能楽師 寺井千景さん
インタビュー |
|
さあ、皆さん、大きな声で謡ってみましょう。結婚式でも聞かれるお目出度い高砂を謡い、扇を掲げて摺り足で舞う仕舞に一同緊張の面持ち。11月6日からの3日間にわたって能のパフォーマンスとレクチャーが日本人会で催され、沢山の方が初めて能を体験されました。難解な、敷居の高い伝統芸能として知られている能の世界に触れることが出来る貴重な体験である今回のイベント。指導してくださった女性能楽師寺井千景さんにお話を伺いました。 お稽古の後のインタビューに現れた寺井さんの装いは、舞台で見る紋付、袴姿から一変して、薄い軽やかなグリーンのフリル一杯のブラウスにミニスカート。その姿は若々しく女性らしい能の後シテの変わり身を思わせるものでした。 |
|
略歴 寺井千景 能楽観世流シテ方(準職分)。 現在Lasalle College of the Arts にて講師を勤める。 |
![]() |
能楽師への道 女性能楽師ということについては? 海外(シンガポール)の能について シンガポールの大学の授業は? |
|
|
![]() 『熊坂』 後シテ 熊坂長範の霊 2010年9月 龍瑩会 |
|
日本人会 |
これからの夢 未来の伴侶については? シンガポールの印象 寺井さんの分かりやすいレッスンに、参加者の方もたちまち俄能楽師となる事が出来た楽しい授業。日本では格式や伝統に支えられているため今回のような機会はなかなかないと思われます。日本に住んでいてもあまり触れる機会も思いも少ない日本の伝統文化ですが、海外に住むとなると、かえって日本の文化に心惹かれる方は多いのではないでしょうか。セントーサ島を一望するケーブルカーに乗って、四海遥かに世界を見渡す寺井さん。シンガポールの自由闊達な風に乗って世界の能に飛躍する日が一日も早く来ることをと願わずにはいられませんでした。 |
|
豆知識 能楽は室町時代初期に大成され今日に至る日本の伝統演劇の一つ。 歌(謡)、舞、劇、音楽(囃子)が一つになり、面(おもて)装束 (しょうぞく)をつけて演ずる。 囃子とは笛、小鼓、大鼓(大皮)、太鼓による演奏。仕舞とは 能の舞の主要部分のうち囃子を伴わず地謡(合唱謡)による舞いどころのみ独立させて演ずるもの。通常は仕舞扇を持って舞う。 また、能の流派には各々の持ち味をもつ、観世流(優美さ)、宝生流(渋み)、 金剛流(舞中心)、金春流(舞中心)、喜多流(男性的)があるが、能を演ずるにあたっては、 シテ方、ワキ方、笛方、小鼓方、太鼓方など劇の演者や伴奏者の芸をそれぞれ分かれて伝承している。 シテは為手、演技者の意味で、曲の中心となる人物のこと。能楽は概ね前後二場に分かれて演ずるが、シテは一度退場した後再び扮装を改めて登場する。前場のシテを前シテ、後のシテを後シテと称する。シテ方とはこのシテを担当する人々のことを指す。また、子方とは子供(中学1年くらいまで)の演者のこと。他に、ワキ(副主人公の演者)ツレ(シテの助演者)などがある。 |
|
(取材・文 笠﨑あとみ 写真・薮内美奈子) |