症状
急性暴露の原因となりうる物質には例えば、以下のような化学物質(多くは薬など)があり、引き起こされる症状は物質により違いがあります。
- 刺激薬-----------落ち着かなさ、多言、多動、震え、不眠
- 鎮静催眠薬-------眠気、めまい、混乱、知覚異常、目がかすむ、ろれつが回らない、昏睡
- 麻酔薬、鎮静薬----眠気、混乱、無反応、ゆっくり遅い呼吸、低体温
- 抗コリン薬--------発熱、ほてり、肌が乾燥する、尿が出にくい、目がかすむ、混乱、動揺、昏睡
- コリン作動薬------よだれ、涙、下痢、頻尿、頻回の嘔吐
応急処置
- 化学物質が付着した服を脱ぐ。
- 無理に吐かせることは勧めない。
- 流水で洗い流すことによって、薬剤を除去する。特に目や皮膚が暴露されたときには有効。
また、咬傷などの場合には、洗い流すことで、感染する可能性を減らす効果が期待できる。
- * 毒液(毒蛇や毒蜘蛛など)を含んだ咬傷などの場合、止血帯は勧められない。
毒物であっても、毒性の強くないもの(下記参照)に偶然さらされた場合で、以下のような4つの条件がそろっていれば、必ずしも大きな病院にかかる必要がなく、一般の外来クリニックで済む(入院しなくても良い)場合があります。
毒性の強くないものの例
口紅、シャンプーや整髪剤、制酸剤(胃薬の一部です)、抗生剤入りのスキンクリーム、チョーク、クレヨン、
シリカゲルやワックスなど
外来で済む(入院しなくても良い)条件
- 原因物質がひとつ。
- 毒物の量1)がきちんと推測できて、暴露ルートがわかっている。
- 症状が全くない。
- 耽溺や無視(親が子供の世話をしない場合など)、自殺などの兆候がない偶然の暴露。
- 1) 毒物の量:どのくらいの量になると危険かは物質によって異なり一概には言えない。
御心配な場合や上記に当てはまらない場合には、できるだけ早めに、救急を受診しましょう。
慢性暴露
慢性暴露の特徴
- 長期または反復される暴露。
- 症状はすぐには現れない。
- 原因物質は職業、仕事、趣味や家で暴露されうる化学物質であることも多い。
- * 暴露歴(どのようなものにどれくらいの頻度,量で暴露されたか)が重要
慢性暴露の原因となりうる物質、頻度が多い現場と症状、疾患
- 砒素---
汚染された水やハーブの製品、ガラス、半導体工場
⇒皮膚の色素沈着、末梢神経炎、皮膚がん、肺がん
- 水銀---
汚染された海産物、金鉱山、塩素、苛性ソーダ工業
⇒震え、非特異的心身症、神経障害
- 鉛---
鉛電池、金属スクラップ、鉛塗料、石油化学製品、鉛が塗られたおもちゃ
⇒腹痛、神経障害、発達遅延、不妊、貧血
- カドミウム---
ニッケル-カドミウム電池、焼却炉、金属精錬工業
⇒神経毒性、骨そしょう症
- マンガン---
鉱山、溶接
⇒精神障害、パーキンソン症候群、神経炎
- 有機リン、カルバメート農薬---
農業、園芸、殺虫剤噴霧業従事者
⇒神経行動への影響、神経炎
- ベンゼンや塩化ビニルなどの溶剤---
プラスチック、ゴム、タイヤ、石油化学工業
⇒発がん、血球減少、肝腎への毒性
慢性暴露は労働環境に原因があることも稀ではないため、綿密な労働作業環境のモニターが必要です。
