October 2009
シンガポールでは2009年11月から、小児の定期予防接種に肺炎球菌ワクチンが組み入れられ
ました。
肺炎球菌は小児における肺炎、敗血症、細菌性髄膜炎、中耳炎、副鼻腔炎などの主要な原因菌です。中でも肺炎球菌を原因菌とする菌血症性肺炎、菌血症、髄膜炎は侵襲性肺炎球菌性疾患と呼ばれ、重症で死亡の主要原因ともなります。世界保健機構(WHO)によれば毎年世界で160万人が肺炎球菌を原因とする疾患で死亡し、そのうちの70〜100万人が5歳未満の小児であるとのことです。また、肺炎球菌感染症は小児期におけるワクチンで予防できる死因の最上位となっています。
細菌性髄膜炎の原因菌としては、b型インフルエンザ菌(Hib、ヒブ)に次いで報告例が多いものです。日本での肺炎球菌性髄膜炎の発症頻度は正確にはわかりませんがb型インフルエンザ菌性髄膜炎の約1/4~1/3と推察されていますので、日本での発生は5歳未満人口10万人あたり2~3人前後、年間200人前後と推定されています。シンガポール国内では、肺炎球菌感染症で重症化した場合の死亡率は約6%と報告されています。
肺炎球菌感染症の治療には抗生剤が使われますが、世界的に薬が効かない、または効きにくい菌の割合が近年増加してきており、その割合は約65%に達していると報告されています。つまり、薬がきちんと効く例は3分の1ぐらいしかないということです。薬の効きが悪いということであれば、病気にならないようにすること、つまり予防接種が重要であるということになります。
こうした状況が進展しつつあった今から約10年前に、侵襲性肺炎球菌感染症を予防する小児用7価肺炎球菌ワクチン<プレベナー>が開発されました。肺炎球菌には90種類ほどの少しずつ異なる型がありますが、そのうちの7種類で原因の約80%を占めるとされています。7価というのはこの7種の型に対するワクチンということです。
米国においては2000年に<プレベナー>が承認されました。2001年には2歳以下における7価ワクチン関連肺炎球菌感染症は78~50%低下し、2003年には5歳未満の小児の関連血清型侵襲性肺炎球菌性疾患は94%低下したと報告されています。また、定期接種とした結果、多くの小児が免疫を得ることになり、集団としての免疫力が高まり、副次的な効果として高齢者における罹患数も65%減少したという報告もあります。
発売から昨年までの10年で、世界で3億本が接種されています。
WHOは2007年、<プレベナー>の安全性と有効性を考慮した結果、このワクチンを国家の予防接種計画に組み込んでいくべきであると発表しています。
シンガポールでは2005年10月から既に<プレベナー>の接種が可能となっていましたが、昨年11月1日、シンガポール政府は世界で41番目の国として、小児の定期予防接種に肺炎球菌ワクチンを組み入れました。
日本ではどうかと言いますと、漸く昨年の10月に、世界で98番目の国として国内の認可が下りたところで、一般に打てるようになるのはまだ数ヶ月かかるようです。(また、定期予防接種ではなく任意接種です。)
このワクチンの接種可能年齢は生後満2ヶ月を越えてから、9歳までです。

シンガポールの定期接種では1回目が生後3ヶ月、2回目が生後5ヶ月、3回目が1歳台となっています。日本人の居住者の場合にはこの年齢より後になってから開始される方も多いと思われます。接種回数は接種開始年齢によって異なります。1回目が生後7〜11ヶ月の方は3回、12〜23ヶ月の方は2回、24ヶ月以上9歳までの方は1回となっています。つまり年齢が高ければ1回で済むわけですが、年齢が低い方が重症化の危険は高いので、病気の予防の面からは早めに打ち始めたほうが良いことになります。
また、DPT、MMRなどと同時に打つことも可能となっています。ご希望の方は医師と良く御相談したうえで、接種をしていただければ幸いです。